茨城県古河市に本社を構える株式会社イノベックス。食品容器をはじめとしたプラスチック製品の製造を手がけ、長年にわたって地域産業を支えてきた企業です。その現場で、30年にわたり第一線を走り続けてきたのが、生井さん(以下、生井)です。
高校を卒業してすぐ、18歳でイノベックスに入社した生井さん。以来、さまざまな部署を経験しながら現場の知識と対応力を磨き、現在では70人を超えるメンバーを束ねる管理職として、若手の育成にも尽力しています。一方で、学生時代から打ち込んできたバスケットボールを通じて、地域の子どもたちと関わり続けるなど、仕事の枠を超えた活動にも力を注いできました。
今回のインタビューでは、生井さんが30年という長きにわたって現場に立ち続ける中で、どのように仕事と向き合い、成長を重ねてきたのか。その歩みと、これからの若い世代に向けた熱いメッセージを伺いました。

高校卒業してすぐ「とにかく決める就活」から始まった
ーーイノベックスに入社された当時のことを教えてください。
生井)入社したのは今から30年前。高校を卒業してすぐでした。
ーー就職先としてイノベックスを選んだ理由は何だったのでしょうか?
生井)高校時代のバスケットボール部でお世話になっていた先輩が働いていたことがきっかけでこの会社を知りました。地元で働けること、交代制勤務で昼間に時間が取れるという働き方にも魅力を感じました。若い頃は「夜勤明けに遊べる」というのも正直なモチベーションでしたね(笑)。そのおかげで、社会人になってからもバスケを続けられました。
ーーそんな動機から始まった社会人生活の中で、実際に働いてみて意識の変化もあったのでしょうか。
生井)最初は正直、ただの工場勤務くらいに思っていました。でもあるとき、自分たちが作っている食品容器が、実際にコンビニやスーパーで使われていると聞いたときに、“自分が何のために仕事をしているのか”を理解することができ、ただの作業ではなく“誰かのためになるものを作っている”という実感が初めて湧いたんです。それが、仕事への向き合い方が大きく変わるきっかけになりました。

教えるだけでなく“伝わる”工夫—バスケットボール部の経験が仕事に活きる
ーー学生時代は部活動にも打ち込まれていたそうですね。
生井)高校ではバスケットボール部に所属していました。就職後も社会人チームに参加したり、ミニバス(少年団)で指導者としても活動していました。
ーーその経験が今の仕事にも活きていると感じる場面はありますか?
生井)“教える力”はミニバスの指導で磨かれたと思っています。子どもに教えるときは、1から順番に説明して、理解できていなければまた最初に戻る。その繰り返しです。現場でもまったく同じで、ただやり方を伝えるだけでなく、相手が本当に理解しているかを確認することが大切。そういう教え方が自然とできているのは、バスケットボールの指導経験のおかげですね。
ーーイノベックスさんは、古河市のスポーツイベントである『スポーツフェスタ古河』にもご協賛されていて、スポーツを通した地域への貢献を会社でも行っていますよね。
生井)もともと子どもたちと関わる機会が多かったので、こうした地域とのつながりはやりがいを感じます。

変化を前向きに受けとめ、対応力を育ててきた30年
ーー現在はチームをまとめる管理職の立場として、若手の育成も担当されているそうですね。
生井)メンバーをまとめながら、教える立場として意識しているのは「なぜその作業をするのか」をしっかり伝えることです。理由を理解できれば、自分で考えて応用できるようになります。
ーー現場でとくに意識していることはどんなことでしょうか?
生井)やはり“対応力”ですね。昨日までの予定が今日にはまったく変わる、なんてこともざらにあるので。人・機械・品質、すべてにおいて柔軟に対応できるよう意識していますし、現場のみんなもそれぞれの立場で対応してくれているので、足りないところは僕が補う、逆に僕が難しいことは任せる。そうやって支え合ってやっています。
ーー30年の間で、さまざまな変化があったと思いますが、どんな気持ちで働き続けてこられたのでしょうか?
生井)振り返ると、いろいろな部署に異動できたことが大きかったと思います。部署が変わるたびに「なんでこうなっているんだろう」と仕組みに興味を持って取り組んできました。その姿勢が、今の対応力や考える力につながっていると感じます。47歳になった今でも、新しいことには「知りたい」という気持ちを忘れずにいたいですね。

若者向けのメッセージ
ーーこれから働く若い世代の皆さんへ、メッセージをお願いします。
生井)イノベックスの若いメンバーはとても真面目な方が多い印象です。真面目なことはもちろん良いことですが、それだけではなく真っ直ぐすぎるくらい正直で、ちょっと“体が先に動いちゃう”ようなところも見てみたいなと思います。そうした人は、最初は失敗したり、まわりとズレたりすることがあっても心配しなくてよくて、ゆくゆくは現場のムードメーカーになったり、いざというときに頼りになる存在になっていきます。
完璧じゃなくてもいい。“いい意味でバカ”なくらい、素直で一生懸命。そんなあなたが、きっと現場を変えていく力を持っていると思っています。
ーーありがとうございました。

30年間、地元・古河で現場に立ち続けてきた生井さん。
多くの部署を経験しながら仕事への理解を深め、変化に柔軟に対応してきたその姿勢は、まさに現場で培われたものです。
そこに、バスケットボール部やミニバスの指導経験、地域イベントへの参加といった日々の積み重ねが加わり、人との関わり方や教える力にも厚みを与えてきました。
生井さんの言葉からは、ひとつの場所で長く働くことの価値と、自分自身の成長を前向きに引き出すヒントが見えてきました。



写真提供:イノベックス