コラム

「広告」から「共創」へ|スポーツと企業の共創によるスポンサーシップの進化

今回の記事は、スポーツチームと企業の「スポンサーシップ」がテーマです。そもそもどういう形で成り立っていて、それが今の時代はどう変化しているのかについて触れていきます。改めて企業がスポンサーをチームにする理由や期待することや、実際の事例もご紹介していきます!

そもそもスポンサーシップとは

スポンサーシップとは、一言で言うと「スポーツチームと企業の協力的なパートナーシップを指し、双方に利益をもたらすことができる仕組み」です。
スポーツチームにとっては、契約料を元に必要な資金とリソースを確保し、チームがパフォーマンスを高めるために不可欠な環境や人件費に投資して、チームの知名度やファンとのエンゲージメントとロイヤリティを高め、チームやクラブの成長と発展につなげることができます。

企業観点では、チームからさまざまな権利を得ることでブランドの認知拡大、商品やサービスのプロモーション、顧客獲得のための新しいプラットフォームを獲得することが可能となります。(図1参照)

スポーツスポンサーシップ【図1】スポーツチームとスポンサー企業の関係図

では、スポンサーシップについて、スポーツチームと企業のそれぞれにとってのメリットや内容を詳しくみていきましょう。

スポーツチームにとってのスポンサー収入

スポーツに詳しくない方でも、なんとなくスポーツチームの収入はスポンサー料が多いイメージがあるのではないでしょうか。

実際にスポーツチームにとってスポンサー収入がクラブ収益のどれくらいの割合を占めるのか、この記事ではJリーグのデータを元に検証していきたいと思います。(図2参照)

スポーツスポンサーシップ【図2】Jリーグ:カテゴリー別の収益構造

こちらからわかるように、カテゴリーを問わず収益の約半分がスポンサー料(広告料)なのがわかりますね。改めて整理すると、現在のサッカークラブの主な収益は、Jリーグからの配分金を除けばスポンサー収入(広告料収入)、入場料、物販という主に3つの要素で構成されています。
まず、入場料やグッズ売上は毎年売上が変動するため安定した収益には繋がりにくく、さらにチケット収入に関してはスタジアムのキャパシティという限界もあります。しかし、スポンサー料に関しては多くが年単位での契約となり、シーズン前に決まることも多いため、チームはまとまった金額を得ることが可能です。また、営業に関わる費用を少なく抑えることもできるため、利益率が高いのも特徴です。そのため、スポンサー収入がクラブ経営を支えているといっても過言ではないと言えるでしょう。

では、実際にJリーグのクラブのスポンサー料はどれくらいの販売価格なのでしょうか。川崎フロンターレが公開している資料(スポンサーシップ2022)によると、2022シーズンの同クラブの公式戦ユニフォームスポンサーとして、背中にロゴを掲載できる金額は2.5億円。1番安いパンツへのロゴの掲載で6000万円でした。同シーズンの川崎の公式戦のユニフォームスポンサーの金額を全て合計すると7億円を越え、ユニフォームスポンサーだけでも非常に多くの収入を得ることができますね。こういったウェア系のスポンサー以外にも、スタジアムでの看板・金額や設置場所などで、多くのバリエーションがあります。

参考:川崎フロンターレHP(https://www.frontale.co.jp/partners/partnership/index.html

スポーツチームにとって、やはりこのスポンサー収入(=売上)をどれだけ増やせるかは、経営強化や戦績の向上に直結すると言えるでしょう。実際に図3のように、売上高と順位は、ある程度は比例していますね。

スポーツスポンサーシップ(図3:2022シーズン売上と順位比較 )

また、その他にも、大企業や数多くの企業がスポンサーについていると、そのチームのイメージアップにもつながる点も魅力と言えますね。

このようにスポーツチームにとっては多大な恩恵があるスポンサー収入ですが、企業側にとってスポンサーを行うメリットは何でしょうか。

企業にとってのスポンサーメリット

やはりもっともわかりやすいのは、露出による広告効果です。金額や形態にもよりますが、まず、企業がチームとスポンサー契約を結ぶことで、多くの場合チームが公式サイトやSNSでリリースし、契約の締結を発表します。そこで、これまで知られていなかった企業の存在をファン・サポーターや他のスポンサーから認知されるきっかけとなることが期待されます。そして上述のフロンターレのケースのように、企業の名前やロゴがウェアや公式サイトに掲載され、認知度が上がる可能性があり、クラブを応援する人が増えれば増えるほど、多くの人に企業の存在を知ってもらえることになると言えますね。
そして、露出に加えて期待できるのはイメージアップです。スポーツチームのスポンサーをしていることで、その企業にも「箔」がつき、信頼度や好感度が増す可能性があるでしょう。チームと連携して、企業単独では行えないような様々な企画を実行し、商品やサービスのプロモーション機会を獲得することもできます。スポーツファンという新しい顧客層にリーチできる可能性もあります。

