Sports for Socialでは、2021年「シャレン!(Jリーグ社会連携)」に取り組むJリーグクラブの「想い」を取り上げます。今回はジュビロ磐田の「ハザードマップの周知【ソナエル東海】」の活動。意外にもJクラブの57クラブ中、ホームタウン人口が2番目に少ないジュビロ磐田。行政との連携を密にとり、地域のシンボルとしてのジュビロ磐田を活かす方法をホームタウン部の加藤さんにお伺いしました。
©JUBILO IWATA
まずは地域の困りごとを解決
ーソナエル東海(東海地区の6つのJクラブが連携し、南海トラフ自信をはじめとしたあらゆる災害に備える連携:こちら)から、ジュビロ磐田さんとしてハザードマップの周知という今回のテーマに取り組まれたきっかけはなんだったのでしょうか?
加藤)ソナエル東海について、最初は6クラブ(清水エスパルス、ジュビロ磐田、藤枝MYFC、アスルクラロ沼津、名古屋グランパス、FC岐阜)で同じことをやろうという話になっていたのですが、やはり地域ごとにそれぞれ地形にも違いがあり、すべて同じことはできないなとなりました。ジュビロとして何ができるか、と考えたときに、自分たちクラブのみで考えるのではなく、まずは地域で困っていることは何なのか?ということで磐田市と防災についてお話しさせていただきました。その場で一番最初に出てきた課題が、「ハザードマップの周知」だったんです。
ーまず自治体と話をして、その課題にすぐに取り組まれたということですね。具体的にいま現在でいうとどのような取り組みをされているのでしょうか?
加藤)コロナ禍でなかなか前に進みにくい部分もありました。徐々に観客を入れはじめ、スタジアム見学に来られる子どもたちの記念品のシールの裏側に、ソナエル東海のLINE公式アカウント、磐田市と浜松市のハザードマップにアクセスできるQRコードを印刷して配布しています。別のホームタウン活動として、磐田市と浜松市を中心に幼稚園向けの運動教室をやっているのですが、そこでも配布させていただいています。帰ったらお父さんお母さんに見せてねと言って渡して。微力ですけれども広げていく活動はスタートしました。
ー子どもたちの反応はいかがですか?
加藤)そうですね。小学生の子どもたちには、裏面のQRコードでハザードマップを見ることができるんだよ、という説明をしながら渡しています。小学生でもしっかり聞いてくれますね。
老若男女すべての年代に、ハザードマップの周知を広げたいのはありますが、すべて網羅するのはすぐには難しいので、まずは子どもたちへというところから始めています。
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子どもをターゲットにする理由
ーまず子どもたちにというのは理由があるんですか?
加藤)いままでのホームタウン活動で子どもに関わる機会が多かったというのもあります。
ですが大きな理由としては、文科省が発表している「GIGAスクール構想」で、子どもたち1人1台のタブレット端末が使える環境が整備されるということがあります。
授業の場面で使うこともそうですが、学校以外のエリアに行ってもネット環境につながるとすれば、これを教育だけでなく災害対策に活かす手段があるのではと探っています。まだ実現していないこれからの話ですが、たとえば、電信柱に、海抜〇メートル、と書いてあってもあまりイメージできないところをタブレットを通して見ることで、津波が来た時にどこまで来るのかをリアルにイメージさせたり、避難経路についても具体的な対策にできるのではないかと思っています。
ー単純にハザードマップがタブレットで見れる!ではなくて、そこから避難の方法、避難場所への道案内をしてくれたりするようになるということですか?
加藤)そうです。なぜそうなったかというと、当然GIGAスクール構想のこともあったのですが、磐田市のハザードマップを見てみると、川沿いにすんでいる方と、山に近いところにすんでいる方など、磐田の中でも避難の方法が微妙に違うということがあります。事前に備える際に、磐田市全体のことを皆が知っていなきゃいけないとは思っていなくて、自分たちのところを知り、まずは自分たちが命を守れるように行動してほしい。日ごろからあっちが避難所なんだなとか、ここからの避難経路はこうなんだなとか、気軽にわかるといいなと思っています。
ータブレットの活用方法としてとてもいいですね!
