サッカー

アスリート社員として新たな道を切りひらく|全国優勝も経験した女子サッカー選手 松井里央が目指す“理想”とは?

NISSO

神奈川大学陸上競技部駅伝チームや横浜DeNAベイスターズなど、多くのスポーツを支援しているNISSOホールディングス。その中で、女子サッカーなでしこリーグ『ニッパツ横浜FCシーガルズ』のパートナーおよび選手の社員雇用もしています。

2024年に神奈川大学からニッパツ横浜FCシーガルズに加入、そしてNISSOホールディングスの主たるグループ会社である日総工産株式会社の社員として入社した松井里央さん(以下、松井)は高校時代に全国優勝を経験したゴールキーパーです。大学を卒業し、新社会人として、そしてサッカー選手として歩んだ1年間を振り返ります。

日総工産×神奈川大学
「人を育て、人を活かす」神奈川大学駅伝チームと日総工産の揺るぎないシナジー駅伝の古豪、神奈川大学。1997年、98年の箱根駅伝の連覇からタイトルは遠ざかったものの、2020東京オリンピック男子マラソン日本代表の鈴木健吾選手の箱根駅伝での活躍はまだ記憶に新しく、さらに直近の全日本大学駅伝予選では1位通過するなど、多くの陸上ファンがその活躍を期待しています。 そんな神奈川大学陸上競技部駅伝チームをスポンサーとしてサポートするのが、日総工産株式会社(以下、日総工産)。製造系人材サービスを提供する日総工産は、大学駅伝でのスポンサーの解禁に伴い、2021年より神奈川大学陸上競技部との関わりをスタートさせました。 この両者の描くストーリー、そして「人を育てる」ことへの共感とその取り組みについてお話を伺いました。...

サッカー中心の家庭で育った幼少期「強くなりたい」と思ったきっかけ

ーー松井さんがサッカーを始めたきっかけを教えてください。

松井)私は富山県出身で、父が社会人サッカーチームでプレーをしながら女子サッカーチームのゴールキーパーコーチも務める、まさにサッカーの人でした。母も父との結婚をきっかけにママさんチームでプレーを始め、姉も私も弟も生まれたときからサッカーをすることが当然のような環境で育ちました。
小学校1年生から地元のチームに所属し、本格的にサッカーを始めました。何人か女子メンバーも入ってくることもありましたが、基本的には男子の中に女子一人で混ざってボールを追いかけていました。

ーーサッカー中心の家庭で育ち、サッカーとともに幼少期を過ごしてきたのですね。

松井)本当にサッカーが好きで、弟が「サッカー行きたくない」となったときにも「どうして?」と思ってしまうほど、私にとってサッカーは当たり前の存在でした。
ただ、年齢を重ねてくると「女子なのにサッカーしてる」と男子からも言われるようにもなり、そうした男女の隔たりからチームの輪に入れない時期が長く続くこともありました。泣きながら家に帰り、父から「そんなに苦しみながらやるんだったら辞めてもいい」と言われたこともありました。そんな父の“優しさ”をもらい、逆に私は「自分に負けたくない、強くなりたい」と思って諦めずに頑張ることができました。あまりいい思い出ではないですが、私にとってとても大切な時間だったと思います。

松井里央幼少期の松井さん

全国の強豪へ!

ーー小学校時代を経て、中学では地元・富山県内の女子サッカーチーム、そして高校では県外の強豪校である藤枝順心高校に進学します。

松井)中学に上がるときから、「高校では県外の強豪校に行きたい」と目標を決めていました。中学では父がコーチをするチームに入り、そのタイミングで私もゴールキーパーとして本格的に取り組み始めたので、中学時代は親子での練習の日々でしたね。ゴールキーパーはほかの選手とは別で練習することが多いので、本当に1対1で練習をする時間も多くありましたね。

思春期でもあったので“お父さん”とも“コーチ”とも呼ばない、曖昧な呼び方をしていた記憶がありますが、父と目標を共有し、結果に対して一緒になって喜んだり、悔しがったりできる関係だったので、その点ではすごくよい時間を過ごせたと思います。

ーーお父さんからの指導で印象に残っていることはありますか?

