『ブレインストーミング(ブレスト)』とは、集団でアイデアを出し合うことで互いに刺激しあい、その場で創造的な発想を生むことを目的とした会議手法の1つです。もともとは集団発想法と言われており、複数の人数で行うことを想定されていますが、近年では1人でアイデア出しを行う行為もブレインストーミングと呼ばれます。今回は、ブレインストーミングの基本的な進め方や注意点、また便利なツールについても解説します。
ブレインストーミングとは
ブレインストーミングとは、1950年頃にアメリカで考案されたアイデアを発想するための会議手法です。過去には集団発想法とも言われ、複数人で行うことが想定されていましたが、近年では1人で実行してアイデアを出すこともブレンストーミングと呼ばれています。
ブレインストーミングのもたらす効果は、想定外のアイデアやクリエイティブな発想の創造です。ブレインストーミングでは基本的に複数人でアイデアを出し合うため、他者の考えを共有したりひとつのアイデアから連鎖反応が起きたりします。1人では考えつかないアイデアを発想できるのは、ブレインストーミングのもたらす大きな効果と言えるでしょう。
ブレインストーミングの基本的な進め方
もちろん、ブレインストーミングとは参加者が好き勝手にアイデアを言い合うことではありません。ここでは基本的な進め方として5つのステップを紹介します。
参加者を集める
ブレインストーミングでは参加者を集めるところからスタートします。その際には同じ背景の参加者ばかりでなく、異なった背景を持つ参加者も集うことが理想的です。年齢、性別、役職、経験など、あえて多様な参加者が集うことでさまざまな価値観のアイデアが出るように工夫しましょう。
課題(テーマ)と時間の確認
参加者がブレインストーミングする課題(テーマ)について、誤解なく理解できていることはとても大切です。もし、どれだけ異なった背景をもつ参加者が集まったとしても、課題(テーマ)が曖昧な場合、的外れなアイデアばかりでブレインストーミングの効果を十分に発揮することができません。
たとえば「売上アップするにはどうするべきか?」という課題の場合、「会社全体の話か、部門ごとの話か、商品ごとの話か」という解釈の余地が発生してしまいます。この課題であれば、「会社全体の売り上げを1年前の決算と比較して50%増加させるにはどうするべきか?」という方が誤解が生まれず望ましいでしょう。
また、ブレインストーミングの時間を定めていない場合、ついだらだらと関係のない話題に転じてしまうこともあります。参加者の時間を無駄にしないためにも、ブレインストーミングを行う時には時間を区切って進めましょう。
現状把握
会議の目的(テーマ)に関する現状をできる限り詳しく把握します。このとき現状について、主観的・定性的な意見だけでなく客観的・定量的な数値などの事実で示しましょう。最初に現状を客観的・定量的に捉えておくことで、ブレインストーミングでアイデアを出す際に話題がテーマの本質から逸れにくくなります。
アイデア出し
ブレインストーミングでは、この「アイデア出し」のステップがどれだけうまく機能するかがとても重要です。後述の「ブレインストーミングがうまくいくポイント」で詳しく説明しますが、次の5つを工夫して進めていきましょう。
- 心理的安全性のある場をつくる
- すぐに結論を出さない
- 拡散と収束をわける
- 質よりも量
- 意見を「見える化」する
アクションプランの設定
最後に、どれだけ良いアイデアが出たとしても行動に移さなければ現状は変わりません。参加者からアイデアが出てきた後に、アイデアを実現するためのアクションプランの設定に進みましょう。いくつかのアクションプランの中から最終的なものを選定する際には、それぞれ出てきたアクションプランの「効果」「実効しやすさ」「期間」など、いくつかの評価軸をもとに検討することで選定しやすくなるでしょう。
ブレインストーミングがうまくいくポイント
ブレインストーミングは、いくつかのポイントを押さえることで捗りやすくなります。ここでは5つのポイントを紹介します。
心理的安全性のある場をつくる
ブレインストーミングでは、まずたくさんのアイデアを参加者に出してもらうことが大切です。「本当に実現できるの?」と思うようなアイデアが発言されることもありますが、それを評価判断してはいけません。アイデアの内容ではなくアイデアを出してくれたことに対して、「ありがとう」など感謝の気持ちを伝えたり、笑顔でうなずいて承認するなどして、発言しやすい空気感をつくるように心掛けましょう。
すぐに結論を出さない
良さそうなアイデアが出たとしてもすぐに結論に向かうのは避けましょう。それよりもさらに良いアイデアがその後に出る可能性もありますし、ほかのアイデアと組み合わせることでさらに良いアイデアが生まれる可能性もあります。すぐに結論に向かわないためにも、アイデアを出す人とは別にブレインストーミングの進行役として、ファシリテーター役を設定するのもよいでしょう。
拡散と収束をわける
ブレインストーミングは、「参加者からアイデアを出してもらう拡散の時間」と「出てきた意見をまとめる収束の時間」にわけられます。うまくいかないブレインストーミングの多くの場合は、この拡散と収束が混在してしまい、参加者が今なにをする時間かわからなくなっていることがほとんどです。ファシリテーター役がいる場合は、今がどちらの時間であるのかを仕切ることで円滑に進みやすくなります。
質よりも量
アイデアを収束するためには、できるだけたくさんのアイデアが必要です。そのため、ブレインストーミングでは「質より量」を意識してどんどん発言しましょう。そのためにも先述の心理的安全性のある場をつくることがとても大切になります。
意見を「見える化」する
ブレインストーミングで出てきた意見を「見える化」しておくことはとても大切です。なぜなら、ブレインストーミングの最中はアイデアを出すことに集中しているため、出てきたアイデアを記憶しておくことに意識が向いておらずすぐに忘れてしまうからです。「見える化」する方法として、紙やホワイトボードなどに直接書き込むこともよいですが、収束する際に簡単に移動して整理できるように、1枚の付箋(ふせん)に1アイデアを書いて「見える化」しておくと便利でしょう。
ブレインストーミングを成功に導くツール
ブレインストーミングの基本的な進め方や注意点は以上となりますが、最後にブレインストーミングをさらに快適に進めるためのツールを2つ紹介します。
マインドマップ
マインドマップは思考や情報を整理する方法です。大きめの用紙やホワイトボード上にマインドマップを作成して、最初から出てきたアイデアを書き込んでいくと効率よく進めることができます。マインドマップの作り方として、テーマを中心に書き、出てきたアイデアを放物線状に関連付けて記入していくことで、文章ではなく単語で繋がりを図示していきましょう。マインドマップは、文章のみでまとめるのに比べてひと目で理解しやすく、ブレインストーミングの終盤でアイデアを結合させる時に役立ちます。ここでアイデアを組み合わせてテーマの問題解決を目指しましょう。
KJ法
「マインドマップでの整理がうまくできない」、そんな時はKJ法を活用してみましょう。マインドマップはアイデアの繋がりを視覚的に網羅するのに対し、KJ法はアイデアをグループ化して論理的にまとめていきます。KJ法は付箋(ふせん)や小さめの紙にアイデアを書き出して進めていきます。書き出したアイデアをグループごとに分けることで論理的に課題を明確にできるのが特徴ですが、論理的に進めすぎるためアイデアを出す場の空気感が重くなりやすい傾向にあります。KJ法を使うときにも、ファシリテーターが心理的安全性をつくり出すことで意見が出やすくなるでしょう。