災害で孤立したとき、『電気』をどうするか?
山口県周南市須金地区では、自主防災組織が率先してその備えに取り組んでいます。クラウドファンディングで取り組む『ソーラーシェルター』はその象徴。山の中にあるため、大雨等の災害で孤立してしまうことも多い須金地区。自主防災部の吉安輝修さん(以下、吉安)は、『須金らしさ』を持ちながらの防災対策が大事だと話します。現在の課題と想いを伺いました。
『自主防災部』とは?
ーー吉安さん、本日はよろしくお願いします。吉安さんは、山口県周南市須金地区の自主防災部の部長さんとお伺いしておりますが、その『自主防災部』とはどんなものなのでしょうか?
吉安)地域の中にはいろいろな組織があります。須金地区では、そうした消防団や民生委員などのいろいろな組織が、動きを共有しながら一緒にやったらうまくいくのでは?ということで、そうした調整をする役割のコミュニティ『生きがいのある須金をつくる会』というものが、約30年ほど前からあります。自主防災部はその中にある、防災に関わる担当になります。
ーーなるほど、その中で吉安さんはどのように関わっているのでしょうか。
吉安)平成27年頃から自主防災部として関わり始めています。行政からも言われた組織だったので、かたい組織なのかなと思っていたのですが、「何をしたらいいのかじゃなくて、何をやってもいいんだよ」という話になり、自分たちがやりやすいように取り組んでいます。ここの地区で防災のために何が必要なのか、みんなで話し合いながら、あれやろうこれやろうといった感じで今までやってきました。半分は楽しみつつやってきましたね。(笑)
須金地区ってどんなところ?
ーー須金地区ってどのような地域なのですか?
吉安)ここの須金地区の現状を知る方にはびっくりされるのですが、昭和の初めの頃には人口が約5,000人いました。小学校、中学校、高校の分校などもあり、この地区で完結できるような場所でした。
今では世帯数が160~170世帯くらいで、高齢化率は約65%になっています。ここで生活っていうのは、車を持ってるか、かろうじて走っているコミュニティバスによって、20キロぐらい離れた町に買い物に行く生活になっています。
ーー過疎化が進んでいる地域なのですね。須金地区にお住まいの方はどのようなお仕事をされているんですか?
吉安)昔からこの地区には果樹園の団地があり、なしやぶどうを作っている方が多いですね。かつては、豊富な山林資源を生かした林業も盛んでした。
ーー観光資源という点でも、ホタルの風景などすごく素敵な街ですね!
『模倣』ではなく、須金らしい防災
ーーこのような須金地区で、自主防災部として活動を始められています。
吉安)最初、自主防災の活動をする時にお手本になる自主防災組織などに研修に行くなどしていました。それを模倣しようと一生懸命努力したんですよね。
ーーなるほど、他地区に学びに行かれることも多かったんですね。
吉安)でも、通用しませんでしたね。(笑)
たとえば避難所の運用に関して研修を受けると、体育館かなどに集まるときには地区ごとに線を引いて区分けをして、ここに集まってもらうように、などを教わります。人数確認等も含めて効率がいいので。
しかし、我々もその防災訓練でそれを真似してやってみると、みんな顔見知りなので区分けを越えてどんどん集まってしまうんです。「こっちの集落だからここに」は本当に通用しなくて、1回目でその現状を理解し、2回目からは『須金流』でやらないといけないと思い始めました。
ーーそうなんですね(笑)。その須金流とはどのような形ですか?
