マーケティングの1つである『セールスプロモーション』。売上を上げるための仕掛けとともに、近年は『社会課題解決』のための仕掛けも増えてきています。消費者のSDGsへの意識の高まりなど、社会的な背景もありながら変わってくるセールスプロモーションの世界。
2020年以降の新型コロナウイルスの感染拡大は、社会に対して多大なる影響を与えました。スポーツ観戦においては、いろいろなスポーツで無観客試合や入場制限、声を出しての応援の禁止など、そのあり方は急速に変化していきました。
こうした社会の変化に対し、『セールスプロモーション』はどのように対応していくのか?株式会社ヒロモリ プロモーション事業部 事業部長 松浦昭重さん(以下、松浦)にお話を伺いました。
コロナ禍のセールスプロモーション
ーー2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大。セールスプロモーションの分野ではどのような変化がありましたか?
松浦)大きく2つの影響があります。1つは、コロナウイルスで直接的に起こった環境の変化、もう1つは、エコやSDGsへの意識の高まりで、セールスプロモーションではその両方の影響を受けています。
ーー直接的な変化とはどのようなものですか?
松浦)例えば、食品スーパーでは店頭での試食販売ができなくなりました。マーケティング施策においても大きなインパクトのある方法でしたので、打撃は大きかったです。その代替案として、Webのキャンペーンや、手渡しではないサンプリングの手法が発達しています。
デジタル移行という面では、コロナがもたらした弊害でもありチャンスでもあると感じますが、そういった影響が大きかったりします。
ーーなるほど。エコ意識の高まりはいかがでしょうか?
松浦)あるハムソーセージの会社さんは、包装資材削減のために、長年使用してきた巾着型のパッケージを変更しました。もちろん大事なことなのですが、セールスプロモーションとしては巾着部分にキャンペーン告知をつける、華やかさで売り場を演出するなどの意味もあったので、パッケージ変更によって効果が薄れてしまうというネガティブ要素もありました。それでも環境への配慮を重要視して決断された取組なのだと思います。
ーーエコを意識する企業さんがやはりかなり増えているんですね。
松浦)ヨーロッパ系の企業さんは、その傾向がより強いです。私たちが制作するキャンペーンの商品でも、ヨーロッパの環境規定に則った環境配慮型の販促物が採用されます。
商材によって、コロナの影響なのか、エコへの意識なのかもそれぞれ変わってくるので、私たちとしてもお客さんに合わせて、『物を売る』だけではない仕掛けをすることが増えました。
スポーツの業界では?
ーーヒロモリさんは、スポーツチーム関連のグッズなども手掛けていらっしゃいますよね。
松浦)そうですね。スポーツ関連のグッズは近年力を入れている分野です。
店頭で売るためのプロモーションを得意としてきたヒロモリですが、お客様の要望も多様化してくる中で、スポーツやエンタメというファンマーケティングの領域にも力を入れ始めました。
ーーどのようなグッズなのですか?
松浦)ヒロモリは、これまでの経験からお客さんに合わせた商品企画、モノづくりに自信を持っています。
Tシャツやタオルといった一般的ではないもので、スポーツやライブなどエンターテイメントを応援できるような、もっと盛り上げていける、ファンが喜ぶ、そういう観点で、モノづくりに取り組んでいます。
ヒロモリのスローガンである『creation for excitement(感動創造)』を、ファンマーケティングにおけるモノづくりでスポーツクラブをサポートしたいと考えています。
ーーたしかに、スポーツの持つ感動と、ヒロモリさんが取り組まれてきた感動創造とで、より大きな効果が生まれそうですね!
声を出さずに拍手で応援!
ーーヒロモリさんが販売するスポーツ関連グッズの中で、『パチパチクラッピーへんげ』という商品がありますよね。こちらはどのような背景で生まれたのでしょうか?
松浦)『パチパチクラッピーへんげ』は、ロボット開発の会社であるバイバイワールド株式会社さんが作ったビッグクラッピーというロボットが元になっています。「デジタルと人の融合を図りたい!」という想いの中、拍手に着目して開発されたそうです。
展示会やイベント、店頭での集客に活用するために、ヒロモリと提携をさせていただきました。
このビッグクラッピーをもっと手軽に使えるように試行錯誤して作ったのがパチパチクラッピーへんげです。
ーー今回スポーツの応援グッズとしてパチパチクラッピーへんげが注目されているのは、コロナ禍の影響も大きいのでしょうか?
松浦)そうですね。コロナ禍により存在意義が増しました。声を出すような応援はできない状況下でも気持ちを届けたいファンの方へ、このパチパチクラッピーへんげを利用することで応援を実現できないかと試みています。
ーー拍手による応援スタイルも浸透してきていますね。
松浦)生の拍手の良さもありますが、パチパチクラッピーへんげがあれば片手で拍手ができます。空いた片手で飲み物を飲みながら応援できたり、お子さんがいて手離せない中でも使えたり、という良さがあります。
グッズとして活用することによるファン同士の連帯感作りにも一役買っています。
応援グッズとしては使い捨てのものも多くありますが、エコという観点からも継続的に使え、環境配慮の面に対しても同時に役立っているなと感じます。
ーー現時点で活用している事例はありますか?
松浦)中日ドラゴンズさんでは、ドアラグッズとして売り出しています。他にも今シーズンから数チーム、ファングッズとして取り扱っていただきます。
ーーものがしっかりしてるからこそ、大事にしたい気持ちにもなりますよね!
松浦)今後は好きな選手の背番号で作れたりしたらまた面白いですね!
これからの応援の方法
ーー新型コロナウイルスのこと、エコ意識の向上など、スポーツやエンタメのグッズに関しても大きな意識の変化が起きているのですね。こうした部分に、ヒロモリさんの得意な課題解決型でどのようなアプローチをしていくのでしょうか。
松浦)コロナ禍の影響は一時的なものと捉えると、世の中の動きはエコや環境面に本格的に軸足が移ってくると感じています。ヒロモリの領域であるモノづくりやセールスプロモーションにおいても、資材などをエコ化していくべき流れになっていくかと思います。
しかし、まだまだファンやサポーターの方はグッズに対してエコな要素を大きく求めているわけではありません。Tシャツを買う理由は、「エコだから」ではなく、「ファンとして応援したい」ことが大きいです。
ーーたしかに、普段使うものよりも、ファングッズへのエコ意識は自分の中でも低い気がします。
松浦)レア感やエンタメとしての極みに価値を置いていて、環境に配慮されたものなのかを意識していないですよね。
理想的な形としては、そうしたファングッズとして成立しているものがエコになっていって、自然にエコに協力できる形もいいのかなと思います。
ーーただエコなものを作ればいい、という話でもないですよね。
松浦)私たちから言い続けることも当然重要ですが、スポーツクラブなどの運営側の意識が変わらなければいけないですし、そこから消費者であるファンの意識が変わってくると思います。どれが欠けても駄目ですし、誰がスタートさせるのかっていう話でもあるのですが。今後も、そういうところには一緒に連携をしながら、こうしたエコ意識などをグッズ側から取り組んでいきたいです。
ーーありがとうございました!