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実はこんなにおもしろい!箱根駅伝のコース解説【6区~10区】

2024年で第100回を迎える箱根駅伝。多くのドラマを生んだ正月の風物詩です。
100年以上の歴史を”繋いできた”大会は、数えきれないほど多くの人が関わり、想いを繋ぎ、さまざまなことをもたらしました。
Sports for Socialでは、競技面のみならなず、想いを”繋いできた”人にフォーカスし、100年以上の歴史を紐解いていきます。

今回は6区~10区、復路のコース解説です。花の2区、山登りの5区などと比べて、少し地味な印象もある復路ですが、1区間ごとに勝負のポイント、みどころが満載です。箱根駅伝が好きな人なら是非コースの情報も少し詳しく押さえておきましょう。

1~5区の解説はこちら

法政大学
「しっかり考え、努力する」箱根駅伝のランナーを育てる伝統校監督の考えとは?Sports for Socialにおける『箱根駅伝“教育論”』連載の第1回は、法政大学の坪田智夫監督(以下、坪田)。選手としても箱根駅伝2区区間賞をはじめ、実業団選手としてニューイヤー駅伝6度の優勝、そして個人としても世界陸上に出場するなどの輝かしい実績を持つ坪田さんは、2012年からOBである法政大学の監督として指導の現場に立ち始めました。指導者のいなかった学生時代、なかなか結果が出ない中での王者からのアドバイス、それらの経験から今でも大切にする想いとは?...

区間説明

6区

20.8km<箱根・芦ノ湖→(芦之湯)→(恵明学園前)→(小涌園前)→(大平台)→(箱根湯本駅前)→小田原中継所>
区間記録<館澤亨次(東海大学)2020年・57分17秒>

6区”山下り”大平台の急カーブを平均時速25キロで駆け抜ける

7区

21.3km<小田原中継所→(二宮)→(大磯)→(国道134号)→平塚中継所>
区間記録<阿部弘輝(明治大学)2020年・1時間01分40秒>

7区小田原城下の隠れた優勝争いを左右する重要な区間

8区

21.4km<平塚中継所→(湘南大橋)→(茅ヶ崎)→(遊行寺坂)→戸塚中継所>
区間記録<小松陽平(東海大学)2019年・1時間03分49秒>

8区海風が鍵。平坦から遊行寺の坂が待ち構える

9区

23.1km<戸塚中継所→(権太坂)→(横浜駅前)→鶴見中継所>
区間記録<中村唯翔(青山学院大学)2022年・1時間07分15秒>

9区横浜駅前ではエースが仲間から給水を受取、最後の力をふり絞る

10区

23.0km<鶴見中継所→(六郷橋)→(蒲田・京急蒲田駅)→(大森)→(大井)→(新八ツ山橋)→(品川駅前)→(田町)→(中央通り)→東京・大手町 読売新聞ビル前>
区間記録<中倉啓敦(青山学院大学)2022年・1時間07分50秒>

10区日本橋を過ぎ、すぐに左折すると仲間が待つフィニッシュが待つ
早稲田大学
箱根の頂点から世界へ~世界を見据える早稲田大学・花田勝彦監督の想い~Sports for Socialでは、箱根駅伝に関わる指導者の“教育論”を深掘りしていきます。 第4回では早稲田大学競走部の花田勝彦駅伝監督(以下、花田)。創部1914年(大正13年)早稲田大学競走部は箱根駅伝に第1回大会(1920年)から出場しており、これまで99回の箱根駅伝のうち92回の出場回数を誇る言わずと知れた強豪校です。 在学時代に活躍した卒業生であり、オリンピック、世界陸上の代表経験もある花田さん。自身の経験を活かし、伝統ある早稲田の箱根駅伝、更にその先をも見据えた指導とは?...
名将が語る箱根駅伝~学生と寄り添い、“ともに”歩む東海大学・両角速監督の道~現役監督として箱根駅伝を制した中で唯一、都大路(高校生駅伝大会)を制しているのが、東海大学陸上競技部で駅伝監督を務める両角速さん(以下、両角)です。 東海大学、実業団を経て就任した佐久長聖高校では、駅伝部の立ち上げから全国制覇も果たした強豪に育て上げ、東京オリンピック男子マラソン代表の大迫傑選手など、数々の有名選手の恩師としても知られています。 自身の現役時代、高校の監督、大学の監督と、長年“駅伝”に携わってきた両角さんから見た『箱根駅伝』、そして教え子たちへの熱い想いに迫ります。...

