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バレーボール選手・柳田将洋が見た“競技の裏側で支える人たちの仕事”|アスリート×日本管財 スペシャル対談

日本管財

競技の舞台には、必ず“支える存在”がいます。

現役バレーボール選手として国内最高峰の舞台に立ちながら、その枠を越えて社会とつながろうとしているのが、『東京グレートベアーズ』所属の柳田将洋さん(以下、柳田)です。全国でのバレーボールクリニック、ファンとの交流、社会課題への関心など、そのすべてが「アスリートの価値は、プレーだけに留まらない」という柳田さん自身の信念に基づいています。

今回対談のお相手を務めていただいたのは、全国の建物を支える“縁の下のプロフェッショナル”、日本管財ホールディングス株式会社 常務取締役の若松雅弘さん(以下、若松)です。スポーツ施設の管理にとどまらず、防災、公共施設の包括管理、地域活性化まで——日本管財は、目には見えにくいところで人々の暮らしを支え続けています。

共通しているのは、“誰かのために動く”という姿勢。

プレーの裏側にある支える力と、社会の基盤を担う仕事。異なるフィールドで活躍する二人が語り合ったのは、「仕事」と「競技」、「個人」と「チーム」、「地域」と「社会貢献」のあいだにある、“つながり”の価値でした。

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スポーツの熱狂を支える“技術と情熱”|アリーナからホテルまで。“当たり前”を守る建物管理の現場に密着!勝利の舞台に立つ選手たちが全力を出し切れるのはなぜか? その答えは、整ったコート、安定した電源、快適な空調、そして安全な観客席。 私達が“当たり前”と思っているこの環境は、誰かによって守られているのです。 華やかな競技場、熱気あふれるアリーナ、さらにはホテルや商業施設まで――。 幾多の環境を支えるのは、舞台から見えないプロフェッショナルたちです。 今回は、全国各地で数多くの建物管理を担っている日本管財株式会社に密着。建物管理という仕事のリアルに迫ります。...

インフラの裏側にある“プロフェッショナル”|支える仕事の本質に迫る

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ーー先ほど、この日本管財のミュージアムで仕事の内容についての説明がありました。柳田さんの率直な印象はいかがでしたか?

柳田)日本管財さんの建物管理業務の対象が、想像以上に幅広くて驚きました。マンションや商業施設、さらにはスポーツの施設に至るまで“建物すべてのジャンル”を網羅されていて、とくに『有明アリーナ』は私自身もSVリーグの試合でプレー経験がある施設で、とても身近な存在だと感じています。

若松)自治体が持つ公共施設、民間が持つさまざまな建物など、その種類は本当に多くあるのですが、それぞれの施設や地域の課題に対して私たちはアプローチしています。人口減少や少子高齢化などにより税収が減り、施設運営に対して多くのお金が掛けられなくなってきた自治体との取り組みもそうですし、民間の施設もSDGsの観点から建物を長期に渡って有効に活用することが求められています。

また、“まちおこし”にスポーツを活用したいという需要もあり、私たちが管理する有明アリーナ、横浜文化体育館(横浜BUNTAI)、きたえーるなどの施設もスポーツを通じた地域活性化に大きく貢献していると感じています。

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ーー日本管財さんとして、建物を管理するだけでなく、地域を盛り上げていくための施策にも力を入れているのですね。

柳田)僕たちの生活のあらゆる場面で日本管財さんが関わっているのだと気づきました。

若松)1995年の阪神・淡路大震災以後、防災や震災からの復興への意識も高くなっています。とくに、建物の調査などを行政と手分けして行う活動は、震災直後の避難所の受け入れ可否や復興に向けた次のステップにいかに入るかという点で、非常に意義のある大事な作業だと感じています。

柳田)普通に生活している中でも、防災については意識したり、情報を共有したりしながら備えてはいますが、やはり1人の力では解決できないことが多くあると感じています。ここまでのお話を伺って、行政と専門性の高い民間が連携することで、より社会に貢献したり価値のある活動ができるということが学びになりました。

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競技の外でも価値を届けたい|“現役”だからできる挑戦

ーー柳田選手は、現在東京グレートベアーズで現役SVリーガーとして活躍されながら、プレイヤー以外の活動にも積極的に動かれていると伺っています。実際どのような活動をされているのでしょうか?

柳田)とくにオフシーズンである今年の5月から9月までの間には、バレーボールクリニックを東京だけでなく全国で開催しました。シーズン中はなかなかそうした活動はできないのですが、ファンの方々や子どもたちなど、いろいろな人といろいろな形で合うことを大事にしながら、プレイヤー以外の活動を行っています。

ーーなぜそうした活動に力を入れられるのでしょうか?

