『自己責任論』とは、自分の行動が引き起こしたことによって生まれる結果は、すべて自分の責任であるという考え方です。2004年のイラク人質事件、日本の子どもの貧困問題や格差社会、さらに今も続くコロナ感染といった話題で注目を集め、さまざまな社会的問題として、近年議論が繰り広げられるキーワードの一つとなっています。この記事では『自己責任論』について意味や事例を交えて解説していきます。
自己責任論とは
自己責任論とは、自分の行動が引き起こしたことによって生まれる結果はすべて自分の責任であるという論理を基調とし、主にエリート階級から始まり、今では多くの人々の間で浸透している考え方です。明確な定義がないため、自己責任論にはさまざまな解釈があります。例えば、努力した者は報われ裕福になり、努力をしなかった者は報われず貧困になるという考え方もあり、自分の行動の結果が引き起こして危機に陥った場合、自分で責任を負い他人に助けを求めるべきではないという考え方もあります。
自己責任論にはメリットとデメリットがあります。自分が自己責任論を持って居れば、自身の行動に責任を持っているため、何か問題が起こった時に原因を追求することができると言われています。一方で、努力をしない者は報われない、生活が貧しかったり、事業に失敗したりするのは自身の選択であるため、自業自得であるというデメリットもあります。
自己責任論の事例
ここでいつから自己責任論という言葉が注目され出したのかがわかる2つの事例を紹介します。
2004年イラク人質事件
市民活動家、ジャーナリストを含む5人がイラクで武装グループに拘束されたものの、最終的に解放された事件です。この事件に関して多くの人が助けたいなどと応援の声をあげていましたが、武装グループに解放された後、救出に使用された国家費用を支払え、行くべきでない場所に行ったのだから自業自得で自己責任だ、などの声が次第に多くなり問題となりました。
2015年シリア人質事件
ジャーナリストの安田純平さんが内戦状態のシリアに潜入し、現地の武装勢力に3年4ヶ月拘束されたのち2018年10月に解放された事件です。こちらも3年もの間救出にかかった国家費用を支払え、行くなと言われていたのになんで行ったんだなど、激しいバッシングを受けました。一方で海外からは、イラクの人々のためにとった行動を同じ日本人として誇りに思うべきだ、これは日本のイメージを高めたなどの声もあがりました。
自己責任論の問題点
近年、自己責任論は若者の間でも貧困や格差を生む考え方であることから問題として掲げられており、日本では7人に1人の子どもが貧困、単身世帯、ひとり親世帯が多いと厚生労働省の調査で分析されています。2016年には世界の貧困率で日本は14位、先進国の中ではアメリカや中国に次いで3番目の貧困率となり、問題視されています。
貧困にも2通りあり、絶対的貧困と相対的貧困があります。絶対的貧困とは、生活に必要最低限必要とされる所得や支出水準に達していない状態を表します。相対的貧困とは、その国の所得や支出水準に比べて貧しいことを表し、日本の場合相対的貧困に値します。
この相対的貧困によって生じてしまうのが格差問題です。日本では特に、この貧困は自分の責任である、生活が苦しいことを受け入れてしまう、努力もできず能力がないのは自己責任であると考えてしまう思考にあります。これらによって教育格差というのも生まれてしまうのです。例えば生まれた環境によって、高校や大学への進学率が左右されてしまうこともあります。このことに対して、生まれた時点で既に不平等である中、子供たちが自分に責任があると感じる必要はない、むしろ日本の自分自身が悪いと考えてしまう風潮がおかしいと認識する必要があるという声もある中、現在も自身の現状を受け入れるべきという声は絶えません。
自己責任論とこれから
今後も自己責任論が議論される世の中が続き、それによって苦しめられる人も何かを見出せる人もいるでしょう。しかし、問題点が多く自己責任論が行きすぎてしまうと、ストレスやネガティブな思考に陥ってしまいます。ポストコロナの日本社会で貧困や格差がさらに懸念されます。この記事を通して多くの人が自己責任論について、何が良くて何が悪いのか考えてくれると幸いです。