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クラブの1/3を“社会性”に振り切る~久光モデルで目指す新しい社会課題解決のカタチ~

久光さん

がんを患い、闘病生活を続けながらも現役のフットサル選手として活動を続け、2020年12月惜しまれつつ亡くなった故・久光重貴さん。

そんな選手が在籍した湘南ベルマーレフットサルクラブは、事業戦略として『競技性』『事業性』『社会性』を掲げ、それぞれ1/3ずつのパワーをかけて取り組むことを発表しました。なかでも社会性は、久光さんを手本とする『久光モデル』を掲げ、「ヒサと共に」を合言葉に競技や地域を超えて活動し、支援の輪を広げています。クラブが目指す新しい社会課題解決の形について、代表取締役社長の佐藤伸也さん(以下、佐藤)にお話をお伺いしました。

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感謝を表し、まわりを巻き込める男「久光重貴」

ーーまず、「久光モデル」の原点である久光重貴さんについて教えてください。

佐藤)2008年から2020年まで湘南ベルマーレフットサルクラブに在籍した選手です。彼は病気になる以前から、特にピッチ外の立ち振る舞いで、礼儀礼節や感謝の気持ちを実際に言葉と行動で示し、憧れのアスリート像を体現してきた象徴的な選手でした。

彼の病気が発覚したとき、スタッフ陣も彼自身もかなりのショックを受けました。そんな中でも、アスリートを続けようと前向きなマインドに切り替えて、彼は「病気になったのが自分でよかった」と私に伝えてくれました。「僕を応援し、支えてくれる人がたくさんいる。病気になっても支えてくれる人がたくさんいるんだ」と。

久光故・久光重貴さん

佐藤)また、闘病生活を経て小児がんの子どもたち向けの活動も始めました。「サポートをしたい」と思えば、すぐに行動する彼の性格が表れていましたね。

久光のように『まわりに声をかけながら解決に向かう』姿勢や仕組みを私たちも引き継いでいきたいと考え、現在『久光モデル』を形作りました。他者の課題に対してまわりにも声をかけながら、みんなの課題にしていこうという姿勢は、クラブが引き継ぐべきものだと考えています。

ーー『久光モデル』は湘南ベルマーレフットサルクラブで具体的にどのように活用されていくのでしょうか?

佐藤)湘南ベルマーレフットサルクラブは、競技性・事業性・社会性の3本の柱を持って活動しています。このうち、社会性について久光モデルをベースに活動していきます。

固有のノウハウで対処するということではなく、“社会課題”をしっかりと見てまわりを巻き込み、それぞれの課題についてウィン・ウィンの関係で取り組もうと考えています。“社会課題”を出発点に取り組み、関係性をつくることで、地域とスポーツがより豊かになっていったら嬉しいですね。

ーー自分たちのためではなく、“社会課題”をしっかりと見ることは大切ですね。

佐藤)久光からの教えはスポンサー獲得の面でも活きています。私たちのスポンサー獲得は、同じ地域で昔からの知り合いだからスポンサーになる企業が多かったのが事実です。
その中で久光が取り組んだ小児がんの啓蒙活動に対するスポンサーは、エリアを飛び越えて広がっていきました。こうした広がりを目の当たりにした以上、私たちも活動の広がりという点は意識しなければいけませんよね。(笑)

スポンサーというだけでなく、社会課題に対する私たちの活動自体も地域や応援しているチームに関係なく広まってほしいです。

ベルマーレフットサルクラブ資料©2022 Shonan Bellmare Futsal Club. All Rights Reserved.

クラブの3分の1を“社会性”に振り切ると決めて

ーー湘南ベルマーレフットサルクラブの活動に対し、地域の企業の反応はいかがですか?

佐藤)スポーツが好きだとか、フットサルが面白いというより、一生懸命やっている若者の可能性を信じて応援・支援してくれている方々が多くいらっしゃいます。
湘南ベルマーレフットサルクラブは、良くなかった財務状況を直近5年間で地域企業の方々がみんなで盛り上げて独り立ちできる体制を整えてくれたという歴史があります。
2022年の4月に私が社長となり、今までのように単純に支援をしていただくのではなく、お役に立てるような形をしっかり作るべきだと思っています。

ーー地域の「お役に立てるような形」というと、どのようなイメージでしょうか?

佐藤)私たちは一生懸命プレーすることで地域を勇気づけたり、地域に貢献することを目的に活動していますが、「本当に必死でやっている姿を見たら、地域活性に繋がるのか?」という疑問がありました。
今の時代はとくに、地域や社会の課題が企業課題と連動していると感じています。こうした状況では、地域が元気で結束力があり、何か不都合があればみんなで力を合わせるような気概を維持する必要があります。
これは、私たちと地域の方々が望んでる姿と一致していると思いますので、クラブとして自信を持って活動することができていますね。

長期療養中の子どもたちの「味方」をつくる力に~湘南ベルマーレ『TEAMMATES』活動に込めた想い湘南ベルマーレでは、『NPO法人BeingALIVEJapan』が運営する、スポーツチームへの入団を通じて長期療養の自立を支援する『TEAMMATES』事業に、2019年から参画しています。Jクラブで初めてこの事業に取り組んだきっかけやクラブが大切にしていることは何なのかーー。...

