私たちの想い

1型糖尿病の子どもたちの夢を後押し!〜「1型糖尿病ドリームチャレンジ」~

Jリーグ・ヴァンフォーレ甲府に選手として在籍していた当時、1型糖尿病を発症した杉山新さん。
引退後、「1型糖尿病ドリームチャレンジ実行委員会」を結成し、若くして1型糖尿病を抱える子どもたちのために活動を続けています。そこには、「病気であることを隠さず、ポジティブになってほしい」という子どもたちへの強い思いがあります。
2017年にはスペイン・マドリードを訪問し、世界的サッカークラブであるレアル・マドリードの選手と対面するなど、1型糖尿病の子どもたちの夢を後押しする活動について、杉山新さん(以下、杉山)と、団体の副代表・善福真凪さん(以下、善福)に話を伺いました。

「杉山新さんが1型糖尿病だとしり、Jリーガーでも同じ病気の人がいるんだなぁと少しうれしい気持ちになりました」。
冒頭の写真は、スペイン遠征に参加した子どもから杉山さんへの手紙。「この企画を作ってくれてありがとうございました」と締められており、参加した子どもたちの嬉しい気持ちが伺えます。

「乗り越えた」というよりも「時間がなかった」

ーー杉山さんは現役のプロサッカー選手のときに1型糖尿病を発症されていますよね。そもそも、1型糖尿病と2型糖尿病にはどのような違いがあるのでしょうか?

杉山)主な要因が、自己免疫疾患として発症し原因が分からない「1型」と生活習慣や遺伝が原因になるのが「2型」、という違いです。2型糖尿病のほうが患者さんが多く、世の中に知られていることから糖尿病といえば2型で、生活習慣が原因というイメージが強いと思います。

ーーどのような形で病気がわかったのですか?

杉山)現役時代のあるシーズンの終盤に怪我をした際、風邪のような症状が続いたことから病院を訪ねたところ、1型糖尿病が発覚しました。「なんでだ」と感じてしまいましたね。病気が発覚してからの困りごとはいろいろとありましたが、そうした精神的な部分が一番大きかったです。

ーー杉山さんはそうした精神的なつらさをどう乗り越えられたのでしょうか?

杉山)「乗り越えた」というよりも、「時間がなかった」というのが正直なところです。
11月に1型糖尿病と診断されたのですが、12月中旬に次のシーズンに向けての面談があるので、診断以降は気持ちを整えるというよりも時間との戦い、それだけでした。

柏レイソルからヴァンフォーレ甲府に移籍し、「甲府でこれから!」というタイミングでの診断で、自分の中での「やれる」「やりたい」という気持ちが強い時期の出来事でした。
診断をクラブに伝えると、「例がないから少し待ってくれ」という返事でしたが、主治医の先生が「チャンスあげてくれないか」とクラブに話してくださり、結果的に再契約を勝ち取ることができました。

ーー1型糖尿病を発症しながらサッカーを続けていく上で、気をつけたのはどのようなことですか?

杉山)気をつけたのは、やはり食事です。それまでは朝ご飯を食べずに練習に行くこともありましたが、診断後は食事や睡眠にすごく気を遣いましたね。何を食べるかによって血糖値の上がり方が変わるので、食事の量などは試行錯誤を繰り返し、どのような習慣が自分にとってよいものかを探る必要がありました。

シーズン後は身体を休める選手が多いのですが、私の場合は血糖値を悪くさせないようにするため、強度は落としながらも身体を動かし続けるなどの工夫をしていました。

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【ヴァンフォーレ甲府】スポーツ×食育~選手が子どもたちに伝える食事の本質とは?~「体が資本」と言われるプロスポーツ選手。その身体を作る『食事』はスポーツをする上でもちろん重要です。 Jリーグ・ヴァンフォーレ甲府では近年、「食育」に積極的に取り組んでいます。 さまざまな経験を通じて「食」に関する興味と知識をベースに選択する力を習得し、健全な食生活を実現できる人間を育てる「食育」。プロの選手が食の大切さを伝える教室や、田植え体験などを通じて、子どもたちに伝えたいことは何なのか——。 一般社団法人ヴァンフォーレスポーツクラブの長田圭介さん(以下、長田)に話を伺いました。...

闘病経験という「自分にしかない武器」

ーー引退され、「1型糖尿病ドリームチャレンジ実行委員会」を立ち上げることになったのには、どのようなきっかけがあったのですか?