各区間の見どころ

6区~より厳しい山下り~

芦ノ湖スタートから小田原中継所までの20.8kmを走る。この区間は「山下り」と呼ばれ、最初の4.5kmをのぼった後は急激な標高差840mの下り5区とは真逆の区間。

標高差840mの山下り

芦ノ湖をスタートして最初の4.5kmを登り切ると、残りの約16kmは標高差840mの山下り。選手たちは、最速100m14秒台というハイスピードでの下りを駆け下るが、これは平地の何倍もの負荷をかけるため、選手たちの脚力を削りとる難しい区間となっている。

残り3kmの緩やかな下り

残り3kmほどになると、徐々に下りが緩やかになる。しかしこの区間は、選手たちにとってはまるで上り坂に感じられるほど疲労がたまっているため、痙攣を引き起こすこともある。

極寒のスタート

高地からスタートするため、気温が低く、山中では降雪がみられることも。選手たちが長袖シャツのユニフォームを着用したり、アームウォーマーを併用したりして体温調節をする姿が見られる厳しい環境。

<Pick up!>

早朝からスタートするため、降雪の影響を一番受ける環境条件が厳しい区間。
第87回大会(2011年)には、2位を走る高野寛基(早稲田大)が凍結した路面で2回転倒。そのトラブルも乗り越え、区間2位。早稲田大の総合優勝にも貢献。

<第100回大会はどうなる!?>

伊藤蒼唯(駒澤大学)、武田和馬(法政大学)、佐竹勇樹(大東文化大学)ら前回大会の経験者らが順当に全体メンバーにエントリーされ、この区間での起用が濃厚。総合優勝、3位以内、シード圏内、どの順位を狙うにしてもこの6区、次の7区で遅れを取らないことが重要となる。

7区~復路の隠れたエース区間~

小田原中継所から平塚中継所までの21.3kmを走る。序盤に小刻みなアップダウンがある他は平坦なコースであり、全区間の中で最も走りやすいといわれる区間

気象条件との闘い

7区は、スタート当初は山から吹き降ろす冷気で冷え込むため、寒さに耐えなければならない選手が多い。しかし、太陽が高くなるにつれて気温も上がり、最も気温差が激しい区間。

小刻みなアップダウンがある区間

7区は、10区間中最も走りやすい区間とされているが、9km以降は小刻みなアップダウンがあり、選手たちの脚力を削る。

優勝争いを左右する重要な区間

かつては「つなぎ区間」と呼ばれ、走力があまり高くない選手が置かれることが多かった7区。2010年代以降は「復路の2区」として位置づけられ、7区に力のある選手を置くことが、優勝への鍵となっている。

<Pick up!>

ハーフマラソン日本記録保持者である小椋裕介(青山学院大)は、唯一4年連続で7区に出走。
第91回(2015年)大会と第92回大会(2016年)では、区間賞を獲得し、青山学院大の初優勝と2連覇に貢献。

<第100回大会はどうなる!?>

総合優勝のために、この区間が勝負の分かれ目。誰が走り、どういう走りを指示するのか、各校の指揮官の戦術が光る区間。
また、昨年この7区で区間賞を獲得した杉彩文海(明治大学)は、その前年までは箱根もメンバー外の選手だったが、この活躍を機にチームの“核”となる選手に成長した。今年も箱根駅伝を機にブレイクする選手が現れることが期待される。

8区~5区の登竜門~

平塚中継所から戸塚中継所までの21.4kmを走る。5区への登竜門であり、海風と急坂が立ちはだかる難しい区間

優勝やシード権争いのカギを握る

前半からタイム差を稼いでいくチームも多いが、後半の区間で逆転や順位を上げることができるため、優勝争いやシード権獲得のカギを握る区間となっている。

海風が鍵

8区のスタート地点である平塚から藤沢を経由し、鎌倉を通過する。この間の約10キロメートルは海沿いを走るため、選手たちは強い海風に直面する。風向きや強さによっては、集団の形成や単独走行の戦略が変わる。

遊行寺の坂

残り6キロ地点にある遊行寺坂は、8区の最大の難所。距離は約400メートルで、最大勾配は10%を超える。坂を駆け上がる力強いランナーは順位を上げることができるが、失速してしまう選手も多いため、タフな区間。

<Pick up!>

第73回大会(1997年)で古田哲弘(山梨学院大)が樹立した1時間04分05秒の区間新記録。
この記録は第95回大会(2019年)に小松陽平(東海大)が塗り替えるまで22年間破られることはなく、箱根駅伝の歴史の中でも最も長く残った区間記録。