ーー2022年5月に事業戦略を発表された段階から、少しずつ社会性の面でも進んできているように見受けられます。

佐藤)当初、事業戦略を定めたときにクラブの3分の1を社会課題解決に振り切ってやるということをスポンサーさんや後援会の方たちに伝えたときに、「収益化できるのか」と心配の声をいただきました。正直、私もはっきりとした答えが見つからないまま走り出しましたが、結果的にスポンサー獲得に繋がることを実感できています。
社会課題解決をどのように事業化していく上で、その場で直接的な収益に繋がることにはまだ難しさがあります。ですが、活動や姿勢を確実に評価していただいていると感じています。

『プロジェクト数』で企業を前のめりに

ーークラブの目標として、“社会課題解決のプロジェクト数”を置いています。その真意はどのようなところにあるのでしょうか?

佐藤)湘南ベルマーレフットサルクラブはスポーツ団体ですが、一般企業とも一緒です。だからこそ、取引先や株主、スポンサーに対して、一般企業が説明するような内容にしておくべきだと考えています。そうでないと、ただひたすら「毎年優勝狙います!」と言うことになります。「一緒にクラブを作りましょう」と声をかけており、その上では定量化した目的やロードマップを引くことで関係者の理解も進みます。

2022年に関しては、10個のプロジェクトを立ち上げると公言しました。日頃の会話で「いま5個プロジェクトがあり、あと5個の課題にチャレンジしたい」というと、企業側の捉え方も前向きになりますよね。また、5年後には160のプロジェクトを行うと宣言しています。普通じゃないと驚かれますが、そこに向けて動き出すという意味でも、重要な指標として捉えています。

ーー現状、社会課題解決へのクラブの動きでポジティブな面はどのようなところですか?

佐藤)企業の社会課題解決に対する感度は、かなり高いという実感が湧いています。また、ここに注力することで今まで以上に接点が非常に広がりました。競技の話ができる範囲には限界がありますが、地域課題には関心の高い方が多く、さまざまなアドバイスをいただいています。また、中間発表会で社会性について熱弁した後に商工会の会頭に呼ばれ、「いままではすぐスポンサーの話になるのではないかと思って紹介しづらかったけど、これならどんどん紹介できる」と言っていただきました。輪が広がってきていると感じますね。

ーー逆に、課題に感じることはありますか?

佐藤)今年1年は、「社会課題にチャレンジする!」と言い切って取り組んでいます。しかし、次年度からは関わるスタッフや選手たちにとって、クラブが成長している実感を持たせたり、財政面でも環境がよくなったと実感させなければいけないと感じています。継続させていくための具体的な施策についてはもっと模索していかなければいけないところです。

佐藤社長湘南ベルマーレフットサルクラブ 佐藤伸也さん

ホンモノのプロアスリートへ。選手たちに感じる変化

ーー地域の方々は、どのようにファンになっていくのでしょうか?

佐藤)「なぜ人々がスポーツを応援するのか」と考えたときに、“知っている人が全力を尽くしている姿を見る”という点は大きな要素の1つだと思っています。フットサルのようなマイナー競技だと、選手が人々にとって“知っている人”になる機会があまりありません。

選手たちはトレーニングの時間を割いてでも社会課題解決事業に積極的に乗り出していくべきだと考えています。そうすることで、地域や企業のお役に立つということを果たしつつ、確実に知っている人になることができます。社会課題解決の事業で出会った人たちが試合を見に来る、そして選手が全力を尽くして戦っている姿を見てファンになってもらえると、チケットの売上も上がり、お客さんも増えるというプラスのサイクルができます。
もしかしたら、知っている選手は試合に出ないかもしれません。そんな状況が続いたとしても、一瞬の活躍を見逃さないためにチケットを買って、会場に足を運んでくれるお客さんが実際にいらっしゃいます。これこそが、収益化に貢献する“プロのアスリート”だと私は思います。

ーー選手たちの反応はいかがですか?

佐藤)「社会性に対して3分の1のパワーをかけて取り組む」と話したときに、選手からは腑に落ちていないようなリアクションも多少ありました。それでも、「社会現場で活躍することこそ価値があって、競技の中でも上を目指して栄光を獲得することに人々は憧れるのではないか」と、私から話をしています。

なかなか言葉の説明だけで伝えることは難しいのですが、競技だけで社会的な価値を生み出すハードルは相当高いのも事実です。キャリアが終わってから「Fリーグで2年連続20点取りました!」と言っても、20点取ることと50点取ることの差がわからない人が大半です。
しかし、社会課題解決に関する事業への貢献は、説明をしたときに誰しもが評価してくれるものだと思います。その上で競技の説明をして、こんなことをしながらこんなミッションも達成しましたというレベルに行ってほしいですね。

今ではほぼ全員が積極的に参加してくれています。挙手制で参加を募るピッチ外のイベントについても、毎回全部埋まっています。今後も選手とともにいい活動をしていきたいですね。

ーーこれからの湘南ベルマーレフットサルクラブの活動にも注目ですね。お話ありがとうございました!

「Chance&Empowerment Special Day

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12/17(土)小田原アリーナにて開催されるFリーグ、湘南ベルマーレvsエスポラーダ北海道でクラブが取り組む社会課題解決プロジェクトを一挙にご紹介!

日本のアリーナスポーツとしては先陣を切って、声出し応援の検証も行われます!
https://www.bellmare-futsal.com/

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