『ダイバーシティ(diversity)』とは、日本語では「多様性」といいます。「みんな異なる」というだけでなく、ある集団のなかで年齢、性別、人種、経験、趣味嗜好などが異なる人が存在している状態において、その個性が認められる、相対的な考え方です。今回は、『ダイバーシティ(多様性)』の意味と具体例を示しながら、多様性を尊重することの大切さについて解説していきます。
「ダイバーシティ(多様性)」とは
「ダイバーシティ(多様性)」とは、さまざまな社会、民族的背景、異なる性別、性的指向など、それぞれの人々が持つ多種多様なバックグラウンドのことです。また、個人の違いを認め合い、尊重し合うことも指し、ダイバーシティは一言で定義することが難しい言葉とも言えます。
「ダイバーシティ」と共に注目されている言葉として、「インクルージョン(inclusion)」があります。インクルージョンは、英語から直訳すると「包摂」「包括」という意味で、全体をまとめる、包み込むということです。
「ダイバーシティ&インクルージョン」の概念は、各企業で取り入れられています。企業においての「ダイバーシティ&インクルージョン」は、多様な人材を確保し、その多様性を認め合い一体となって働くことを指します。
「ダイバーシティ(多様性)」の種類
「ダイバーシティ(多様性)」は概念が広く、さまざまな角度からの見方が存在します。ダイバーシティを3つの側面に分けて紹介していきます。
・内的側面:インターナルダイバーシティ(Internal diversity)
「インターナルダイバーシティ」とは、個々人が生まれながらに持っている個性のことを指します。基本的に、自分ではコントロールをすることが出来ず、不変的なものです。
例えば、人種、年齢、出身国、性的指向、文化的アイデンティティなどがあります。
・外的側面:エクスターナルダイバーシティ(External diversity)
「エクスターナルダイバーシティ」とは、インターナルダイバーシティと比較し、他人や周囲の環境に影響されて変化するものです。また、時間の経過とともに変わることも特徴的です。
例えば、趣味、家族構成、交際状況、外見、信仰している宗教などがあります。
・組織的側面:オーガナイゼーショナルダイバーシティ(Organizational diversity)
「オーガナイゼーショナルダイバーシティ」とは、組織の中で割り当てられた違いで、職場の特性に関するものです。社会の中には学校、企業などさまざまな組織が存在しますが、どの組織に属しているにしても、私たち一人一人がその組織を構成している一員です。
例えば、勤務地、経営形態、雇用形態、給与形態などがあります。
「ダイバーシティ」に関する問題
「ダイバーシティ」は、誰もが必然的に認められるべき権利です。しかしそのダイバーシティをめぐる問題は数多くあります。以下が一部の例です。
性的多様性に関する問題
性的多様性とは、性的指向やジェンダー・アイデンティティを指します。LGBTQコミュニティという言葉で表される性的多様性は社会の認知度に関わらず既に存在しており、私たちは、その多様性に気づく必要があります。
性的多様性に関する問題としては、下記のような例があります。
・周囲の理解度が低いためにカミングアウトが出来ない
・本来の自分を偽る必要によるストレス
・同性婚が認められない
人種や民族の多様性の問題
日本で長く生活をしていると、人種や民族の多様性に関する問題について接する機会は少ないと考える人もいるかもしれません。しかし、グローバル化が進んでいる現代において、世界規模で物事を考えることは大切なことです。人種の多様性についての問題は白人、黒人の問題だけでなく、アジア人へのヘイトも問題になっています。
・人種を理由に社会で差別やヘイトを受ける
・入店できるレストランが限られている
・就職先の選択肢が少ない
・留学先で人種が違うことを理由に差別発言をされたり、排除される
世界の事例
ラテン系モデルのジョアン・スモールズさんは、世界有数のビューティブランドのグローバルアンバサダーに選ばれ、瞬く間にトップモデルへと駆け上がりましたが、日常に潜む目に見えない差別に悩まされるようになりました。人種差別をなくすために、SNSを通じて日々、何気ない差別との戦いに声を上げ続けています。
https://www.vogue.co.jp/change/article/models-in-challenge-joan-smalls
21世紀にダイバーシティはなぜ必要なのか
受容の拡大と差別の減少
ダイバーシティの促進は、「寛容」を促すだけでなく、「受容」の一歩でもあります。今まで、自分と異なると思っていた人が、お互いの「ダイバーシティ」を認め合うことで、実際には多くの共通点を持っていることに気付くかも知れません。このような違いや共通点に精通することで、私たちは今まで持っていた視点を改め、差別を助長する誤解や偏見を減らすことができます。
より豊かな人生経験と生きやすい社会を作り出す
「ダイバーシティ」が認められていない社会は、誰かが差別や偏見に苦しみ、本来の自分を押し殺さなくてはならない状況を意味します。そのような社会は、「誰もが生きやすい社会」とは言えず、環境や時間の変化により自らの身に訪れる可能性もあります。自分や周りの多様性に気づき、認め合うことで、人生はより豊かになり、誰もが生きやすい社会を実現する第一歩になるのではないでしょうか。