『ジェンダーギャップ指数』とは「国ごとの男女格差を数値化したもの」です。世界経済フォーラム(WEF)が毎年公表しているもので、賃金格差や政治参加など、様々な観点から男女格差を目に見える形にしています。今回は『ジェンダーギャップ指数』の問題点や計算方法、ランキングをもとにした日本の現状を明らかにしていきます。
ジェンダーギャップ指数とは
先ほどもお伝えした通り、『ジェンダーギャップ指数』とは「国ごとの男女格差を数値化したもの」です。この指数は、「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野における男女平等を評価し、その総合スコアを表しています。2006年から、スイス非営利財団世界経済フォーラム(WEF)によって毎年公表されていますが、これは各国がそれぞれの男女格差を把握・解消することを目的としています。
『ジェンダーギャップ指数』が低い=男女不平等だと、女性に対する差別の問題が発生する可能性が高くなります。例えば、賃金格差や性暴力、人身売買など、そうした問題を抱えている多くは女性です。こうした現状に問題意識を持つきっかけとして生まれたのが『ジェンダーギャップ指数』なのです。
ジェンダーギャップ指数の計算方法
先ほどもお伝えしましたが、ジェンダーギャップ指数は「経済」「政治」「教育」「健康」の4分野で構成され、それらの様々なデータから計算されています。4分野の詳細項目として、以下のものが挙げられます。
経済分野
- 労働参加率
- 同一労働における賃金
- 収入格差
- 管理職の男女比
- 専門技術の男女比
政治分野
- 国会議員の男女比
- 閣僚の男女比
- 過去50年の首相の男女比
教育分野
- 識字率
- 初等教育(小学校)進学率
- 中等教育(中学校・高校)進学率
- 高等教育(大学・大学院)進学率
健康分野
- 出生時の男女比
- 平均寿命・健康寿命の男女比
これらの項目より評価され、「0」が完全不平等、「1」が完全平等として数値化されます。その平均値が「総合スコア」として、最もメディア等で取り扱われているのです。
世界ランキングと日本の現状
2021年に発表されたジェンダーギャップ指数の世界ランキングは、以下のような順位でした。
2021年の日本の総合スコアは0.656、順位は156か国中120 位と、主要7カ国(G7)の中では最下位でした。これは、アジア諸国の中で韓国や中国、ASEAN諸国よりも低い順位です。
これは、分野別に見たスコアの比較です。日本は、特に「経済」「政治」のスコアが低いことが分かります。この二つを中心に、日本はなぜジェンダーギャップ指数が低いのか、その原因と解決策を一緒に考えてみましょう。
日本の経済分野
日本の経済分野は117位(156カ国中)と低く、その背景として挙げられるのは女性の管理職の少なさです。国際労働機関(IOL)によると、2018年度、管理職に占める女性の割合の世界平均は27.1%であるのに対し、日本は14.7%と低い数字です。日本政府は「2020年に女性の管理職の割合を30%にする」という目標を掲げて様々な取り組みを行ってきましたが、まだまだ低い水準であることが分かります。
女性の管理職の問題を考えるとき、「ガラスの天井」という言葉が使われることがあります。「ガラスの天井」とは、能力・実績があっても性別や人種などの理由で昇進できないこと、あるいは昇進させようとしない会社内の障壁のことを指します。この背景には、女性は出産・育児を理由に仕事を離れる人が多いことや、「管理職は男性の方が体裁が良い」といったジェンダー差別の存在が挙げられます。こうした課題を解決するために、誰もが働きやすい社会環境について見直す必要があるのです。
政治分野の問題
日本の政治分野は147位と、とても低い水準でした。この背景として考えられるのは、国会議員・大臣の女性の割合がどちらも10%に満たないことです。 さらに、過去50年間女性の行政府の長が存在しないことも原因の一つでしょう。
このような問題を解決するためには、どうしたら良いのでしょうか。例えば、ランキング1位のアイスランドでは「クオータ制(割り当て制)」を導入しています。この制度は、企業役員や公共の委員会のメンバーの40%以上を女性とする(男女ともに40%を下回ってはいけない)ことを定めたルールです。これにより、国会議員の4割が女性という高い数字を誇っています。この解決方法は一例であり、一概に良い方法だとは断言できませんが、こうした法整備が「男女平等」に対する国民の意識を高めたのかもしれません。
ジェンダーギャップ指数の問題点
ここまで解説した『ジェンダーギャップ指数』ですが、問題点も存在します。それは「順位が低い=本当に男女不平等なのか?」という正確性に対する疑問です。メディアでは、『ジェンダーギャップ指数』を取り上げて「日本は男女不平等」だと報じることも少なくありません。ところが、2020年の国連開発計画「人間開発報告書」における「ジェンダー不平等指数」によると、日本は162カ国中24位でした。これはとても高い水準であり、「日本は男女不平等」とは言い難い結果でしょう。
このように、取り上げる領域やデータの取り方によって変わる “男女不平等の目安” を、絶対的なものとして取り上げることに反対する人もいるのです。『ジェンダーギャップ指数』はあくまでも目安であることを忘れず、ポジティブな社会変容のために利用していきたいですね。
編集部より
今回解説した『ジェンダーギャップ指数』ですが、これは「男性」の意識改善のみを目的としているものではありません。社会にある男女不平等に対して「女性」自身が問題意識をもち、勇気をもって一歩踏み出すきっかけでもあるのです。
その一歩は、抗議活動に参加することなのか、友人の発言に「それジェンダー差別じゃない?」と言ってみることなのか、それはあなた次第です。一人ひとりの小さな一歩が、やがて社会を大きく変えるのかもしれません。『ジェンダーギャップ指数』は、その一歩のためにあるのだと、私は思います。