柳田)僕自身、アスリートの価値は競技で結果を残すことだけではなく、そのアスリートが持っているものをいかに還元できるか、という点も重要だと思っています。バレーボール自体のスキルを伝えることもそうですし、現役選手だからこそ与えられる影響力もありますよね。
子どもたちの純粋なリアクションもすごくエネルギーになりますし、自分で教えることによって“言語化”することができ、自身の成長につながっていると感じています。とくに言語化する力は、引退後のキャリアにもつながる大切な力だと思います。だからこそ、現役のうちに自分のプレーを言葉で説明できるアスリートが増えてほしいと思っています。僕自身もその意義を感じながら積極的にチャレンジしています。

柳田将洋

ーーアスリートの持っているものを還元したり、現役選手だからこその影響力を発揮していきたいと思い始めたきっかけにはどのようなことがあったのでしょうか?

柳田)最初、バレーボール選手になったときには会社員としての立場もある状態だったのですが、2年後にプロに転向しました。「バレーボール選手として成長したい」という想いが一番の理由だったのですが、プロになることによってファンの方々やスポンサー企業、地域の方々など支えてくれる人たちのことが以前に比べてものすごく視界に入ってくるようになりました。その人たちのためにバレーボールを頑張りたいという想いも強くなり、「どうしたら恩返しができるのか?」という考えを常に持ちながら活動するようになりました。
応援してもらうことで選手たちは頑張れる、そして僕たちの頑張る姿を見てファンの方々もまた明日から頑張ろうと思える、こうしたエネルギーの交換ができることがスポーツのよさであり、バレーボールを通して僕たちが実現できることだと考えています。

ーー「エネルギー交換」はいい言葉ですね。柳田さんが実際にエネルギーをもらったと感じた場面はありますか?

柳田)東京オリンピックの代表に選ばれることができなかったときにはものすごく落ち込みましたし、バレーボールから少し離れようとも考えました。そんなときに声をかけてくれたり、メッセージをいただくことで支えてくれたファンの方々の存在は次のステップに向かうきっかけになりましたし、今こうしてバレーボール選手として活動できているのも、自分の力ではなく、まわりの方々が僕の背中を押してくれたからこそだと感じています。それだけでなく、本当にまわりの方からのエネルギーによって競技生活の中でも充実した瞬間を何度も感じられていますね。

若松)“人との交流”が、柳田選手にエネルギーを与えているんですね。柳田選手のようなファン一人ひとりとの交流だけでなく、多くの人の注目集め、“交流を生み出す”ことにもアスリートの存在感は非常に大きいのではないかと思っています。私たちも、例えばマンションの皆さんに防災や防犯について知っていただきたいというときに、自分たちの力だけでなくアスリートがいることで皆さん前のめりに話を聞いてくれたり、その場の交流が盛り上がり地域の活性化につながることも実感しています。

柳田)僕たちができることがあれば是非協力したいですね。今さまざまな社会課題があり、その解決に貢献することもアスリートとしての1つの責務だと考えています。ただ、アスリートだけの力では解決には至りません。日本管財さんのように、その分野で専門的に熟知されている方と手を取り合うことで、はじめてアスリートの社会的価値があがり、活動の場が広がっていくと思っています。こうした機会もいろいろなアスリートと共有しながら、スポーツ界全体で意識を高めていけるようにしたいですね。

ーー競技だけではないアスリートの価値。素晴らしいですね。

柳田)アスリートにとっても、“自分の存在意義を社会の中で保ち続ける”ことは非常に大事なことです。「自分がここにいていいんだ」と思えるために、競技だけでなく生活の中でアスリートが必要とされる場面がもっと増えるといいですよね。そうした意味でも、社会課題の解決のためにいろいろな人と協力することがこれからも当たり前になっていけばいいなと思います。

選手の声が施設を進化させる|“場づくり”のこれから

ーー日本管財さんは、有明アリーナを始めとしたスポーツ施設の管理も多くされています。

若松)建物を管理することに関して、お客さんの気持ちを考えながらいろいろと動くことは多いのですが、プレーする人の気持ちを聞く機会はあまりありません。アスリートの方々と一緒に「どうこの建物を使っていくか?」という観点でお話できるようになると、より理想的な施設になるのではないかと思うことがあります。

ーーたしかに、アスリートとともに施設の活用方法を一緒に考えられるともっとよい施設になっていきそうですね。

柳田)最近は新しいアリーナも増えて、全体の施設のレベルは上がってきていると感じます。一方、昔からの施設を使うこともあるので、新しい環境とのギャップを感じる場面もあります。

