スポーツ

「臓器移植を受けても、運動できる!」〜移植者がスポーツを通して伝えたいこと

「臓器移植をした人もこんなに運動ができるんだ!」
その思いを伝えるため、毎年開催されている「全国移植者スポーツ大会」では、移植を経験した人たちが集い、記録を競っています。
このスポーツ大会を通して何を伝えたいのか――。主催する「日本移植者スポーツ協会」理事長の戸塚仁さん(以下:戸塚)に話を伺いました。

「あとに続く人たちのために何かしたい」

ーー戸塚さんが理事長を務められている「日本移植者スポーツ協会」では、どのような活動をされているのですか?

戸塚)主に、毎年開催する臓器移植者のための「全国移植者スポーツ大会」の運営と、2年に1度実施される「世界移植者スポーツ大会」へ選手派遣をしています。
新型コロナウイルスの影響で2020年と2021年は全国大会を開催することができず、アメリカ・ヒューストンで開催される予定だった2021年の世界大会もバーチャルで実施されることになりました。
この協会の特徴として、私たち理事は全員が移植の経験者であることも挙げられます。

ーー理事のみなさんが移植の経験があるということは、戸塚さんご自身もですか?

戸塚)私は、1998年4月15日に母から腎臓の提供を受けました。

臓器移植は、あまり多くの方が受けられない医療で、移植件数が増加した現在でも年間2,500件前後しかありません。その理由として、臓器の移植はドナー(提供者)がいなければ成り立たたないこと、腎臓などは生きている方から提供いただくこと(=生体移植)が可能ですが、心臓は亡くなった方からではないと提供いただくことはできないことなどが挙げられます。

私は幸いにも臓器移植という医療を受けることができたました。それは幸運なことであり、「あとに続く人のために何かしたい」と思うようになりました。そうしたことが、臓器移植者としてスポーツ、そして協会のための活動を始めたきっかけになっています。

「“移植をしても運動ができるんだ”と伝えたい」

ーー戸塚さんは「移植者スポーツ」とどのようなきっかけで出会ったのですか?

戸塚)私自身、学生時代は陸上競技をやっていたのですが、高校2年生の時に慢性腎不全になったために競技を辞めざるを得なくなってしまいました。

1998年の臓器移植後、2001年に神戸市で移植者スポーツの世界大会が開催されると聞き、「やり残したことがある」という気持ちが心に残っていたこともあったため、まずは2000年の全国移植者スポーツ大会に参加することにしました。

ーーそうした経験をされたなか、スポーツを通した活動を行っている理由を教えてください。

戸塚)私たちは“内部障がい者”と言われ、外見は一般の方と変わらないため、みなさんからすると移植した人がその後にどのような生活をしているかは想像しにくいです。
だからこそ、移植した人が走ったり泳いだりすることで「移植をした人もこんなに運動ができるんだ!」と伝えることができるのではないかと思っています。

また、私たちも移植後は社会に復帰して、働かなくてはいけません。移植について理解が足りていない方にとっては、移植した人に対し「ちゃんと勤務できるのか」「通勤はできるのか」といった疑問が生まれてくることも多いです。そうした方々に理解をしていただくために、スポーツを通じた活動で世間にアピールしていくことは非常に適しており、この活動の意義を大きく感じています。

全国大会は「1年に1度、再会を楽しめる場」

ーー1年に1度開催される全国大会では、参加された方からどういった声がきかれますか?

戸塚)大会の常連になる人もいて、移植仲間の「横の繋がり」がどんどん広がっていきます。この大会自体が、同じ経験をしている人同士で病気に関する相談をしたり、移植歴が長い人からの歴が浅い人が話を聞いたりする機会にもなっているようです。1年に1回会うことができ、再会を楽しむ場になっているので、皆さんに喜んで参加いただいています。

ーー同じ経験を持つ方々のつながりができるのは非常に大きなことですね!
戸塚さんは2009年の世界大会で金メダルを獲得されたと伺っています!世界大会はどのぐらいの規模で、どれくらいの方が来られるのですか?

戸塚)世界大会には約50の国と地域から1,500名前後、移植した人が集まります。
大会期間は7日ほどで、陸上競技や水泳、テニス、卓球、バレーボールなど様々な競技が行われます。「臓器移植者のオリンピック」と呼ばれることもあるほど、たくさんの競技があります。

私は、金メダルを獲得した陸上競技の100mや200mの他に、テニスにも挑戦したんです。
7日ほどある大会のうち陸上競技は2日間しかなく、他の時間にやれる競技として、31歳からテニスを始めました。

ーー陸上だけでなくテニスも!すごいですね!

移植経験者について知るべきこと

ーー先ほど、移植は内部障がいであり、社会復帰の際の理解にもスポーツが適しているというお話をいただきました。社会復帰に際し、周囲の人たちが『移植経験者』について知っておくべきことは何かありますか?

戸塚)基本的には一般の方とほとんど変わりありません。配慮が必要なことは、月に1度ほど通院が必要になることと、12時間もしくは24時間に1回「免疫抑制剤」を飲む必要があることぐらいです。
また、日本の場合は臓器提供が少なく、移植までに長い期間を要してしまう現状があるため、体力が低下している方は回復に時間がかかります。移植手術から1年ほどは感染症に注意が必要であるなど基本的なことはありますが、本人から話しやすい環境をつくっていただくことも重要だと思います。

ーー移植をした人がプレーするスポーツに関してなにか制約などはあるのですか?

戸塚)スポーツに関しては、腹部に衝撃を与える格闘技やサッカーのようなコンタクトスポーツはを行わないよう注意が必要です。
私も世界大会でサッカーのエキシビションマッチに出場したことがありますが、スポーツをしていると熱中して周りを見ることができなくなるので、そこは注意すべきだと思いました。

先ほどテニスを始めたお話をしましたが、テニスのプレー中、移植した腎臓の近くにボールが当たったことがありました。幸いなことに何事もありませんでしたが、それ以降は相手にスマッシュを打たれたときにすぐに背中を向ける癖が付きました(笑)

ーー大切なことですね!(笑)
お話を聞かせていただき、ありがとうございました!!

大会が目白押し!!

今年9月20日〜11月28日…世界の移植者で20億歩を目指す「ビリオンステップチャレンジ2021」開催(「World Transplant Games Federation」主催)

今年11月…「全国移植者スポーツ大会」(バーチャルで開催予定)
GPSを使いランニングやウォーキング、ロードレース、水泳などを実施

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