【連載 #女性のコトを考える vol.1】
この連載では「#女性のコトを考える」をテーマに、女性だけではなく、男性が“女性”のことを、知る・理解することを目的として、フェムテック領域や女性向けサービスを展開する企業様との対談を実施します。
対談では、Sports for Socialを運営する株式会社HAMONZ代表の山﨑蓮があえて“男性”目線で“女性のコト”について質問や疑問をぶつけていきます。あなたが疑問に思っていたことの実情や、知りたかったことの答えが見えてくるはずです。
多様な視点から“女性”の身体や心に起こる問題を知り、理解を深める機会になれば幸いです。
Rebolt × Sports for Social
「生理は“女性”だけのものなのか?」
生理はなぜ「恥ずかしいもの」として隠されるのでしょうか?
話しづらいからこそ、隠れている問題。その背景にはきっと、声を上げづらい人たち、そして声をかけづらい人たちがいる。だからこそ、今ここから、カジュアルに話していく意義がある。
今回は生理に関して、性別の垣根を超え、現役/元サッカー選手であり、株式会社Rebolt共同代表の下山田志帆さん(以下:下山田)と内山穂南さん(以下:内山)、Sports for Socialを運営する株式会社HAMONZ代表取締役・山﨑蓮(以下:山﨑)に、オープンかつラフに、対談形式で語っていただきました。
前・中・後編の3編構成でお届けする今回の対談。
前編では、「生理は“女性”だけのものなのか?」をテーマに、生理への向き合いづらさ、男性の理解、アスリートならではの悩みについてお話を伺いました。
株式会社Rebolt
株式会社Reboltより発売されたアスリート発吸収型ボクサーパンツ『OPT(オプト)』
コンセプトは、「365日24時間 挑戦し続けるあなたに新たな選択肢を」
そんなOPTは、女性用プロダクトにおける“女性らしさ”に捉われず、“カッコいい”選択肢を生み出し続けます。
写真提供:株式会社Rebolt
男性が向き合いづらい“生理”というもの
ー今回の対談では、男性が生理を知るきっかけにする、という目的でお話を伺います。まず、山﨑さんが考える、特に男性が“生理”に向き合いづらい理由は何だと思いますか?
山﨑)私個人の意見ですが、男性が生理に向き合いづらい理由は2つあると思っています。
ひとつは、多くの男性は生理そのものが何なのか理解していないこと。
義務教育の過程で一通り勉強をしているはずなのですが、テストの範囲には理解があっても、それ以上深く実際に女性はどんな悩みがあるのか?などの部分には触れられていません。
もうひとつが、どこまで触れていいのか分からないという点です。ジェンダーの話もそうなのですが、その人の“性”というものにどこまで踏み込んでいいのか、女性の生理の問題にどこまで関与していいのかということが分からないのが原因なのではないかなと。
この2点、教育過程での十分な教育がなされていない点と性に対する距離感が分からない点が原因なのではないかと思っています。
教育と生理
下山田)そうですね。どういうものなのか分からないという点に置いては、私はしょうがないと思っています。私たちも男性が普段どうなっているかもちろん分からないし、それの逆が起きるのもしょうがないと思っているんです。
ただ、教育過程に問題があるという点には同意します。知識不足があるのはまさしく教育が正しく行われていないからなのだと思います。
私自身も小学生の頃に女子だけ別に集められて生理用品を渡され、「こうやって使うんだよ」という授業を受けたことがあります。「なんで、これ男子と女子で分かれるんだろう。」って子どもながらにとても不思議に思いました。
山﨑)そんなことがあったんですね。
下山田)その時に『これは、男子とかにペラペラ話しちゃいけませんよ。』と先生に言われたことが結構衝撃的でした。その授業で、みんながナプキンを1枚ずつもらったのですが、私のクラスにいたやんちゃな女子が教室でナプキンを振り回してたんです(笑)
そして、振り回しているのを見た先生が『何してんのっ!!!(怒)』みたいに怒ったんですね。
それで、私たちも『あっ、生理って男子の前で見せちゃいけないんだ。』と思ったし、たぶん男子側も『見ちゃいけないものを見たな』という気持ちになっただろうなと思ったんです。
先生の指導の仕方によっては “生理は本当に触れちゃいけないもの” という感覚が、子どもの頃から植え付けられてしまうのかもしれません。
山﨑)そうですね。
生理は絶対に触れてはいけないことなんだと思っていましたし、今も思っています。
下山田)それは子どもの頃に何かあったとか、何かきっかけがあったんですか?
山﨑)生理は隠すものだという印象があるからかもしれません。
多くの女性がトイレに行く時にポーチを持って行くのを見たり、小学生の頃に女子生徒が「お腹痛いです」と言って保健室に行くのを何回か見て『なんで女の子は保健室に行くんだろう』と不思議に思ったりしたことがあります。
「人が隠しているところに踏み込んだらダメだよな」と感じていました。それが1番のきっかけでしたね。
下山田)確かに!お互いに触れてはいけない空気感を作っている感じですよね。
山﨑)そうですね。
内山)教育など最初のインパクトが与える影響は、生理の問題に関わらず大きいと思います。初めに正しい情報を得られないと、生理への向き合いづらさのように、訳もわからず「なんか触れちゃいけない」「なんか隠さなきゃいけない」という感覚になってしまいますよね。それが当たり前になり、「絶対に触れられない」「そこは突っ込まない話」のようになってしまっているのが、今思うともったいないと思いました。
なぜ、“男性”は生理を理解した方が良いのか?