私たち東京グレートベアーズのホームゲームでは、演出にこだわっています。選手としても、お客さんが楽しそうしている姿を見ることができて嬉しいのですが、アウェイの試合で施設によっては、設備の関係でどうしても限られた演出になってしまい、少し残念に思ってしまうこともありますね。

若松)照明も、水銀灯だと一度消すとすぐには戻らなかったものが、LED照明に変わるだけでも違いますよね。アリーナによっては照度も細かくコントロールされているところもあり、演出面でも大きく影響します。

柳田)入場シーンの演出などは、選手のモチベーションにも関わります。「カッコいい姿を見せたい」という気持ちにもなり、プロ意識も上がります。スポーツをエンターテイメントとして捉え、ビジネス的な側面でも伸ばしていこうとする動きは、この10年でもすごく加速していると感じます。

つながりが生む未来|競技を超えて社会と交わるアスリート像

ーー柳田さんは、引退後のキャリアについてどのように考えていますか?

柳田)間違いなくバレーボールには関わりたいと思っています。現在、バレーボールではプロ化が進んでいます。これまでは実業団選手として会社員でありながらバレーボールをプレーし、引退したら社業に専念するという形が一般的でしたが、プロ化していくと、引退後の働く場所、雇用の拡大というところも大きな課題になってきます。プロに転向する人も増える一方で、「辞めたあとどうするの?」という会話も増えている中、バレーボールの業界の拡大が必要ですし、僕自身にも力になれることがあればと思っています。
個人として、まずはクリニックを開き続けながら競技者を目指す若い世代にいろいろなことを教えていきたいと思っています。その中からトッププレイヤーを輩出することも目標の一つですし、こうした活動が自分の価値創出にもつながると思っています。

ーーこれから柳田選手がキャリアを築いていく上で、どんなものを大事にしながら進んでいくのでしょうか?

柳田)“つながり”を大切にすることですね。バレーボール自体も、相手のことを思いながらボールをつなげるスポーツです。社会とのつながり、ファンの皆さんなどまわりの方々とのつながりはこれからも大事にしていきたいです。そうすると、自分の予期していないものが生まれることもありますし、そうしたものに一つ一つ感謝をしながら、自分としても学び、成長していけたらと思っています。

ーー“つながり“は本当に大切ですよね。日本管財さんはどのような時に“つながり“を感じられますか?

若松)私たちの仕事は、“縁の下の力持ち”であることが多い仕事です。この空間にゴミが落ちていない、それを保つために掃除を毎日し続ける、それは仕事でもあり、まわりへの貢献でもありますよね。こうした日々の活動が社会を支えていると思いますし、社会との大きな“つながり”なのではないかと思います。

ーーアスリートとしても、日本管財さんのようなスポーツ施設に関わるお仕事は興味深いのではないですか?

柳田)競技者としての目線で、アリーナなどの施設をさらによくするためにご協力できるのではないか?というのは先ほどのお話でも感じました。また、自分たちがプレーしている環境を日本管財さんのような会社が支えてくれているということを知り、アスリートや地域とも一体となって進んでいくことが重要なのではないかと思っています。本日の対談でも、建物管理のお話を聞くことで新しい視点を持つきっかけにもなれましたし、より多くコミュニケーションをとっていくことは有意義なことだと感じています。
日頃から競技をする上で協力していただいていることもたくさんある中で、逆の立場になって協力できることはどんどんやれたらと思います。それがアスリートとしての学びや成長のきっかけにもなり、競技後のキャリアにもつながることもあると思うので、そうした関係性が今後も増えると嬉しいなと思います。

ーーアスリートとしても活動の場が増えることで、その魅力を知ることができる場面も増えそうですよね。

若松)日本管財の社員にも、アスリートとして一生懸命に競技に打ち込んできた方が何人もいらっしゃいます。アスリートの方の誠実で、輪を大事にするマインドは、建物を管理するという仕事にピッタリです。輪をつくることも得意ですし、輪を繋げていくことも上手なアスリートの力は、よりよい施設にしていく上でとても大事なことだと思っています。

柳田)若松さんのご意見はすごくわかります。バレーボールは、1人だけの力では勝てないスポーツなので、結束して一つの方向に向かうチームの方が強いなとお話を聞いていて思いました。これからもさまざまな場面で協力させていただけると嬉しいです。

若松)柳田選手のような現役の選手たちと意見交換したり、セカンドキャリアとして私たちの仲間になるアスリートが出てきても嬉しいですね。今後のスポーツやアスリートとのコラボレーションに期待しています。

ーーありがとうございました!

 

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