松井)やはり父は私のことを誰よりもわかってくれている存在だったと思います。本当に厳しく妥協せず指導してくれました。おおざっぱな性格の私にしっかりと基礎的なことを教えてくれて、その期間がなければ今の私はないと思えるくらい、父の教えは私にとって大きなものでしたね。

ーーその後は目標通り、全国大会常連校の藤枝順心高校に進学します。

松井)入学したら、まわりのレベルが本当に高くて「全国大会に出るのが当たり前」のチームの基準を知りました。そのレベルでサッカーするために毎日必死で努力しましたね。朝から練習して学校に行き、放課後の練習後にも自主練して、というサッカー漬けの日々を送っていました。練習はきつく、しんどいと思うこともありましたが、寮生活では同期10人の仲が良く、皆で支え合いながら過ごした本当に充実した3年間でした。

松井里央藤枝順心高校時代の松井さん。GKとして活躍し、チームを全国優勝に導きました。

多様な人がいる大学時代を経て

ーー大学に行く前に、高校でサッカーを辞める選択肢もあったと伺いました。

松井)もともと、小さな頃から営業職としてバリバリ働いている私の母の姿がすごく好きで、社会人として働くことへの憧れも持っていました。ですが、全国高校女子サッカー選手権での優勝を果たし、大観衆の中でプレーする経験を味わってしまうと「サッカーをもう少し続けたい」と思ってしまうものです(笑)。また、自分が頑張ってきたからこそ大学でプレーする道も選べると思うと、自分の限界まで挑戦しようという想いに変わっていきました。

ーー進学した神奈川大学ではどうでしたか?

松井)高校のときは本当にサッカーと勉強だけの生活で、全員が同じ生活をすることで“全国優勝”という目線が揃っていました。ですが、大学になるとゼミや遊びも楽しい環境ですし、サッカーのレベルやモチベーションもそれぞれ異なったものをもって入学します。

上手い人にただついていっていた高校時代から、さまざまなメンバーを自分が引っ張らなければならない立場になったときに、どうしたらいいか考えて行動し、うまくいかずに悩み、まわりと相談しながら進んできた期間は、本当にいい経験になりました。

ーー社会人になる上での本当に貴重な経験だと思います。大学卒業後はニッパツ横浜FCシーガルズに加入します。

松井)シーガルズの練習参加をしたときに、ゴールキーパーコーチがとても言語化が上手な方で、私のプレーに対して論理的にアドバイスをくれました。今まで感覚的にプレーをしてきていた私にとってすごく新鮮で、ここにいれば私も伸びると感じて入団を決めました。

1年目は怪我の影響でほとんどの期間をリハビリで過ごしてしまって悔しいシーズンでしたが、2か月間だけ復帰したときにみんなと一緒に練習してすごく楽しくて、時間が過ぎるのもあっという間だったことも印象に残っています。

ーー選手として悔しいながらも充実した経験だったことが伝わってきます。

松井里央

社会人としてのスイッチを入れて「新しい道を切りひらく」

ーーニッパツ横浜FCシーガルズの入団と同時に日総工産株式会社に入社され、アスリート社員として週4日の勤務もしています。4月の入社からを振り返っていかがですか?

松井)アスリート社員として入社しましたが、入社してすぐの研修はほかの同期と一緒に受けることができました。正直、女子サッカーチームの選手でアスリート社員として企業に受け入れていただく際には、業務内容は簡単なことしか任されず、“楽な仕事”をするというイメージがありました。

日総工産での新入社員研修を経て、私はアスリート社員として彼らの半分ほどの時間しか働けないけれど「こんなに平等に扱ってもらえるのか」と感じ、「しっかりしなければ」と改めてスイッチを入れてもらいました。

ーー会社の仕事で大変だったことや悩みはありますか?

松井)初めてのことも多かったので大変ではありましたが、まわりの方が優しく教えてくれますし、わからないことがあればすぐに聞ける環境だったのでありがたかったです。

ただ、同期は私の倍以上の時間働いて、社会人としてどんどん成長していっている中で、私は彼らの半分の時間でどのくらい成長できるのだろうか、中途半端になってしまわないだろうか、将来的に考えてもいまの働き方で良いのだろうか、と不安に思う気持ちはありました。サッカーで怪我をして貢献できていないこともあり、かなり悩んでいる時期もありましたね。

ーーそんな悩みはどのように解消したのでしょうか?

