少子高齢化が進む社会。年齢を重ねても“元気に”過ごせるようにとさまざまな取り組みがなされています。
鍼灸治療用の鍼のトップメーカーであるセイリン株式会社は、清水エスパルスと共同で『ハッピーシニアプロジェクト』を2022年から3シーズンに渡って行ってきました。
60歳以上を対象とした運動プログラムから紐解く、“人々の健康をつくる”ための秘訣とは?
セイリン株式会社 執行役員 内山利男氏(以下、内山)と清水エスパルス 事業本部教育事業部 ヘッドオブコーチングの今泉幸広氏(以下、今泉)に話を伺います。
60歳以上にスポーツの“引退ゼロ”の考え方を!
『ハッピーシニアプロジェクト』に参加するために、60歳以上の方々が月1回清水エスパルスが運営するエスパルスドリームフィールドに集まってきます。
子ども向けスクールのイメージが強いサッカークラブで、「自分たちとしても60歳以上の方々へのプログラムは未知の領域だった」と話す今泉さんは、この年齢層に対してスポーツにおける“引退ゼロ”の考え方で接しています。
エスパルス 今泉)これから高齢者が増えていくことは明確にわかっています。年齢を重ねたから“できない”ではなくて、元気に常に“ハツラツと”して生活をしてほしいという想いが根本にありますね。
そうした活動にフォーカスを当てたいと思ったときに、長年エスパルスのスポンサーをしてくださっているセイリンさんにご一緒できないか相談させていただきました。
セイリン 内山)セイリンは、鍼灸治療を通して人々の健康増進を図ることを大きな目的として事業活動を行っています。
自社にダイレクトにメリットがあるかどうかというより、このプログラム自体にエスパルスさんと弊社の“健康に対する共通の想い”を感じてご一緒することになりました。
60歳以上の方の健康課題「頭と体が一致しない」を解消!
実際に、60歳以上の方々における“運動の課題”にはどのようなものがあるのでしょうか?これまで数多くの方にサッカーを中心とした運動の指導してきた今泉さんは、「頭で考えていることと体の動きが一致しないこと」だと言います。認知・判断・実行までのスピードが遅れてしまったり、誤った伝達が増えることも。また、足の衰えから足が思ったよりも上がらず、つまずきやすくなってしまうこともあります。
鍼やお灸のグッズも販売するセイリンから見て、60歳以上の方の運動における課題はどこにあるのでしょうか?
内山)体を動かしてこなかった方々がこうした場所で体を動かすと、普段使わない筋肉や関節に痛みが出ることがあります。年齢とともに慢性的な痛みが出る方も多くいますね。
このプロジェクトでは、開催時に弊社の販売するお灸やこりほぐしのグッズ体験も行っています。ご自身の痛みを和らげる効果を実感していただければと思いますし、鍼灸の治療院に行くきっかけになるような、“自分の体を知る機会”になっていると思います。
「楽しい」と思える時間の提供
月1回、1時間の限られた時間で行われる『ハッピーシニアプロジェクト』は、参加者が「楽しむ」ことを重視しています。1人暮らしの方も増えてくる中で、ここでのコミュニケーションの時間、笑顔になれて心から発散できる時間は、参加者にとっても大事な時間になっているのかもしれません。
今泉)考えたことをスムーズに動作に移せるようにするために、メニューもテンポよく、脳トレの要素も入れながらどんどん進めていきます。大事にしているのは、「できないことがダメではない」ということです。逆に、簡単にできてしまったらその方にとって意味のないメニューとも言えます。できないことにチャレンジしていくその過程がすごく重要だと思い、そうした声掛けも多くするようにしています。
今泉)この活動には、毎回継続して参加してくれる方が非常に多いのですが、その中の1人が「ペットボトルのフタを1人で開けられるようになりました」と報告してくれました。「若返ったね」と友達から言われているなど、そうした変化が起きているのはとても嬉しいですね。
活動当初はすぐに決着してしまった脳トレのゲームも、いまでは10分間なかなか決着がつきません。頭で考えることと体を動かすことの連携がスムーズになっている証拠だと思います。
内山)どんどん参加者の方も活発になってきていますよね。「楽しい」ということが、こんなにも積極性に繋がるのだと見ていて感じます。
今泉)リズムトレーニングなども、レベルは少しずつ上がってきています。また、こうした活動プログラムを実践することで、介護施設の70、80歳代の方々を対象にしたプログラムも充実させることができるようになってきました。
これからの高齢者の未来へ
『ハッピーシニアプロジェクト』を通じて、60歳以上の健康づくりをすると同時に、エスパルス、セイリンともに活かせるものを見つけているこのプロジェクト。これから先の未来、60歳以上の方々の健康づくりにはどのようなものが必要なのでしょうか?
内山)体を動かそうと思ったときに動かない、というのは年齢によって出てくるものです。鍼灸という選択肢を持っていただくことで、座ろうとすると関節が痛い、などの日常のちょっとした大変なことを少し楽にすることができるかもしれません。鍼灸接骨院に必ず通わないといけないわけではなく、セルフケアも可能だということを認知してもらえるようにこれからも活動していきたいです。
「痛い、動かない」という状態に一度なると、ケアをしないと年々動けなくなっていきます。エスパルスさんがこうした機会を作っていることは、非常に貴重な機会ですよね。
今泉)健康づくりと聞くとすごく幅広く感じますが、一番大事なのは“コミュニティづくり”ではないかと私は考えています。実際、60歳はまだまだ若い世代で、バリバリ仕事をしている人もたくさんいますが、そうではなくなったときに「あそこに行くと楽しいな」と思えて一歩外に足を踏み出せる場所を多く作っていきたいですね。体を動かすだけでなく、心がリフレッシュできるような環境を作っていくことを大事にしていきたいです。
プログラム中のコミュニケーションでも、「冷蔵庫に行くとき、なに取ろうと思ったかちゃんと覚えてますか?」など、日常にも意識できるようなことを取り入れています。忘れっぽいからいいやではなく、「もう一度考え直そう」と思える意識を作っていけたらいいなと思っています。
ハッピーシニアプロジェクトで使用している健康グッズは『オリエンタルマート byセイリン』から購入できます。お灸などの健康グッズを是非お試しください!