それでは、このような広告以外に、魅力的な投資効果は他にないのでしょうか。

これからのスポンサーシップモデル

これまで述べてきた通り、スポンサーシップは、企業が単なる広告効果を求めてプロスポーツチームに対して資金提供を行う形態を取っており、ユニフォームのロゴや、試合会場で看板などを掲示することで企業宣伝や露出が多くを占めていました。あとは、地元のスポーツ団体に協賛するという、「地域のスポーツを応援している」という地域スポーツ振興のイメージ付けの戦略が中心でした。

しかし、これからはお客様が持っているリソースとスポーツチームが持っている強みをかけあわせた、ビジネスディベロップメント形式、つまり「共創」が主流になりつつあります。企業とプロスポーツチームが協力して新たな価値を生み出し、共同で事業を展開することが、両者にとって持続可能な成功をもたらすのです。

スポーツやスポーツチームが持つ価値は、実はこれだけの種類があります。

  • アスリート
  • ウェア
  • ファン/サポーター
  • グッズ
  • 知名度/ブランド
  • 地域(地域経済)との繋がり
  • ポジティブなイメージ(チャレンジ・チームワーク・生きがい・成長・伝達力・ダイバーシティ) 等

これらの価値や強みを、自社のリソースや課題に当てはめることで、企業の課題解決をするチカラがスポーツにはあるのです。
特に、下記のような企業の課題解決に適しているでしょう。

  1. 企業認知 / ブランディング:企業名やサービス内容についての発信
  2. キャンペーン:コラボキャンペーン/商品の企画・実施・販売
  3. ビジネスマッチング:他のスポンサー企業との関係構築
  4. 人材採用:スポーツを活用した採用施策の実施
  5. 人材研修:社会研修プログラムの一環
  6. インナーブランディング / チームビルディング:スポーツを通じた社内文化醸成/コミュニケーション活性化
  7. 新規事業開発:ステークホルダーと共同した新たな取り組みの実施
  8. テストマーケティング:リリース前の新商品・サービスを試す場としての活用
  9. 地域課題解決:地方自治体が抱える課題を解決する取り組みの実施
  10. 従業員健康促進:従業員の心身における健康維持活動の実施
  11. 女性活躍推進:女性のライフステージに対応した活躍支援
  12. 障がい者活躍推進:企業価値の向上や多様性のある組織作り

企業がスポンサーシップで期待すること

では、実際に企業がスポーツチームへのスポンサーシップで期待することはどんなことなのでしょうか。野村総合研究所が2019年に「企業におけるスポーツ支援の実態把握に関するアンケート調査」を初めて実施しました。
*スポーツ支援を行っている企業の数、支援の方法・目的・費用・対象等を把握するために、東証一部と二部の上場企業にアンケートを送付。このうち201社から回答あり。支援の基準は100万円以上をかけているかどうか。

その調査では、全体平均では約50%の企業が何かしらのスポーツ支援を実施していると回答し、その支援目的は、自社の宣伝と同じくらい、社会貢献・CSR(企業の社会的責任)との回答が多く、競技の活性化や競技力の向上はそれほど重視されていないという結果になっていました。

スポーツスポンサーシップ【図4】野村総合研究所 2019年「企業におけるスポーツ支援の実態把握に関するアンケート調査」

この調査結果からも、企業がスポンサーシップに期待することが、単なる広告効果になっていないことがわかります。

また、スポーツ庁は、「国内スポーツ市場規模を、2012年の5.5兆円から、2025年までに15兆円に拡大する」という壮大な目標を掲げており、そこには「Sports Open Innovation Platform(SOIP)」と呼ばれる戦略があり、スポーツ×他産業の融合がキーワードとなっています。これからますます、さまざまな分野でスポーツと企業の共創が加速していくことが予測されるでしょう。

