「インクルーシブ」という言葉が、多くの場所で聞かれるようになりました。障がいの有無や年齢・性別に関わらず、誰もが楽しめる場所を作りたい。さまざまなスポーツチームでも、この「インクルーシブ」をテーマに多くの活動が行われています。
なでしこリーグに所属する大和シルフィードもそうしたクラブの1つです。10月12日(土)に行われたプレナス・なでしこリーグ2部第20節のホームゲームは、『インクルーシブスタジアムDAY』として誰もが楽しめるスタジアムとして開催しました。
多くの観衆が集まる『大和なでしこスタジアム』での、インクルーシブなスタジアムをつくるための実際の取り組みと、見えてきた課題についてレポートします。
アンプティサッカー体験会を実施!
スタジアム2階コンコースでは、静岡県のアンプティサッカーチーム『ガネーシャ静岡AFC』によるアンプティサッカー体験会を実施しました。上肢または下肢に切断障がい等のある人のサッカーで、クラッチと呼ばれる杖を使ってプレーします。
ーー今回のアンプティサッカー体験を通じて感じたことを教えてください。
ガネーシャ静岡AFC)初めてアンプティサッカーを知った方も多く、まだまだ、アンプティサッカーが知られていないと感じました。今回のような、体験会を通してアンプティサッカーの知名度を上げていきたいです。
ーーアンプティサッカーの魅力は?
ガネーシャ静岡AFC)クラッチを使うことにより、普通のサッカーにはない、アクロバティックなプレー、トリッキーなプレーができるところが魅力です。片足でも力強いシュートが飛び出していくところを是非見ていただきたいです。
ーーガネーシャ静岡AFCとしてどのような未来を目指していますか?
ガネーシャ静岡AFC)健常者も、ハンディキャプがある方も、みんなが一緒のフィールドでプレーできる環境、共有できる時間を少しでも多く作りたいです。そこに、多くのみなさんが笑顔でいられる場所を作れれば良いと思っています。
ハーフタイムにはガネーシャ静岡AFCによるアンプティサッカーのパフォーマンスを実施。華麗なクラッチ操作と力強いシュートは、初めてアンプティサッカーを見た!という人にも驚きを与えました。
深沢のりお選手は、生まれたときから片足がない先天性の障がいがあり、「サッカーなんてできないだろう」と思っていたそうです。Jリーグファンだった家族の影響でアンプティサッカーと出会い、その魅力に引き込まれていきました。今後の目標は、11月に行われる日本選手権での優勝、そして個人では得点を決めること。応援しましょう!
電動車いすサッカーの選手が観戦に
神奈川県でも取り組んでいる“インクルーシブフットボール”の動き。横浜F・マリノスなど神奈川県内のプロサッカーチームとともに、大和シルフィードも参加したイベントで知り合った『電動車椅子サッカークラブ横浜クラッカーズ』の方4名が、インクルーシブスタジアムDAYにも来場しました。
ーー観戦体験はいかがでしたか?
横浜クラッカーズ 荒選手)白熱した試合を観戦できて良かったですし、楽しい見応えバツグンの試合でした。僕自身、初のサッカー観戦なので思い出に残りました。また是非、観戦したいです!
横浜クラッカーズ 阿部選手)僕自身、久しぶりのサッカー観戦でした。入ってすぐ、サポーターの皆さんの応援の迫力に驚きました。僕の想像していた何十倍もの応援でした。試合中のボールを蹴る音が響いていて、とても印象に残っていますし、シルフィードさんのゴールシーンは思わず声が出てしまう程、熱くなりました!是非また機会があれば、また観戦に行きたいです!
ーー大和なでしこスタジアムのバリアフリーに関していはいかがでしたか?
荒)今回、用意していただいた場所に行くための入口のところにちょっとだけ段差があったので、そこにスロープなどを用意していただけると良いかなと僕は思いました。
阿部)バリアフリーの点ですごく助かったのが、広いトイレが一つあった所です。ただ、今回のイベントでも2階のブースには参加する事が難しかったので、一番は2階へのアクセスをバリアフリーにしてほしいなと感じました。
ウォーキングサッカーイベント
試合後にはウォーキングサッカーをピッチで開催。ウォーキングサッカーは、歩きながら行うサッカーで、運動能力に差があっても楽しめるルールになっています。
選手たちが駆け抜けた天然芝のピッチ上で、大人も子どもも楽しく交流しました。
編集後記
誰もが楽しめるスタジアムを作りたい。クラブ規模の大小にかかわらず、どんなスポーツチームでも考えることだと思います。大和なでしこスタジアムは最新鋭のスタジアムではないものの、今回の『インクルーシブスタジアムDAY』のような取り組みは、大きなきっかけとなる一日になったのではないでしょうか。
車いすの方に実際に来ていただくことで見えた課題は、ハード面での体制を整えていくための大事な意見になるだけでなく、運営する側のノウハウにもなっていくでしょう。ハード面と並行して、運営者、サポーター、地域の人々など、すべての人の考え方が少しでも“インクルーシブ”に近づくために、今回の大和シルフィードのような取り組みは重要なものだったと思います。さまざまなスポーツ場面で、いろいろな人に楽しんでもらえるように「やってみよう!」と思うことの大事さがわかる一日でした。