皆さんは「親なきあと問題」をご存知でしょうか。「親なきあと問題」とは、障がい者の親御さんが亡くなったあと、障がい者本人の「住む場所」「日中の居場所」「お金のこと」「残されたご家族のこと」をどうするかという問題のことを言います。
「あしたパートナーズ」は、2020年からオンラインサービスの充実や、アスリートを巻き込んだ企画を通して、課題解決に尽力しています。今回は、「あしたパートナーズ」の理事を務める、首藤徹也さんにお話を伺いました。
当事者家族に寄り添えるパートナーに
ーまずはじめに、「あしたパートナーズ」の名前の由来を教えてください。
首藤)「あなたの、あなたらしい、あしたを見つけるパートナーとして、当事者家族に寄り添い、末長くサポートできるような団体にしていきたい」という想いで、あしたパートナーズという団体名にしています。
私と弁護士である伊藤さんの二人で立ち上げたこと、今後多くのパートナーの方と連携していきたいという気持ちを込めて、「あしたパートナーズ」と複数形になっています。
私は普段ファイナンシャル・プランナーとして、金融機関に勤めています。私も伊藤さんも、お互い相続分野の専門家であり、親なきあと問題が他人事ではないこともあって、当事者家族の気持ちも理解しながら、「当事者家族である専門家が親なきあとのお金のことについて相談に乗れる」という強みがあります。
ー 共通の経験を持っているからこそ、安心して相談できますね。
首藤)親なきあと問題について、これまでは、行政であったり、子どもが通っている就労支援施設や、特別支援学校に相談することが多かったと思います。ただ、そういった支援者も、「親なきあとのお金のこと」は専門ではないし、センシティブな話で間違ったことは言えないので、相談に乗りづらい分野なんですね。
自身で財産管理をすることが難しい障がいを持つお子さんの場合、健常者のお子さんを持つ親御さんに相談しても理解してもらえず、どこに相談していいのかわからないという課題がありました。
そういった現状を目の当たりにして、自分たちが役に立てることがあるのではないかということで、2019年2月にあしたパートナーズ(当時は任意団体)を立ち上げました。
最近では、オンラインでコミュニケーションを取ることが当たり前になってきているので、居住しているエリア関係なく専門家に相談していただいています。
新型コロナウイルスがオンライン活動への注力のきっかけに
ーSNSを積極的に活用されていると思うのですが、こういった発信活動に注力しようと思ったきっかけを教えてください。
首藤)新型コロナウイルスの自粛期間がターニングポイントで、家から出られないという状況のときに、対面のみで相談に乗る体制ではダメだと思いました。
当事者家族の方も同じように普段から子どもの面倒を見ているため、コロナ関係なく、多忙で、家から出られないという方も多く、そういった中でも、SNSを使って家の中からでも情報を得ることができる環境をつくりたいという想いがありました。
ー当事者家族の方々が、なかなか現地に移動してセミナーに参加したり、対面の相談をすることが、世の中の情勢も重なり、より難しくなったということを考えての取り組みだったのですね。
オンラインサロン(コミュニティ)を開始したのも、同じ時期ですか?
首藤)そうですね、オンラインサロンは2020年10月にスタートしました。スタート後、登録者数はコンスタントに増えてきています。
初回のご相談は無料としており、継続的に専門家のサポートを希望する方はオンラインサロンに登録していただく形になります。オンラインサロンに登録した後は、2回目以降、基本的にはオンラインで何回でも個別相談をお受けしています。
収益は、私たちの活動費に充てさせていただいております。オンラインサロン会員限定の勉強会の開催のために、講師をお呼びする費用や、新しいサービスの開発などに充てています。
会員数が増え、収益が増えていくことで、対応できるスタッフや提供できるサービスも増やすことができるので、オンラインサロンの会員を増やしていきたいと思っています。
ー YouTubeのJリーガーの方々のバトンリレー動画も拝見しました。この企画はどういった経緯で始まったのですか?
首藤)まず、私の高校の同級生だった金井隆太君(元ヴァンラーレ八戸 営業兼強化担当)と髙橋拓也君(元ギラヴァンツ北九州 GK)が、「あしたパートナーズの活動、力になるよ」と言ってくれました。
今回、友人が運営している『障害者の親なきあと相談室「あしたパートナーズ」』様のバトンリレーに参加させて頂きました。
より多くの障害者のご家族の方に知っていただければ嬉しいです。よろしくお願いします! https://t.co/BksERLtLbh
— 高橋拓也 (@Taku_0630) September 15, 2020
どのように協力してもらおうかと考えていたところに、Jリーガーの方々も参加していた「ピンクリボン運動」を知って、自分の言葉で「親なきあと」について語ってもらって、他の人にバトンを回していく企画が良いね、という話になりました。
ー 繋がっていく「バトン」というのが、とても良いですね!
首藤)そうですね。単発ではなく、続くものにしたいです。現在は、サッカー選手でバトンがつながっていますが、今後はサッカー選手以外にも広げていきたいと思っています。
親なきあとの対策が必要な親御さんやきょうだいなどに届くようにしたいので、影響力のある選手の力もお借りしながら、「あしたパートナーズ」の取り組みを広げていきたいです。
ーサガン鳥栖の守田選手の回では「佐賀の好きなところはなんですか?」という前の選手から届いた質問に答えるシーンあり、楽しみながら、バトンリレー動画を見て、「親なきあと問題」を知ることができるのがとても良いなと思いました。
身近にあった「親なきあと問題」への共感
ー首藤さんは「あしたパートナーズ」を立ち上げる前から、「親なきあと問題」に関する活動を行なっていたのですか?
首藤)いえ、そんなことはありませんでした。金融機関に転職した後、しばらくは福祉の業界とは無縁でした。ただ、私たちの身内にもそのような状況の家族や親族がおり、他人事ではありませんでした。
当時、国が障がい者やその家族にどういう支援をしてくれるのかわからなかったので、漠然とした不安があり、そこから色々調べたり、勉強しました。
お互いに「相続」を専門分野として仕事をしていた伊藤さんと親なきあとのことを話していたとき、ネット上でどんなサービスがあるか一緒に調べてみたのですが、これというものが見つからなかったんです。これをきっかけに、だったら、我々が当事者家族の役に立つことをやってみましょうという話になり、すぐに「あしたパートナーズ」を立ち上げたんです。
伊藤さんがいなかったら、この団体は立ち上げていなかったと思います。
ーこれまでのファイナンシャルプランナーとしての首藤さんの経験と、つながりが「あしたパートナーズ」が生まれるきっかけになったのですね。
最後に、今後取り組んでいきたいことを教えてください。
首藤)親なきあと問題の中でも、親なき後の障がいを持っている本人の住む場所であったり、日中の居場所、就労、お金のことなど、いくつか問題を分類することができます。
その中で、私たちがメインで相談に乗れるのは、親なきあとのお金の分野です。特に、親なきあとに、障がいを持つお子さんが「お金を使える仕組み」を残すことが重要であると考えています。他のお子さんやご家族と揉めない形で、できるだけ負担を少なくできる対策を日々考えています。
また、福祉業界は横のつながりが本当に大切だと日々痛感しています。今後は、色々な専門家や団体と連携して、親なきあとのお金のこと以外の相談も受けられる、親なきあと問題の「ハブ」を担う団体にしていきたいと思っています。
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