FC町田ゼルビアでは、小学生向けにオリジナル教材を作成し、ホームページ上に公開する『ゼル塾』に2020年4月から取り組んでいます。子どもたちが取り組んだ教材を試合会場へ持っていくと、プレゼントが貰える「スタンプカード」も実施。教材はパートナー企業とも協力しながら作成していて、クラブの強みを活かしたホームタウン活動になっています。
『ゼル塾』の教材はどのように作られているのか、どのような想いが込められているのか——。制作に携わった野村卓也さん(以下、野村)、野本倫央さん(以下、野本)、伊東祥明さん(以下、伊東)にお話を伺いました。
非日常的な状況をポジティブに!
ーー『ゼル塾』とはどのような取り組みですか?
野村)『ゼル塾』は、オンライン上からダウンロードして取り組むことができるFC町田ゼルビアが作成したオリジナル教材です。
算数はパートナー企業さんと協力し、学習指導要領に沿って作成しているので、学校での学習の予習や復習に活用したり、家庭で楽しみながら勉強したりすることもできます。
ーーいつでもどこでも取り組めるというのは、コロナ禍において重要ですね! この取り組みを始めたきっかけを教えてください。
野村)新型コロナの感染拡大によって、予定していたイベントが中止・延期されていく状況で、クラブとして何かできないか考えたことがきっかけです。何とかこの“非日常的な状況”を、クラブの力でポジティブに変えていきたいという想いがありました。
たくさんのアイデアを出し合い、話し合った結果、子どもたちの学習のサポートや家庭で楽しめる教材を作成することをスタッフで決めました。そして、学習教材を通してFC町田ゼルビアを身近に感じてもらうことができればホームタウン活動としても価値があると思い、スタートしました。
スタート時は“試行錯誤”の日々
ーークラブとサポーターに対する“熱い想い”が原動力になっているのですね! そうした想いはあっても、教材作成には苦労されませんでしたか?
野本)スタート時は正直、苦労の連続で試行錯誤の日々でした。ゼル塾のスタート時は全社員リモートで働いていた状態で、すべての作業を社員だけで行っていたので、特に大変だったのは題材を考えることでした。
僕たちは教育の専門家ではなく、何を題材にするべきか分かりませんでした。そこで、ネット上で参考になる教材を探したり、近くに住んでいるサポーターに教科書を借りたりするなど、できる限りのことを一人ひとりが行いました。
国語では選手の名前を書き取りする問題を作るなど、うまくクラブと絡めて教材を作りました。翌日に配信する予定の教材が、前日まで出来上がっていない状況だったことも正直ありましたね。そうした“苦労”と“試行錯誤”を重ねてゼル塾は進化してきました。
ーー『ゼル塾』に対するサポーターからの反応はいかがでしたか?
野村)僕たちのサポーターのあいだではTwitterが盛んでもあるので、スタート時には特にたくさんのリアクションをいただきました。ゼル塾を出す前の時期は特にイベントが無かったこともありますし、コロナ禍でイベントが制限されていたなかでも、サポーター同士の話のネタになっています。
野本)現在は、「ゼル塾スタンプカード」というものも実施しています。ホームゲーム時に取り組んだ教材をスタジアムに持ってきたら、スタンプが貯まり特別プレゼントがもらえるというものです。
教材を持ってきてくれるのは子どもたちだけでなく、生涯学習として取り組んでいるファン・サポーターもいらっしゃいます。多くの方が取り組んでくださっていることはとても嬉しいです。
『ゼル塾』×『パートナー企業』でお互いの“強み”を活かす
ーー算数の教材は、個別指導塾フォルテさんの監修の元で作成されているということですが、どのような経緯があったのですか?
伊東)企業さんとのマッチングイベントの際に、マッチングしたことがきっかけです。
代表の方がサッカー経験者だったので、ACフォルテさんの個別指導塾で培われてきた強みとサッカークラブであるFC町田ゼルビアの強みを活かすことができないかということで、お話させていただきました。
ーー専門家が入ったことでどのような点に変化を感じましたか?
伊東)一番大きく変わったことは、教材探しの部分です。自分たちは教育に関して素人なので、どういう教材を選ぶべきかにはとても悩んでいました。フォルテさんが教材を監修してくださったことによって、これまでの「算数を楽しく学ぶ」ことに加え、学習指導要領に沿ったことで学校の予習や復習にも活用できるようにバージョンアップしました。
野本)ほかにも、フォルテさん以外の企業や大学とも協力して、算数以外の教材もそれぞれの専門的な知識を活用して作成しています。
「夏休み特別編」では、パートナー企業・アシスト企業に取材し、SDGsや美味しい野菜の食べ方、親子で楽しむジャムづくりなどの教材を作成しました。こうして色々な方にご協力いただくことで、ゼル塾は進化を遂げています。
ーーこうした協賛はJクラブの新たなホームタウン活動の形だと感じます。クラブとしてはどのようにお考えですか?
伊東)これまでのサッカークラブへの協賛は、ユニフォームに名前を載せることやピッチ上に看板を出すということが中心でした。しかし、『ゼル塾』ではクラブの既存のものに、パートナー企業から専門的な知識を加えていただくという形での協賛をしていただきました。それぞれの“強み”を活かすという協賛の形は、理想的だと思っています。
野村)パートナー企業の方々には、ビジネス色を全面的に出すのではなく、あくまでも学習教材であるということをご理解いただいています。ここも非常に重要な点だと思います。こうした新たな形のホームタウン活動として、『ゼル塾」の取り組みはうまくいっていると自信を持って言えます。
“想い”は変えずに“新たなもの”を
――『ゼル塾』の今後について、どのように考えられていますか?
野村)「サポーターのために何かできないか?」と始まった『ゼル塾』は、さまざまなパートナー企業さんのご協力によってここまで進化させることができました。「クラブに関わってくださる方々のためにやっている」という当初からの“想い”は忘れないようにしたいです。
伊東)そのうえで、今あるコンテンツをさらに拡げていきたいです。「算数」は現在、奇数学年しか無いので、偶数学年分も作成し全学年が取り組めるようにしたいです。さらに、ゆくゆくは町田市の学校で正式なドリルとして採用され、より多くの子どもたちに取り組んでもらえれば嬉しいなと思います。
野本)この先もずっと『ゼル塾』を続けていくために、これまで大切にしてきた“想い”は変えず僕たちが進化していき、“新たなもの”を提供できるようにがんばります!
――ありがとうございました!