吉安)みんな顔見知りで、何か配ろうとか、名簿を書こうとかの際も、ちょっと元気そうな人が先頭に立ってやっていただけるんです。要するに、みんながその気になれば1つになって行動できるので、それを前提に活動するようにしました。
1回目などは、こちらのコントロールが悪いからうまくいかないんだ、と落ち込むこともあったのですが、「須金はこういう地区なんだ」と意識をすると、防災に対しての考え方もどんどん変わっていきました。
ーー素晴らしいですね。やってみてわかったことだからこそ、住民の皆さんも本当によく理解されてるんじゃないかなと思います。
須金地区の皆さんは、当然のように顔見知りに対して、何かあったら協力すると思っているんですね。なかなか改めて意識をしないと気づかない部分ではないかと。
吉安)そうなんですよね。防災訓練で、ただ集まって、避難所で座って解散!ではつまらないので、炊き出し訓練ともセットにして、お昼ごはんをみんなで食べましょうという取り組みもしています。スーパーに車で行って買い出ししてから臨むのですが、予想よりも人数増えてしまうと、もう大根がない、芋がないとか、いろいろなトラブルが起こります。そうすると、「うちの畑で取ってくるよ」と言ってくれる人がすぐにいたり、『みんなが助け合ってやっていけるんだな』というのは、防災訓練をやっていると感じられることです。
安定した『電気』がない不安
ーーそうした、皆が協力して支えあえる須金地区の中で、『電気』についての備えはいかがなのでしょうか?そこを課題に感じられたきっかけを教えてください。
吉安)昔の生活であれば、暗くなったら寝るで済んでいたかもしれません。ですが今は、情報を仕入れるためにはテレビやラジオなど、そうしたものがないといけません。大規模災害になればなるほど、まわりの情報が入ってこないとね安心できないと思うんです。
そのためには『電気』が必要になります。よく、懐中電灯やモバイルバッテリーを用意するのですが、考えてみればこれらのものは使ったら終わりになります。これは地域という単位で考えても同じことで、いくら発電機やモバイルバッテリーを備えても、使ってしまえば終わり。大きなモバイルバッテリーは備えていますが、スマートフォンの充電に使おうと思うと、避難所では1~3日しか持たないかもしれません。
ーーたしかに、「使ってしまったら終わり」というのは先の見えない災害の中で少し不安もありますね。
吉安)特に須金地区は、山の中ということもあり停電のリスクが非常に高い地域です。山の狭い道沿いに電柱が立っているので、大雨等による土砂災害のときに電柱も一緒に倒れてしまうというケースがあります。そうした地区の特性の中で、外との通信手段のためにアマチュア無線の資格を消防団員が8割ほど取っていたりはしますが、アマチュア無線に関しても電気は必要です。電気に関してはなかなか解決手段がない状況でした。
災害はあるかないかわからない
ーーそこで、今回のクラウドファンディングでのソーラーシェルターが必要になると。
吉安)我が家にもソーラーパネルはあります。しかし、蓄電池も一緒にないと、貯めておくことができません。こうした貯める仕組みと、それから防災倉庫としても使えるコンテナは私たちの地区にとって理想的なものです。
ーー災害時以外での利用もソーラーシェルターのよいところです。
吉安)災害というのはあるかないかわかりませんし、ひょっとしてこのソーラーシェルターいれて50年間1回も使う出番ないかも知れません。なので、電気がある間はその電気は有効に使いたいと思っています。どう使おうか、すごく楽しみにいろいろと考えています。
生活に必要な食料などは、1日2日じゃなくても、もうみんな買いだめの生活に慣れていますし、顔なじみなので隣の人に「ちょっと醤油をかして」ということもできますが、いざというときのための備えのために、このソーラーシェルターをまずは使っていこうと考えています。
ーーソーラーシェルターの使い方、吉安さんご自身もすごくワクワクされているのですね!本当は防災のためだけど、クリーンなエネルギーを使って町のために何かできないか、という発想になっているのですね!
須金地区の未来へ
ーー今後、吉安さんは須金地区をどんな地域にしていきたいですか?
吉安)もうここに根を下ろしたからには、自分でこの地で何か生きていけることはないかなとは常に考えています。10年ぐらい前から少しずつ準備をしてきて、山にゆずを植えて育てています。産業といえば果樹園と先ほど話ましたが、他にもできるモデルを作りたいなと思って始めました。山に切り開いて、ゆずを植えて、近年ようやくぼちぼち収穫できるようになってきました。
ーーすごいですね!
吉安)だから、学校や病院など、そうした面を見ると絶望的な地域かもしれないですが、自然を生かしてなにかやる、という点に関しては障壁がありません。耕作放棄地も多くあるので、逆に言えば、自分が手入れして自分の思うような形にできます。
ーーいいですね!単純新しいことをしようだけじゃなくて、モデルになろうとされているのですね。
吉安)ゆずの木は、収穫できるようになると毎年収穫量が大きく増えていきます。しっかり増やして、誰でも引き継げるようにもしたいなと思っています。
ーーありがとうございました!
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