加藤)ただ矢印が出るとかでは面白くないので、拡張現実(AR)を使えることが理想です。たとえば、ジュビロくんや磐田市のキャラクターのしっぺいくんが、避難経路はこっちだと指示してくれるとか、そういうのがあると子どもたちも興味を持ってくれるし、なかなか面白いんじゃないかなと思っています。まだ絵空事の域を出ていないので、実現に向けて自治体と話をしているところです。
『ジュビロをつかおう!』
ーちなみに、これまでのホームタウン活動もずっとやられてきて、今回はハザードマップというところなんですが、今までやってきた活動と比べて、今までと違うこと、新しいことってありますか?
加藤)今回の活動、というよりホームタウン活動全体として、Jリーグからの「Jリーグをつかおう!」というメッセージが出て変わったと思います。
いままでも行政の方とも一緒に取り組みをさせていただいていたのですが、彼らからすると「Jリーグクラブはハードルが高い、声をかけづらい」という印象もあったようなのです。ジュビロとして、Jリーグからの発信をきっかけに、磐田市の各部署のリーダークラスの方を50名ほど集めていただいてお話しする機会をいただきました。そこで「ジュビロをもっと使ってください」というお話ができ、そこから今まで以上に距離が縮まったと感じています。
ーなるほど。今回はそれでかなり距離が縮まって、行政さんともスムーズに取り組めた一例ということですね!
加藤)そうですね。いままで関わっていたスポーツ振興課以外の磐田市の違うセクションとも防災以外でもいろいろなことをやらせていただいています。
ジュビロ磐田では、日々ご支援頂いている静岡県西部地域の皆様の力に少しでもなれればと、特設サイト「#ジュビロをつかおう」を立ち上げました🤝💙
先の見通せない状況ではありますが、ジュビロファミリー全員で乗り越えていきましょう💪✨
▼店舗情報・掲載申込https://t.co/fO3EG7SdyG pic.twitter.com/qYlej5i0Go
— ジュビロ磐田 (@Jubiloiwata_YFC) April 30, 2020
人口が少ないからこそ
ー行政がいないとできないこともたくさんありますもんね。
加藤)実はジュビロ磐田は、ホームタウン人口がリーグ57クラブのうちの下から2番目なんですよ。各クラブ、ホームタウンというと鹿島アントラーズさんみたいに5つの市が一緒になってやっていたり、いろいろなスタイルがあります。磐田の場合だと、隣の浜松市や袋井市とは活動は一緒にやらせていただいてますが、ホームタウンとして登録できていないのが現状です。
ーホームタウン人口が少ないことでのメリットはありますか?
加藤)小さいながらにできること、というのもやはりあります。ここ10年くらい続けているのが、小学生一斉観戦という取り組みをしています。小学校5~6年生、だいたい2000人から2500人くらい(父兄まで入れると4000人くらい)が、年間のある1試合で一斉に観戦に来るんです。これは磐田市と磐田市教育委員会も関わっていて、実は授業の一環なんです。磐田の郷土愛づくりのひとつとして、磐田の象徴であるジュビロを観に行こうと。
このようなことは、人口が多くなくて、コンパクトであるからこそできることだと思っています。学校側も年中多くの行事があって忙しい中で、各学校の校長先生をはじめいろんな方々が関わっていただいてできているということがあります。
ージュビロさんだからこそできる部分ですね。
加藤)そうですね、小さい市だからこそ、というのもあります。2年前にホームタウン部ができてからは、より磐田市と密着して、そこから発信していくことを重視しています。
まずはどんな活動に対しても、皆さんに知っていただかないと協力することもできないだろうし、発信は非常に大事なことだと思っています。ジュビロとしての価値も上げていかないといけないと思っています。
今後も磐田市との連携で、障がい者サッカー大会や高齢者向けのウォーキングサッカーなど多くの取り組みをしていきたいと思っています。
ーありがとうございました!