<第100回大会はどうなる!?>

実は第95回大会(2019年)に小松陽平(東海大学)が塗り替えた区間記録は、現在の区間記録の中では10区間の中で最も古い記録になる。今年は駒澤大学を筆頭に選手層の厚い大学が8区にも力のある選手を置くことが予想され、区間記録の更新が期待される。

9区~松の9区~

戸塚中継所から鶴見中継所までの23.1kmを走る。序盤からアップダウンが連続するため、オーバーペース覚悟で突っ込むのか、力を溜めて入るのか、判断力と実行力が求められる区間

エースクラスが集う

9区は、「花の2区」と呼ばれる往路2区の裏返しであり、「松の9区」とも呼ばれる。各校のキャプテンないし準エースクラスが集うことが多く、エースランナー同士の激しい競り合いが期待される。

レースの大きなターニングポイントとなる区間

スタート直後の3キロの下りと、7キロすぎの「権太坂」が勝負を分けるポイント。そのため、優勝争いやシード権争いにおいて、大逆転の舞台になることも少なくない。

中継所での劇的なシーン

全中継所中、最も繰り上げスタートが発生しやすい。そのため、9区のランナーの目の前で10区のランナーが繰り上げスタートしてしまい、タスキをつなぐことができず涙する光景が幾度も見られる。過去最多の繰り上げは60回記念大会の18校。中継所の中でもっとも劇的なシーンが展開される区間。

<Pick up!>

第60回大会(1984年)では最多18校が繰り上げスタート。
復路繰り上げスタートを除き、繰り上げスタートがなく、全チームが襷を最後までつなぐことができたのは、直近では89回大会(2013年)。

<第100回大会はどうなる!?>

前回大会は、区間賞が岸本大紀(青山学院大学/当時4年)、区間2位が緒方貴典(創価大学/当時4年)、3位が山野力(駒澤大学/当時4年)と区間上位3位は4年生という結果に。岸本はエース、緒方と山野はチームのキャプテンと責任ある立場で、4年生の意地を見せた。今年も4年生が意地とプライドで区間上位に食い込むか。

10区~すべてが決まる~

鶴見中継所から大手町フィニッシュまでの23.0kmを走る。往路の2区と同様に、最も厳しい区間の一つであり、選手たちにとってのプレッシャーが最も高い区間

最後に待つ長距離区間

往路の2区に次いで2番目に長い区間。選手たちには、持久力とスタミナが求められ、難所である「六郷橋」や「新八ツ山橋」といった厳しいアップダウンを攻略するための技術的なスキルも必要。

重いプレッシャー

最終区間であり、フィニッシュまでの距離が残りわずかとなる区間。そのため、選手たちは自分のチームの勝利のために全力を尽くさなければならない。最終順位が決定するこの区間は、選手に想像できないほどの重いプレッシャーを与える。

熱狂的な応援

最終区間であり、フィニッシュ地点には多くの観客や大学の応援団が押し寄せる。選手たちは、熱狂的な応援に励まされ、そのエネルギーを利用して最後まで全力を尽くす。

<Pick up!>

第97回大会(2021年)最終10区で3分19秒差で首位に立っていた創価大を駒澤大が逆転。
最終10区で逆転総合優勝を飾ったのは、第77回大会(2001年)で順天堂大が駒澤大との17秒差を逆転して以来20年ぶりの出来事。

<第100回大会はどうなる!?>

今大会は記念大会のため、例年より3チーム多くエントリーされていることもあり、10000mで29分を切る選手が166人と過去最多に。加えて2年連続の駅伝3冠を狙う駒澤大学に引き離されないために各校往路から力のある選手を並べ、序盤からハイペースな展開になることが予測される。そのため最終10区では、総合記録の更新も期待できる区間になると当時に、シード権を狙うチームも増え、その争いが激しくなることも予想される。

箱根駅伝とは?
【3分解説】箱根駅伝とは?その歴史や楽しみ方を解説!箱根駅伝は、正式名称は「東京箱根間往復大学駅伝競走」で、年に一度1月2日と3日に開催されます。関東学生陸上競技連盟が主催し読売新聞社が共催し、全国大会ではなく"関東ローカル大会"である。東京都大手町の読売新聞東京本社ビル前をスタート地点にし、神奈川県箱根町の芦ノ湖をゴールとする、往路・復路の合計10区間217.1kmを走る競技です。 この記事では、その歴史や楽しみ方を紐解いていきます。...

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