Sports for Socialでは、サラヤ株式会社(以下、サラヤ)のボルネオで行っている環境保全活動に関する連載を掲載してきました。今回は、サラヤの創業の原点でもある「手洗い」のプロジェクトについて前編、後編の2回で紹介します。
前回の記事では、ウガンダの学校や村に手洗い施設を設置し、手洗い教育を子供とその母親に行うことで手洗いの大切さを伝えている「100万人の手洗いプロジェクト」を紹介しました。
後編の今回は、ウガンダの病院で発生する院内感染をなくすために始まった、アルコール消毒剤の現地生産、教育・普及活動「病院で手の消毒100%プロジェクト」の紹介です。
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医療現場にアルコール消毒剤を 「病院で手の消毒100%プロジェクト」
「100万人の手洗いプロジェクト」を進める中で見えてきたのは、医療施設においても衛生環境が悪いということでした。
清潔な水で手洗いができないだけでなく、医師や看護師も正しい手洗いや消毒の知識を持っていないため、病院内では院内感染が発生していました。そこでサラヤは、学校や村での手洗い普及活動だけでなく、医療施設の衛生環境も改善したいと考えるようになりました。それが、2012年から始まった「病院で手の消毒100%プロジェクト」です。
まずは現地調査として、日本からアルコール消毒剤をウガンダへ運び、病院に設置して院内感染の予防効果が出るのか調査しました。そうすると、アルコール消毒の実施率が上がるにつれて、乳幼児や妊産婦の感染症発症数が低下することが分かったのです。
ウガンダ現地で消毒剤を生産
ウガンダは飲料用アルコールの消費量が世界的にも高く(2018年WHO調査で世界4位)、また原料のひとつであるサトウキビの生産も盛んであることから、現地の製糖メーカーの協力のもと、アルコール消毒剤の現地生産・販売を始めることになります。
現地工場での生産は、日本での技術や品質管理のノウハウが生かされています。原料は、製糖メーカーがサトウキビから砂糖を作るにあたり廃棄していた廃糖蜜で、それを発酵させることでエタノールを取り出しています。これにより、現地の方に購入しやすい価格で消毒剤が提供できるだけでなく、生産、物流のためのスタッフの雇用を生み出し、持続可能な事業(ソーシャルビジネス)が実現できているのです。
また、アルコール消毒剤を病院に置いてもらうため、その必要性を病院で働くスタッフに知ってもらうべく衛生インストラクターを新たに雇用しました。
衛生インストラクターは、アルコール消毒剤が感染を防ぐことにとても有効であることを科学的に説明し、どんなときにどのように使うかを細かく指導します。しかしながら、それまでのやり方を変えるのは簡単なことではありません。何度も繰返し説明をして,習慣にしてもらいました。
患者を守るだけでなく、医療現場で働く自分自身が感染しないためにもアルコール消毒が必要だと伝えることで、積極的に取り組んでくれるようになりました。
こうした活動が実を結び、今ではウガンダの病院ではアルコール消毒剤そのものが「サラヤ」と呼ばれるようになり、消毒剤が無くなると「サラヤを持ってきて」と注文が入るほどになりました。
「手洗いで」少しずつ、世界の衛生に、変化を作る
いままで習慣になっていなかった「手洗い」をウガンダで定着させるのは大変なことでした。
2010年に「100万人の手洗いプロジェクト」が開始してから10年。
プロジェクト開始前に食事前やトイレ後に手洗いをしていたウガンダ国民は約20%、現在は約35%に向上しています。
また、2009年に5歳児未満で亡くなる子どもが1000人あたり89人いましたが、2018年には46人へと減少しており、少しずつではありますが、「手洗い」を通して救われる命が増えているのです。もしかしたら、現状は大きな数字や変化には見えないかもしれません。しかし、この数値が0になるまで、サラヤのプロジェクトは続きます。
日本の衛生を守るために日本中に「手洗い」を広めたサラヤ。
日本の衛生を支えるだけでなく、世界でも一人でも多くの命を救うために活動しています。
消費者である私達にできること、
それは事実を知って、賛同する活動をサポートできる商品を選ぶこと。
小さな積み重ねが、大きな変化を生み出します。
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サラヤ株式会社:https://www.saraya.com/
病院で手の消毒100%プロジェクト:https://hospital.tearai.jp/
100万人の手洗いプロジェクト:https://tearai.jp/
100万人の手洗いプロジェクト支援商品:https://tearai.jp/products/
ホワイトリボン支援商品「ラクトフェリン」:https://lactoferrin-lab.jp/csr/
国際協力NGOジョイセフ(JOICEP):https://www.joicfp.or.jp/jpn/
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