私たちの想い

【Vol.1】アートを生きる力に|~臨床美術についてお伝えします~

【編集担当からのメッセージ】
本サイトの新しいテーマの一つとして「臨床美術(クリニカルアート)」が加わります。
詳細は本文を読んでいただければわかりますが、認知症予防や発達障害をお持ちの子さまの「自尊心・自己肯定感の醸成」などにとても効果のあるプログラムとされています。
スポーツの感動やエネルギーが人々に多くの力・勇気を与えるのと同様に、アートの力も人の生きる力に多大な影響を持っています。
地域の中で、臨床美術を中心にして新たな「生きがい創造」に取り組まれる臨床美術士さんの活動レポートをこれから月1回の連載でお送りする予定です。

臨床美術について

臨床美術(クリニカルアート)は日本発祥のアートセラピーです。

上手も下手も関係ない、誰もが楽しみながら作品をつくることが出来きます。臨床美術士が臨床美術の独自のアートプログラムを実践して、クライアントの感性を引き出しながらその創作活動に寄り添います。クライアントの生きる意欲の創出に繋げていくことを目指します。

臨床美術は1996年に芸術家の金子健二氏により考案され、認知症を専門にしている脳外科医やファミリーカウンセラーとともに認知症状を改善するために開発されました。

現在は、脳の活性化などのエビデンスも進んできて、地方自治体等の介護予防事業や発達障がい児に対する教育活動、企業内のストレスケアなどへの普及が進んで来ています。

私が臨床美術を知ったのは友達との夕飯をしている時でした。元々幼稚園の教諭を天職のように感じながら仕事をした後、海外の大学で心理学を学び、卒業後、帰国してからは人材紹介という仕事に長年携わってきました。クライアント企業と登録者とコンサルタントがWin-Win-Winになるビジネスモデルが自分に合っていたのか、コンサルタントの仕事を経て事業部の責任者をしていました。

そんな折、自分の今後を考えるタイミングがあり、今後は、“高齢者&子供”に関わりながら社会貢献度の高い仕事に携わりたいと思い始めていました。ただ、具体的にどのような仕事が良いか分かりませんでした。その話を友人にすると、彼女のお姉さんがされている臨床美術士という仕事について教わりました。私は直感で「良さそう!」と感じました。

早速体験会に参加してみて衝撃を受けました。絵を描いたりすることが得意ではない私が、感じるがまま、あまり分からないままに作品を制作して、驚いたのは、出来あがった自分の作品を見て、とても恥かしくもあったのですが、心の中では「惚れ惚れ」としたのです。一緒に参加されていた他の方のどの作品を見ても、全て違ってとても素敵だと思いました。持ち帰った作品を部屋に飾ってずっと眺めていました。自己陶酔??不思議な体験でした。学校の美術の授業で感じた感覚とまるで違ったのです。

臨床美術_アート(2)

私が臨床美術の良いと思うところは(沢山あるのですが、、、)、まずは独自に開発されたアートプログラムとそのアートプログラムに沿ってセッションを進める臨床美術士の存在です。アートプログラムは、様々なテーマ、画材、素材、工程などが繰り返し試作検討されながら丁寧にかつ緻密に作られています。

臨床美術士がそのプログラムを熟知してセッションを進めるのですが、クライアントは、初めは戸惑いながらも最後には楽しみながら、「今」「ここ」に集中して、右脳を活性化しながらマインドフルな状態で、自分の感じるままに表現をしていくことが出来ます。臨床美術がセラピーと位置付けられる理由です。

セッションの最後に行われる鑑賞会もとても素敵な「場」になります。出来た作品を全て前に並べます。比較されたり評価されたりすることはありません。主に臨床美術士が作品の一つ一つについての独特な魅力について紹介します。皆の作品を並べてみるとどの作品も個性的で味わい深いものになっており、クライアントもそのことに気がつきます。「素敵な作品と思っていたら、実は自分の作品だった」ということも良くあります。そして、自分の作品も良いけれど他の人の作品も良いと感じるのです。

鑑賞会では、自分と他の人の感じ方がいかに違うかに驚くことになるのですが、どれも素晴らしい作品でお互いに褒め合い認め合う場が出来ます。臨床美術は自己肯定感やお互いの「違い」を認め、尊重しあうことが出来るグループでのセラピーにもなります。

以前、コ・アクティブコーチングを勉強していた時に学んだことですが、生まれたての赤ちゃんは全てのことに対応していける可能性を持っているとの事です。あらゆる言語、あらゆる気候にも対応できる生きる力を持っていますが、成長の過程で要らないものや苦手な経験をしたものは、そのボタンをオフにしていき、そのうちボタンが自分の中にあることを忘れてしまいます。そして、その事を自分には出来ないと思ってしまうのです。そこで、コーチはクライアントの持っている力を信じて、オフにされたボタンをオンにするサポートもするのだと学びました。

子どもの頃は誰もが楽しんでお絵かきをします。しかしそれも、「誰かに評価されたり比較されたりして、苦手意識が出来てしまうまでです。」
絵を描いたり物を作ったりして表現することは、元々人間が持っている生きる力の一つなのだと思います。

アートで表現することは心を癒します。そのプロセスも出来た作品も生きていく力になります。本来、人間の誰もが持っている力です。臨床美術により、そのアートの力をより伸ばせたり、オフになったボタンを再度オンにすることが出来るのです。そして、自分の生活をより豊かに、幸せを感じる感覚を持つことが出来るのだと思います。

生きる力は一つでも沢山ある方が良い!

今後も臨床美術の魅力について発信をしていきいと思います。
色々な方にぜひ一度体験をしてみて欲しいと思います。

—京都在住・アートひろばtomo主催 臨床美術士 Tomoko—

臨床美術
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