ー男性が生理について理解すべき理由はどういったことだと思いますか?
山﨑)「ジェンダー平等」や「女性の社会進出」は大きな社会課題になっています。ただ、ジェンダーの問題や女性の社会進出について議論される時、どうしても中心にいるのが “女性” であり、男性がそこに入っていけないということは課題に感じます。
改革をするためには、女性だけでも男性だけでもいけません。
特に、経営者やマネジメント層にいる男性が、本格的に取り組んでいかないと“本当の意味での女性の社会進出”は実現されないのではないかと思います。
だからこそ、女性の社会進出を実現する上での第一歩として、男性も女性のことを理解することが必要だと感じています。
下山田)ジェンダー問題や女性の社会進出について話していても、男性に問題を問題として捉えてもらえないこともあると思います。そもそも、組織の中心だからという理由で、議論の中心に男性がいることも多いと思うので。
そういった意味でも、山﨑さんが仰っているように組織で力を持っている方こそ、もっと学ばなければならないと私も思っています。
アスリートと生理
ー「アスリートの生理」は世の中全体で触れられる機会が少ない。そんな中で、アスリートならではの生理の悩みはありますか?
下山田)指導者も男性がまだまだすごく多いですし、同時に、日本のスポーツチームは組織がとても強いコミュニティだと感じます。上の人の理解が無かったり、知識が無かったりすると、所属する人たちが声を挙げづらいことがあります。男性女性に限った話でもないですが、本当に必要な時に助けを求められない空気感があると感じています。
生理や女性の体を持ったアスリートの話題において、男性比率が高い指導者やクラブのオーナーの方々が本当に選手のためを思い、「なぜ選手は悩んでいるのか?」というところを突き詰めていくとすると、“生理”という話題は避けては通れないのではないかと思います。
山﨑)そうですね。残念ながら、意思決定者に男性が多い中で、女性がどれだけ頑張っても思ったように制度設計が進まないという歯がゆさはあると思うんです。
ただ、女性だけで進めても今度は男性にとって納得感が低い制度になってしまう。やはり、いろいろな立場の人が歩み寄って議論していかないといけない。性別に限らず、より様々な立場の声が反映されるように進めていかないとこの大きな課題は進んでいかないのではないかと感じています。
下山田) まさしくそうですね。
写真提供:下山田志帆氏
一人ひとり違う悩みがある
ー改めて、意外と知らない生理の “人それぞれ違った” 悩みや辛さについてお聞きできればと思うのですが、具体的にはどういったものがありますか?
下山田) 本当に全然みんな違うので、個人の話として聞いていただきたいのですが、私が昔から悩んでいるのは生理痛です。生理開始2日目あたりには、ベッドから起き上がれないほど痛い時もあります。
まだ生理痛が酷い時に試合が被ったことはないのですが、練習が被ったことは何回かあります。薬を無理やり飲んで気持ちだけで行くような時もあれば、「これは本当に無理。」と思って休んだこともあります。生理痛に“邪魔されている”ような感覚。競技ができないレベルにまで状態が悪くなってしまうことも少なからずあります。
また、生理用品には昔からずっと悩まされ続けてきました。雨の日や暑い日には、“パンツを10枚ぐらい重ねて履いてる” ような感覚です。
ーそんな感覚なんですね!
下山田)「汗や雨が染み込んだ布が本当に重い…」という感覚を抱えながら、試合をしなければいけない。それはやはり気持ちのいいものではないです。
それが自分だけの苦痛だったらまだしも、ナプキンを落としたり、白いユニフォームが真っ赤になってしまったり、他人から見ても気付いて「あいつやらかしてるな」と思われてしまう時もああり、そういう時は気持ち的には最悪ですね。
山﨑)生理痛を男性にでもわかる痛さで表すとどんな感じですか?全然イメージ出来なくて…。
下山田)何ですかね …。便秘10日目みたいな感じですかね。
内山)わかんないよ(笑)
下山田)わかんないか(笑)内山は、生理痛ないんだもんね。
内山)私は、生理痛や“PMS”と呼ばれるような生理の前後に生まれる体のだるさやイライラだったりは全くないんですよ。それも本当に個人差があって、今下山田が生理痛の便秘10日目ぐらい辛いと言ってましたが、全くそれも分からないですし。
※PMS=月経前症候群(premenstrual syndrome):生理3~10日ほど前に始まる、さまざまな精神的・身体的な不調のこと。
ただ、生理用品による不快感であったり、私の場合は生理自体や、生理の時の自分が嫌でした。
例えば、生理用品のデザインは、小さい時から本当に嫌だなと思っていました。生理が来た時に最初に使う物はナプキンですが、高い確率で「ピンクのパッケージ、花柄、フローラルの香り」という要素を含んでいます。私個人としては、そういったものに対して、なんでだろう?と感じていました。
それを使っている自分を想像するのが結構苦しかった。なので、生理の時の自分は“自分じゃない”ような感覚がずっとあり、“いわゆる女性という性を押し付けられてる感”が強くて嫌でしたね。
写真提供:内山穂南氏
山﨑)症状に限らず、生理用品、そして生理との向き合い方など、ひとえに生理といっても人それぞれ悩みも異なるんですね。
編集部より
今回は
●男性が生理に向き合いづらい理由
●男性の生理への理解
●アスリート、そしてジェンダーマイノリティの方々ならではの悩み
を伺いました。
生理は“タブー視されているトピック”だからこそ、様々な点で発見のある内容だったのではないでしょうか?
中編では、“多様性”や、海外での生理に対する考え方の違いをテーマに、対談内容をお伝えします!