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“挑戦する意欲”を後押し|社会インフラを支える大日本ダイヤコンサルタントが障がい者アスリートを採用する理由

大日本ダイヤコンサルタント

建設コンサルタント大手、大日本ダイヤコンサルタント株式会社。多くの障がい者アスリートを採用している同社には、その採用基準として大切にしていることがあります。それは「一生懸命頑張りたい」という選手の想いを、実績に関係なく信じる姿勢です。

所属する障がい者アスリートに課せられるのは、月に一度の活動報告。さらに同社では、昇進・昇格に関する情報や残業時間などの勤怠状況を全社員に公開する、高い透明性が保たれています。このような社内の隅々にまで浸透する「性善説」の文化は、いかにして形作られたのでしょうか。

かつて中小企業で「社員は家族」という言葉の脆さを経験した、人事総務部・人事室長の沖二武さん(以下、沖二)に、この会社で確信した「本当に人を大切にする」組織のあり方や魅力を伺いました。

“できること”ではなく“やりたい気持ち”を支える障がい者アスリート雇用

ーー障がい者アスリートの雇用をはじめたきっかけを教えてください。

沖二)当社の障がい者アスリート雇用は、「競技に専念したい」というアスリートの想いを応援する形から始まりました。

以前、他社で事務業務と競技活動を両立されていた車いすの方が、「仕事と競技の両立は難しい」という悩みを持ち、紹介会社を通じて当社に入社されました。当社では、アスリートとしての活動に専念できるよう、事務業務は一切なく、月1回の競技報告書の提出のみで勤務していただいています。

この新しい働き方に魅力を感じた同じ卓球チームの方からも応募があり、これが当社での障がい者アスリート雇用のスタートとなりました。
その後、「人を信じて任せる」という当社の社風に、このアスリート雇用という形が合うのではないかと考え、3年前から現在の「競技専念型」の雇用へと本格的に舵を切り、現在障がい者アスリート雇用は10名となりました。

ーーなぜ「競技専念型」という形を選んだのでしょうか。

沖二)障がい者の方で、建設コンサルタントに必要なCAD(Computer Aided Design)などの専門技術を持つ方を探すのは容易ではありません。地方となるとさらに難しいのが現状です。
それなら、技術という枠に捉われず、“今まさに何かに打ち込み、頑張っている人”をそのままの形で支援できないか。そう模索して行き着いたのが、障がい者アスリートたちに100%競技に打ち込んでもらう雇用形態でした。

ーー競技に専念してもらうという雇用の形はめずらしいですね。

沖二) 障がい者アスリートに限らず、そもそも「社員を信じて任せる」社風が大日本ダイヤコンサルタントには根付いており、自然な流れだったと思います。
アスリートは出社義務がほぼなく、月に一度、写真と活動報告書を提出してもらっています。全社員を対象としたフレックスタイム制度や在宅勤務制度、年次有休消化率の高さなど、もともと「人を信じて任せる」土壌があったからこそ、この形も当たり前のように受け入れられました。この「信じる文化」こそが、アスリートだけでなく、ここで働くすべての社員にとって大きな魅力になっています。

大日本ダイヤコンサルタント写真提供:大日本ダイヤコンサルタント株式会社

“信じて任せる”究極の信頼関係と自由な制度設計

ーー2025年の11月には、所属アスリートである久保南選手がデフリンピックで銀メダルを獲得されました。

沖二)デフリンピックへの出場が決まってから全支社に大会日時をお知らせして、本社からも会場へ応援に行きました。銀メダル獲得後には本社で表彰式も行いました。
そのときの久保選手の姿を見ていて、言葉を口語でうまく伝えられなくても相手に伝えようとする姿勢や、目標を達成するために真摯に取り組む様子が、改めて私たちの心に響きました。スポーツの力は偉大ですね。

ーーこれからの成長が期待される選手を積極的に採用していますが、採用の決め手はどこにあるのでしょうか。

沖二)まだ成果が出ていなくても、一生懸命頑張っていて、やる気のある選手にフォーカスして採用しています。

2年前に久保選手と面接をしたときは、デフリンピックに出てメダルを取るとは想像すらしていませんでした。ただ当時から「デフリンピックに出たい」と宣言して、目標を明確に努力している姿を見て採用を決めました。

ほかにも、麻痺の影響で話すのにとても時間がかかるのですが、“最後まで諦めずに思いを伝えようとする姿勢”を持った方など、選手の実力だけではなく、「アスリートを続けたい」「頑張りたい」というやる気を見て、採用するかどうかを決めています。

ーー素晴らしい考え方ですね。先ほどからお話いただいている「信じて任せる」という社風は、障がい者アスリートの働き方に限らず、社員の働き方にも影響しているのでしょうか?