スポーツスポンサーシップ【図5】スポーツ庁 スポーツオープンイノベーションプラットフォーム推進会議配布資料

では、ここからは実際に企業がスポーツチームと共創を行った事例をご紹介します。

共創事例

Case1. ネットワンシステムズ × 大分トリニータ

「サッカーチームを活用した、企業の社会貢献活動の『実行』」

ネットワンシステムズ社はBtoB企業であり、寄付などの実態のないCSR活動が多かったのですが、大分トリニータのスタジアムや地域での活動に参画することで、社会貢献活動を通じた消費者との触れ合いが生まれました。2022年以降、アウェイゲームにも活動を広げることで、全国にいる社員のボランティア場所としても活用しています。

エスコートキッズ
【経営者インタビュー】ネットワンシステムズが大分トリニータと社会貢献活動をする理由ネットワンシステムズ株式会社(以下、ネットワン)は、Jリーグ大分トリニータのユニフォームスポンサーおよびソーシャルアクションパートナーとして、社会貢献活動に積極的に取り組んでいます。Sports for Socialでは、彼らの取り組みを連載として取り上げます。なぜトリニータをスポンサーするのか、なぜ社会貢献活動に力を入れるのか——。 初回は、竹下隆史・代表取締役社長執行役員(以下、竹下)に、その考えを伺いました。...

Case2. e-dash × アルバルク東京

「スポーツの試合会場が『実証の場』であり『啓蒙の場』に」

環境に取り組むチーム『アルバルク東京』を活用したカーボンオフセットのメッセージ発信プロジェクトです。スポーツチームのホームゲーム会場(約8000人)を実証実験場所として活用することができました。

アルバルク東京
「バスケどころではなくなるかもしれない」アルバルク東京が取り組むカーボンオフセットの大きな可能性CO2削減、カーボンニュートラル、脱炭素・・・。 地球環境における温暖化問題について、「取り組まなければならない」と多くの人々が理解している一方、「なにをどう取り組めばいいのか?」わからない人が多数いるのも事実です。 そんな中、スポーツチームが取り組む脱炭素プロジェクトは注目を集めています。スポーツ観戦のシーンで発生するCO2を可視化し、そのオフセットにも取り組むことで、この難しい問題をスポーツファンにより身近に感じさせることができます。 なかでもよりエンターテインメント要素の強いバスケットボールリーグ・Bリーグ。アルバルク東京が挑むカーボンオフセットには、より広く、そして本質的な想いが隠されています。そんな取り組みについて、アルバルク東京SRグループ浅野英朗マネージャー(以下、浅野)にお話を伺いました。...

Case3. タビオ × avex ROYALBRATS

「ダンスチームを活用して新たな年齢層へのブランディングへ」

もともとタビオは、30代〜40代以上の男性がターゲットラインでしたが、新規層へのテストマーケティングとして動画作成・発信をダンスチームに依頼し、新しい領域での商品開発に取り組むことが可能になりました。

■avex ROYALBRATS × Tabio MEN 「フットパフォーマー2」スペシャルムービー【第2弾】

Case4. 一燈会 × 湘南ベルマーレフットサルクラブ

「農業×福祉の農福連携に、スポーツをかけあわせた課題解決事業:ベルファーム」

農業の担い手不足解消・耕作放棄地の問題解決、障がい者の自立促進、スポーツ選手の雇用創出という3つの課題解決モデルを実現しています。2022年にスポーツ庁主催のINNOVATION LEAGUE大賞を受賞し、2024年には本事業で神奈川県と連携協定を締結しました。

(神奈川県HP:https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/1368/tomoniikiru/feature/articles/work10.html

共創を生み出すために

広告も含め、これらの価値を効果的に活用することができるのがスポーツスポンサーシップです。是非この新しい共創を、貴社でも生み出しませんか?

株式会社HAMONZでは貴社の課題を元に、本質的な課題解決に繋がるスポンサーシップ戦略の企画、スポーツチームとの調整業務や実際の運用に至るまで、幅広くサポートいたします。
担当者さまのご負担を減らし、ご予算に合う最適なスポーツスポンサーシップのプランを策定、ご提案します。2024年にはパリオリンピック・パラリンピックもあり、ますますスポーツが注目されています。
是非、お気軽にお問い合わせください!スポーツのチカラで、一緒にあらゆる課題解決を行っていきましょう。

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