「シスジェンダー」とは、性自認(自分の性をどのように認識するか)と生まれ持った性別が一致している人のことを指す言葉です。シスジェンダー(Cisgender)の「cis-」は、「こちら側の」を意味するラテン語の接頭辞で、シスジェンダーはトランスジェンダーの対義語として生まれました。
今回は、シスジェンダーという言葉が生まれた背景やシスジェンダーの社会的特権(シスジェンダー・プリビレッジ)について、簡単にわかりやすく解説していきます。
シスジェンダーとは
「シスジェンダー(Cisgender)」とは、性自認(自分の性をどのように認識するか)と生まれ持った性別が一致している人のことを指します。
例えば、生まれた時に身体が「男」と診断され、自分自身を「男性」だと思っている人は「シスジェンダー男性」、生まれた時の身体が「女」と診断され、自分自身を「女性」だと思っている人は「シスジェンダー女性」となります。
「シスジェンダー」という言葉は、性自認と生まれ持った性別が一致していない「トランスジェンダー」の対義語として生まれました。トランスジェンダーにのみ特別な言葉が当てられていると、「トランスジェンダーの人=普通ではない(アブノーマル)、トランスジェンダーではない人=普通(ノーマル)」という差別が生まれてしまう可能性があります。こういった事態を防ぐために、シスジェンダーという反対の意味の言葉が生まれました。
ヘテロセクシャルとの違い
「ヘテロセクシャル」とは、「異性を愛し、性的な欲求を持つ性的指向」という意味です。
「ヘテロセクシャル」は、シスジェンダーとともに耳にし、混同しがちな言葉ですが、シスジェンダーは「性自認(自分の性をどのように認識するか)」、ヘテロセクシュアルは、「性的指向(どんな性を好きになるか)」について指す言葉となります。
- 性自認と生まれ持った性別が一致し、異性を好きになる人:シスジェンダー・ヘテロセクシュアル
- 性自認と生まれ持った性別が一致している男性で、男性のみを好きになる人:シスジェンダーのゲイ
- 性自認と生まれ持った性別が一致している女性で、女性のみを好きになる人:シスジェンダーのレズビアン
- 性自認と生まれ持った性別が一致し、恋愛対象が男性・女性どちらも好きになる人:シスジェンダー・バイセクシャル
「性自認」と「性的指向」は別のものであるため、性自認と生まれ持った性別が一致しているシスジェンダーの人の中にも、さまざまな性的指向を持った人がいます。
シスジェンダー・プリビレッジとは
プリビレッジ(Privilege)とは英語で「社会的特権」という意味です。「シスジェンダー・プリビレッジ」とは、シスジェンダー(性自認と生まれ持った性別が一致している人)であることによって、職場や学校、社会生活などにおいてさまざまな場面で気づかぬうちに「生きやすい」状況が生まれていることを言います。
今の社会においてマジョリティ(多数派)であり、割合の多いシスジェンダーは、下記のようなシスジェンダー・プリビレッジを当たり前に捉えてしまいがちです。
- 自分の性自認が明らかになることを恐れて、病院に行けず、自分の健康が危ぶまれることがない
- 公衆トイレや更衣室を利用する時に、性別による区別を気にする必要がない
- 自分の性自認を公表することによって、家族や友人や会社などから不当な扱いを受けない
自分にとって「当たり前」が、他の誰かにとっては「当たり前」ではありません。シスジェンダー・プリビレッジを知り、マジョリティであるシスジェンダーが「当たり前」に享受している特権を見つめ直すことは、マイノリティの生きづらさを知ることにつながります。それが、すべての人が生きやすい社会づくりの一歩となります。
ぜひ一度考えたり、誰かと話す時間をとってみてはいかがでしょうか?