松井)同期のうちの1人と話をする機会があり、そのことを打ち明けてみたところ、「里央は自分たちと同じような成長はしないかもしれないけれど、アスリート社員として新たな人物像を作る人になれるんじゃない?」と言ってもらいました。そのときにすっと不安がなくなり、納得したのを覚えています。

自分次第で、この会社のためになるような道を切りひらけると思うと、すごく肩の荷がおり、改めて仕事に前向きに向き合うきっかけになりました。まだ道はないので少し不安はありますが(笑)。

常田菜那
WEリーガー常田菜那が考える女子サッカーの現状と未来~社会・地域に貢献する女子サッカー選手へ~今回の記事では、なでしこリーガーを経てWEリーガーとなった私・常田菜那が、現在の女子サッカーを現役選手目線で考え、女子サッカーの発展に少しでも繋げていきたいという想いで発信していきます。 私がサッカーを始めた当初は、まだまだ“男子がやるスポーツ”というイメージが強く、まわりから珍しい目で見られることが多かった女子サッカー。その頃から私の夢は『なでしこジャパン』。2011年、なでしこジャパンがW杯で世界一になったときの興奮は忘れられません。...

ーー仕事でもチャレンジしながら、サッカー選手としても結果を出すために毎日研鑽を重ねていると思います。

松井)私自身、仕事もしながらサッカー選手もしていることがプラスになっていると思っています。アスリートも社会人ではありますが、仕事を通じて社会の仕組みを知ることでより自分のクラブのことやどんな人に支えてもらっているのかを知ることができます。また、自分の仕事に取り組む姿勢から、物事の考え方などの自己分析にも繋がることや、周囲の先輩方から大人としての立ち居振る舞いを学ぶなど、直接的なプレーの向上とは限らずとも選手としても大事になることを学ぶことができます。

さらに、仕事を経験することは、来年があるかもわからない世界で戦う選手にとって、将来の不安要素が1つ消えることにも繋がりますよね。加えて、とくに日総工産では、応援してくれる方の存在を身近に感じることができるのも大きな利点だと思っています。部署の人たちや同期など、すごく応援してくれていて嬉しいですね。

これからはサッカー選手としてもよりよい結果を目指したいと思いますし、多くの観客の中で試合をすることで、応援してくれているサポーター、日総工産の方、これまで支えてくれた家族にも活躍している姿を見せたいと思っています。

ーーありがとうございました!

NISSOの『広報』としてスポーツ支援を発信!

これまで日総工産株式会社で、採用部の一員としてサポート業務を行ってきた松井里央さん。今後はそこに加え、NISSOホールディングスのスポーツ支援や地域協賛に関する情報を発信し、地域にスポーツの楽しさを広める広報活動にもチャレンジします。

サッカー選手として高みを目指しながら、仕事でも“自身の価値”を活かしたチャレンジをする松井さんの今後が楽しみです!

松井里央
ヴィアマテラス宮崎
【現役WEリーガーが聞く!】宮崎県の小さな街の『地域おこし協力隊』は女子サッカー選手!クラブ・選手・地域の相乗効果を学ぶ女子サッカー・なでしこリーグ1部に所属するヴィアマテラス宮崎は2020年の創設当初から地域密着型のチームとして活動し、ホーム戦の平均観客数1,603人(2024年前期実績)という数字は、同じリーグのほかのチームの3倍にもなります。 プロではない女子サッカー選手は、クラブのスポンサー企業で仕事をしながらプレーすることが多い中、ヴィアマテラス宮崎では自治体の制度を活用し、選手のほとんどがホームタウンである宮崎県児湯郡新富町の『地域おこし協力隊』として活動しています。 こうした形はスポーツクラブのなかでも珍しく、クラブが実力だけでなく、“地域に愛され”“地域に根付く”クラブとして女子サッカー界の発展に大きな影響をもたらし、女子サッカーチームが地域に根付くためのクラブや選手に必要な要素を大いに持っていると感じさせるものです。 地域に対するクラブの在り方、アスリートの価値などについて、ヴィアマテラス宮崎代表の秋本範子さん(以下、秋本)・GMの柳田和洋さん(以下、柳田)・選手の松井彩乃さん(以下、松井)と対談をし、お話を伺いました。...
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