北海道の野球場をより安全で快適なコンディションに整え、子どもたちに野球を楽しんでもらいたい——。
野球場の修繕費用を提供するだけではなく、北海道日本ハムファイターズが旗振り役となり、自治体やスポンサー企業、球場管理団体、地元企業、そして野球場を利用する人が協力して、一緒に野球場を直し、作っていくこのプロジェクト。
北海道日本ハムファイターズ 事業開発グループの荒木龍史さんにこのプロジェクトの取り組みと想いを伺いました。
アメリカの社会貢献活動から得たヒント
ーーまずはじめに「ダイヤモンド・ブラッシュ・プロジェクト」はどのような取り組みなのか教えてください。
荒木)「ダイヤモンド・ブラッシュ・プロジェクト」は、北海道日本ハムファイターズとして全道にある少年野球場を修繕するお手伝いをしようというプロジェクトになってます。
©H.N.F.
2018年に北海道の道北にある音威子府(おといねっぷ)村営野球場が、行政で修繕費用を出すことができず、もう球場自体を閉じてしまうという話を聞いたことが、このプロジェクトが始まるきっかけでした。音威子府村は北海道で一番小さい村なのですが、道北の中心に位置していることもあり、道北のチームが集まりやすい野球場でした。70年以上続く音威子府村営野球場が試合会場の大会があったのですが、球場が閉じることになり大会を行う場所がなくなってしまいました。
球団として何かできないかと思い、私が海外球団の社会貢献活動を調べていく中で、マイナーリーグ球団がスポンサーと一緒にリトルリーグの野球場修繕をサポートする「プロジェクトリフレッシュ」という活動の存在を知りました。
地域の人や子どもたちが集まり、野球場でペンキを塗ったり、グラウンドを整備している実際の活動の映像を見て、とても素晴らしい活動だと思い、球団のSC(Sports Community)委員会で提案して、ファイターズとして野球場の修繕活動に取り組むことになりました。
ーー海外で参考になる社会貢献活動があったのですね。荒木さんは元々海外の社会貢献活動の事例に対する関心は高かったのですか?
荒木)ファイターズのSC委員会は部署を横断して球団職員が参加しており、私は事業開発グループに所属しています。バックネット裏の広告や試合の冠スポンサー営業をメインに行っているのですが、アメリカのメジャーリーグ球団の事例を見ると、スポンサー企業は単純に露出を通して販売促進を行うだけではなく、球団と一緒に社会貢献活動をすることが主流になっていました。
また、広告の看板の数は限られていますし、冠スポンサーも試合数以上にはできないので、新しくスポンサー企業と一緒にできることを見つけたいという課題意識がありました。
そこで、スポンサー企業がいるからこそ、ファイターズ独自で行う社会貢献活動をより有意義に行い、かつ収益を上げることができ、スポンサー企業もメリットが見いだせるという観点から、メジャーリーグの社会貢献活動は以前から参考にしていました。
自分たちの手で直し、作った野球場に生まれる「愛着」
ーー「ダイヤモンド・ブラッシュ・プロジェクト」のホームページで、稲葉篤紀さんも現地に足を運んでいる写真も拝見しました。
荒木)稲葉は2015年から「スポーツコミュニティオフィサー」という肩書きで、球団の社会貢献活動(スポーツコミュニティー活動、SC活動)の責任者を担ってきました。このプロジェクトでは、球場の修繕が終わったら、どの球場でも行うセレモニーで、稲葉に祝辞を述べさせていただいたり、子どもたちとの記念撮影を行ったりしています。
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一番重要なのは、関係する皆様全員で球場の修繕作業をする日を必ず設けて、球団からもスポンサー企業からも人が来て、その野球場を使う子どもたちや家族と一緒に取り組むことです。
ーーこのプロジェクトでは、「みんなで取り組む」ということを、非常に大切にされているのですね。
荒木)「ダイヤモンド・ブラッシュ・プロジェクト」では、応募いただいた野球場関係者の方との最初の打ち合わせで、「野球場の修繕費用を最大200万円まで支援しますが、このプロジェクトはそれで終わりではありません。」と必ず伝えています。
このプロジェクトに応募し、私たちが支援する団体も自主的にも動いてもらうということが重要で、地元企業からの支援を取り付けたり、自治体からも協力してもらえるように働きかけてくださいとお願いしています。みんなで集まって修繕作業をする日は関係する全ての人たちが「自分たちで修繕した球場」と感じてもらうためにとても重要なので、繰り返し伝え、お願いしています。
ーーみんなで集まって作業する日には、参加してくださった方々とどんなことを行っているのですか?
荒木)9月中旬に行った修繕作業では、外野フェンスを作るため支柱を埋めたり、雑草を取ったり、グラウンドの土をシャベルと一輪車でみんなで運んだり、さまざまな作業を行いました。明日も子どもたちが集まってベンチの組み立てをやるのですが、僕も参加しようと思っています。体力的には大変ですが、楽しいです。
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ーー「野球場を作る」という経験なかなかできないですよね!印象に残っているエピソードはありますか?
荒木)昨年実施した野球場では、応募いただいた団体である野球連盟が協力企業を自分たちで集めるなど、本当にいろいろと動いてくださって、良い球場ができました。会長さんが、「もう大会以外で使わせたくない。」「自分たちでどんどん使いたい。」と冗談を交えた言葉からも、自分たちが汗を流して作った野球場に生まれた愛着が伝わってきました。
ーー確かに自分たちで作った野球場には、通常よりも愛着がわきますよね!そう言いたくなる気持ちもわかります。
企業と連携し、安全で楽しい野球場を増やす
ーー最後に、今後の展望や取り組んでいきたいことを教えてください。
荒木)このプロジェクトが始まる最初のきっかけである、修繕できずに取り壊してしまう野球場をなくしていこうということと、子どもたちが楽しく安全に野球ができる場所を作ってあげようという目的をしっかりと果たしていきたいです。
そして、「ダイヤモンド・ブラッシュ・プロジェクト」に参加した自治体や連盟を集めて、整備した野球場で大会を行ったり、野球をまだやったことのない子どもたちを集めて野球教室を開いたり、野球場というハードの整備だけではなく、ソフトの面でも野球人口の下支えになることに取り組んでいきたいと考えています。
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また、企業の担当者の方にこのプロジェクトの説明をすると、「それ面白いね」「もうちょっと話聞かせてください」とよく言っていただけます。
とあるインフラの通信系の会社さんとは「球場にカメラをつけて、親御さんがいつでも自分の子どもたちの活動を見れるようにする協力はできると思う」という話もいただきました。
来季に向けて、子どもたちが安全に楽しくできる環境というのを、スポンサーやサプライヤーを増やしていきながら、作っていきたいです。
ーーありがとうございました!
©H.N.F.
ダイヤモンド・ブラッシュ・プロジェクト
https://www.fighters.co.jp/expansion/csr/diamond_brush/
第三期応募:2021年7月22日(木・祝)~10月31日(日)必着
修繕実施予定:2022年4月~6月頃