沖二) 社員は、コアタイムのある全社員フレックスタイム制で、在宅勤務は希望する前の週までに上司の許可を得ることで週3回まですることができます。また、社員1人ひとりに向き合う姿勢として特徴的なのが、年に1度の「意向調査アンケート」です。
たとえば「実家がある九州に戻って働きたい」「来期は広報に異動したい」といった希望に対し、本部長が必ず面談をしています。社員の想いに真摯に向き合い、そこから可能な限り配属を工面するので、社員の満足度もとても高いです。こうした個人の人生を尊重する姿勢があるからこそ、アスリート専属の雇用も実現できているのだと思います。

大日本ダイヤコンサルタント写真提供:大日本ダイヤコンサルタント株式会社

「性善説」が根づく職場文化と育成への情熱、働きやすい環境づくりへの挑戦

ーー会社全体に「性善説」が根付いているのですね。実際に働いてみて、いかがでしょうか。

沖二)出社してもフリーアドレスなので、女性スタッフ同士は近くに座ってコミュニケーションを取ったり、ファミレスのような席でミーティングを行ったりしています。
私たち人事部は、週1回対面でのミーティングをしているので、在宅勤務によるコミュニケーション不足は感じていません。社内全体も同様に、十分なコミュニケーションを取りながら、働く場所を自由に選べる状態が作れているのではないかと思います。

働き方の多様性にも取り組んでいて、技術系で入社した場合も、営業系や情報システム系への職種間異動も可能です。時短勤務や職場職域限定、介護休暇など、いろいろな制度を積極的に取り入れています。

ーー技術士の資格取得のための研修や先輩によるサポートなど、人材育成へも力を入れられているとお聞きしました。

沖二)技術士の資格取得に向けて、一人の先輩が複数人のレポートをチェックし、“赤ペン先生”のように添削やアドバイスを行うのが大日本ダイヤコンサルタントのスタイルです。かなりのマンパワーを要しますが、「お世話になった分、次は自分が後輩を支えよう」という善意の循環を生んでいます。

技術に限らず、営業やシステム関係の働く社員全員が成長できる教育訓練実施記録の制度もあります。「何も学ばずに1年を終えることがないように」との想いから、全社員が年1回は必ず何らかのセミナーを受講する仕組みです。評価制度や昇格要件が明確なので、成長したい気持ちがあれば、着実にステップアップできる環境が整っています。

大日本ダイヤコンサルタント写真提供:大日本ダイヤコンサルタント株式会社

「人」にフォーカスし、共に繁栄する未来へ

ーー沖二さんは2021年に中途採用で入社されていますが、大日本ダイヤコンサルタントで働く魅力とは何でしょうか。

沖二)もし私の身になにか起こったとしても、働き方を工面してくれる会社だと信頼できるところが、この会社の魅力だと感じています。
「人を大切にする」想いを言葉だけでなく、制度や待遇面で体現しているので、嘘偽りなく心から「大日本ダイヤコンサルタントは社員を大切にしている会社です」と言えます。

印象的だったのは、2023年の合併にともなう多忙な時期に、責任感の強いスタッフが業務のプレッシャーから「辞めたい」と申し出たことがありました。
上司に相談したところ「今の働き方だと無理が来ているので、1人ひとりの意向調査も踏まえて、徐々に人数増やしていく」と、会社ですぐにバックアップをしてくれました。通常は、社員の増員はコストがかかるので敬遠されがちです。でも、そんな会社の臨機応変な対応を見て、社員のことを本当に考えてくれている優しい会社だなと思いました。

企業の繁栄も衰退も人次第だと考えていて、10年以上人事部門で働いてきた私にとって、こうした会社で働けていることはとても嬉しいことです。

ーー今後、障がい者アスリートと一緒に、どのようなことに取り組んでいきたいですか。

沖二)人事が担当している採用や研修の場で、彼らの力を借りていきたいです。
具体的には、新入社員研修でアスリートの方々に講話をしていただけたらと考えています。数年後の大会に向けて、あらゆる誘惑に打ち勝ち、目標設定して努力し続けるのは並大抵のことではありません。ましてやハンディキャップがあるなかで、言葉がうまく話せなくても必死に伝えようとする久保選手のようなアスリートの姿は、新入社員にも強く響く部分があるのではと思います。
まずは動画での発信や小さな講演からスタートして、アスリートが持つ「諦めない力」を社内に浸透させていきたいです。

ーー最後に、これから入社を考えている方へメッセージをお願いします。アスリート、一般採用を問わず、どのような想いを持った方に仲間になってほしいでしょうか。

沖二)新卒やキャリアを問わず、新しいことに挑戦でき、仲間を大切にできる人材に来ていただきたいです。今までやってきたことを続けるだけではなく、新規で事業を開拓するような前向きな想いのある方に来ていただけたら嬉しいです。
数字を上げて評価されたり、成果を主張したりすることも重要ですが、そのなかでも”仲間をちゃんと見られる・想える方”に入社していただけると社風にも合うのではないかと思います。

ーーありがとうございました。

大日本ダイヤコンサルタント株式会社のご紹介

築地大橋築地大橋(写真提供:大日本ダイヤコンサルタント)

DNホールディングス株式会社の子会社である大日本ダイヤコンサルタントは、調査・計画・設計からマネジメントまでを一貫して手がける総合建設コンサルタントです。橋や道路、まちづくり、河川・港湾、上下水道、発電所など多様なインフラ整備を支援し、安全で快適な暮らしをプロデュースしています。

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