文化盗用とは、特定の文化圏の宗教や文化の要素を、他の文化圏の人が流用することです。日本も目を背けることのできない文化盗用について、海外の事例も紹介しながら、解説していきます。
文化盗用とは
文化盗用とは、ある特定の文化圏の宗教や文化の要素を、他の文化圏の人が流用する行為のことです。はっきりとした定義はありませんが、一般的には社会的に強い立場にある人々(マジョリティー)が、社会的に弱い立場にある人々(マイノリティー)の文化に対して行った場合に論争になりやすいと言われています。対象となる文化的要素は、ファッション、ヘアスタイル、シンボル、言語、音楽など、さまざまです。
文化の私物化
文化盗用という日本語は、「cultural appropriation」という英語を訳したものです。「appropriation」という単語には「私物化」といった意味があるため、文化盗用は「文化の私物化」とも言い変えられます。
例えば、以下のような例は文化盗用と指摘される可能性があります。
- 宗教的シンボルを、その宗教を信仰していない人がタトゥーやアクセサリーとして使用する
- 文化的なデザインや芸術を不正確にコピーしたものを大量生産し、流行のファッションアイテムとして販売する
- 書籍や映画で、ある特定の文化圏に対するステレオタイプを助長するようなコンテンツを制作する
文化盗用の実例
セレーナ・ゴメスは自身のコンサートで額につけたビンディ(インドの既婚女性がつけるシンボル、女性の第三の目と考えられ宗教的にも重要な意味を持つ)に対して、インドのヒンドゥー教団体から抗議を受けました。
他にもパリス・ヒルトンがハロウィンの衣装として、歌手のグエン・ステファニがミュージックビデオでの衣装として、ネイティヴアメリカン(アメリカ先住民)の伝統衣装を身につけていたことにも非難が相次いだ。
私たちが文化盗用しないために
文化盗用を防ぐために大切なのは、文化について調べたうえで、自分が用いる文化への「尊重」と「敬意」を持つことです。また、尊重と敬意を示すために、私たち一人ひとりが「自分が何から影響を受けたのか」をきちんと公に表明する意識を持つことが、文化盗用によって他者を傷つけないために、必要なことかもしれません。