スポーツ

“みんな”で囲む、“みんな”の居場所〜こども食堂「みんなのテーブル」~

ノーザンハピネッツ

「みんなが食事のテーブルを囲むことで、子どもたちの笑顔を作りたい」。
プロバスケットボールBリーグ1部に所属する秋田ノーザンハピネッツでは、秋田市にこども食堂「みんなのテーブル」を2021年10月からオープンしました。「みんなで育む食堂」をコンセプトに、プロスポーツチームで初めて常設のこども食堂の運営に取り組んでいます。
地域課題の解決に向け、“みんな”で取り組んでいこうとするチームの姿について、秋田ノーザンハピネッツの小原諒平さん(以下、小原)に話を伺いました。

秋田ノーザンハピネッツ写真提供:秋田ノーザンハピネッツ

「選手だけでなく、子どもたちのためにも」

ーーこども食堂「みんなのテーブル」を始めたきっかけについて教えてください。

小原)実は、きっかけはこども食堂としてではなく、クラブの独身選手に対する食事提供を考えたところからでした。寮がない中で、選手に対して栄養価の高い食事を提供することを考えてきた結果、「選手だけに提供するのはもったいないのではないか?」と思い、選手以外にもアプローチする方法を考えることになりました。秋田県の状況に目を向けたときに、ひとり親世帯へのサポート、子どもたちのためになることをと思い、『こども食堂』を実施することになりました。現時点では、感染症対策などの観点もあり、当初考えていた選手への提供はできていませんが、こども食堂としてまずは動き出しています。

ーープロスポーツチームが常設のこども食堂を実施しているのは珍しく、「みんなのテーブル」の大きな特徴ですよね。

小原)常設化については前例がなく、プロスポーツチームでは初めてだと思います。スタートするまで、オープンしてからも、まだまだいろいろと模索しながらの運営になっています。
秋田県には常設のこども食堂が1つもなかったのですが、自治体やNPOさんのお力添えもあり、開設に至ることができました。

内観

リピートで来る人は多い一方、課題も

ーー2021年10月からスタートしたこの取り組みですが、どのくらいの方に利用していただいているのでしょうか?

小原)開設時はまだ大きく宣伝をしていませんでしたが、週4日の運営で1日10人ほど(3家族ほど)に利用していただきました。
その後、こども食堂を始める当初の目的としてあった『ひとり親世帯の支援』をするため、秋田市と連携して児童扶養手当を受給している世帯に対して、こども食堂のチラシを配布しました。約2500世帯にチラシをお届けし、今では1日30人ほどの方が利用する場所になっています。

ーースタートして間もないと思いますが、何度か来てくれる方もいらっしゃるのですか?

小原)ひとり親世帯は週1回無料で食事ができる会員制度を取っているので、週1回リピートで来られる方は多くいらっしゃいます。その一方で、1日30人というのは約2500世帯にチラシを配布した結果としては少なく、まだまだ支援が行き届いていないと感じています。

外観

「取り組みの輪を、全県・全国に広げていきたい」

ーー協力団体さんからは、どのような協力をいただいているのですか?

小原)まず、運営に関しては、地域のボランティアさんだけでなく、こども食堂の運営経験のあるNPOさんにも参加していただいております。
また、食材についても多くの寄付をいただいています。パートナー企業のみなさんだけでなく、個人の農家さんからも新米の切り替えの時期にお米の提供を相次いでいただきました。有効活用するために、余剰になりそうな分については許可をいただいた上で県内の各支援団体に送るなど、副次的な効果も生まれています。

――さまざまな協力が集まりやすいのも、プロスポーツクラブがこども食堂に取り組む価値ですね!

小原)そうですね。それだけでなく、秋田ノーザンハピネッツとしてやることで、こども食堂に対する「困窮世帯しか行けない」というイメージを変えることに貢献できているのではないかと思います。
そもそも『みんなのテーブル』という名前は、「みんなが食事のテーブルを囲むことで、子どもたちの笑顔を作りたい」と代表の水野が命名したものです。みんなで関わりながら食堂を作っていくという部分においても、プロスポーツチームの発信力をうまく活かせているのではないかと感じています。
現在実施している秋田市以外の地域でも取り組んでほしいという声も届きます。こうした輪が全県に、全国に広がっていければ、活動の意義がさらに深まっていくと思います。

外観1

「やめられない」活動。持続可能にするための小さな工夫。

ーーこども食堂を“常設”で構えるということは非常に大きな意義がある活動だと思います。一方で、ハードルも高いのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

小原)おっしゃる通りです。この事業は、『始めるからにはやめられない』と思い、覚悟を持って臨んでいます。
こども食堂が必要とされない世の中、というのが理想かもしれませんが、必要とする人がこれだけいるなかで、どう持続できるかというのは私たちにとってハードルであり続けると思います。

常設の取り組みがプロスポーツクラブとして初めてとなる以上、いかに持続的なモデルを作るか私自身も毎日考えています。
常設にすることで人件費もかかることになりますし、ボランティアとして協力していただいている皆さんに『みんなの食堂』の意義を感じてもらいやすい環境作りを進めています。
また、食材の調達という面では、秋田ノーザンハピネッツ株式会社として運営するこっぺぱん専門店「ハチトニ製パン」のこっぺぱんをJA秋田なまはげさんの直売所で販売しており、朝一の納品の帰りに規格外の野菜を持って帰らせていただくなど、いろいろな面で周囲からのご協力をいただいています。

――イベントではない、常設だからこその課題は多くあるのですね。今後『みんなのテーブル』はどのような方向を目指していくのでしょうか?

小原)持続的な活動にするという意味で、多くの大人の方に来ていただきたいと思っています。「みんな」というキーワードにあるように、地域のたくさんの方々が関われるように工夫をしていきたいです。また、当初の目的であった選手への食事提供などの面も実施できるようにし、こども食堂だけでない組み合わせでの運営モデルも確立していけたらと思っています。

――ありがとうございました!

秋田ノーザンハピネッツ みんなのテーブル

みんなのテーブルロゴ

営業曜日:毎週火・水・金・土
営業時間:16:00~20:00
住 所:秋田県秋田市広面字釣瓶町140-1
駐車場:敷地内・近隣連携駐車場あり
料 金:大人 1,000円、高校生 300円、中学生以下 無料

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