杉山)現役時代は『糖尿病の選手』として注目されるのが嫌だったので、病気のことは引退後に公表しました。まわりの対応が変わってしまうことを恐れてはいましたが、糖尿病に関係する講演の依頼がいくつか来るなかで、「もしかしたら自分にやれることがあるのではないか」と思えたことがこのプロジェクトを始めたきっかけです。
指導者になるという人生の方向性に加えて、闘病経験という自分にしかない武器があるのではないかと考えました。

ーードリームチャレンジ実行委員会の副代表である善福さんが、杉山さんと知り合ったのはどのようなタイミングだったのですか?

善福)杉山さんが引退して3年が経ったころ、知人を介してお会いしました。杉山さんのことを知り、経歴などを調べていくうちに1型糖尿病のことを知りました。
Jリーガーは選手としての寿命が短いと言われるなか、1型糖尿病を発症しつつ通算16年も活躍されたキャリアを知ったときには、率直に「すごいな」と感じました。

病気と共生しながら16年という長い期間活躍できたことは、本当に尊い経験だと思います。
その経験を生かして、杉山さんとサッカーを通じて子どもたちに勇気や頑張る力強さを伝えていきたいと考え、一緒に活動しています。

「同じ病気の選手に会えたら」と、スペインに!

ーー杉山さんたちの活動が、1型糖尿病の「子どもたち」を対象にしたのには、どのような想いがあったのですか?

杉山)「想い」というよりも「見聞きした経験」からですね。小中学校での講演を行った際に、1型糖尿病のある子どもが食事前の注射のとき、隠れてトイレや保健室に行っているという話を聞きました。
注射を打っていることを気軽に話せる大人とは違い、周りの目を気にしてコソコソせざるをえない現状を目の当たりにして、「ポジティブになってほしい」という思いを抱きました。

ーー2017年には1型糖尿病の子どもたちとスペインに行ったそうですね。

杉山)世界的有名クラブである『レアル・マドリード』に在籍するナチョ・フェルナンデス選手が1型糖尿病だと公表しているとインターネットで知り、「同じ病気の選手に会えたら、子どもたちに何か感じてもらえるだろうか」というシンプルな考えで、善福さんと話を進めていきました。

善福)私もナチョ選手の話を知り「何かできることはないかな」と思いましたが、そのときはまだ海外サッカーのことにはあまり詳しくなく、「チケットを買えば試合は観れる」くらいに思っていました。
今思えば、その楽観的な考えが良かったのかもしれないです(笑)

杉山さんからは、「自分は引退してしまいプレーを見せることはできないけれど、1型糖尿病である選手が世界的な有名クラブで活躍する姿を見せることで、子どもたちに届けられるものがあるのではないか」と相談していただきました。それを聞いて、私もぜひ実現させたい考えるようになりました。

ーー行くまでには沢山の苦労があったのではないですか?

杉山)「想い」だけでは伝わらなかったこともありました。ですが、1型糖尿病がありながらも世界トップのクラブで活躍するナチョ選手を見たとき、「下を向かずに、前を向いていこう」と子どもたちに感じてほしいという想いのほうが強かったです。

スペインでは、少しの時間ですがナチョ選手に会うことができました。
子どもたちを横で見ていて「スゴさを分かっているのか?」とは思いましたが、帰りの車内で笑顔が見られたり、大人を含め参加したみんながハッピーな雰囲気になっているのを見ると、苦労しても会いに行くことができてよかったなと思います。

これからは他スポーツとの交流も!

ーー団体として、今後に向けて取り組んでいきたいことやこれからへの思いを教えてください。

杉山)新型コロナウイルスの影響であまり活動できていない部分があるのですが、少しでも多くの子どもたちにいろいろな体験をしてもらいたいと思っています。「スペインや海外に行く」ということだけでなく、同じように「海外の1型糖尿病の子どもたちを招きいれる」ということもしたいです。
そして、「自分たちはこんな取り組みをしている」とより多くの人に理解してもらいたいという思いも持っています。

善福)全国にいる1型糖尿病の子どもたちにスポーツを通して、元気を与える機会を増やしていきたいですね。
スペイン旅行では、「夢を体験する」という側面に加え、親と離れた環境で食事やインスリン注射を行い、ドクターと相談しつつ自分で管理するきっかけも生まれました。実際、スペインに行って以降、中学校に進学し新しいクラブチームに入った子どもが、「こういう病気だけれど、こうしていれば大丈夫」と自らチームメイトに伝えることができたそうです。

他にも、JリーグやBリーグなど、いろいろなスポーツで活躍している1型糖尿病の選手たちとの交流も考えています。いろいろなスポーツを楽しみながら、1型糖尿病の子もそうではない子も、一緒にそれを受け入れる環境作りができたらいいなと願っています。

ーーありがとうございました!

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