味の素株式会社『ビクトリープロジェクト®』の1つとして取り組む、陸上・十種競技の右代啓祐選手(以下、右代)のサポートでは、栄養だけにとどまらず技術的・科学的なサポートも行ってきました。
そのチームの大きな特徴としてチーム全員が挙げるのが、その“コミュニケーション量”。合宿への帯同など、練習中の濃密な時間もさることながら、合宿中のミーティング、細かな報告とフィードバックなど多くのやり取りが行われています。
「右代選手を伸ばす」という共通の目的に対して、アスリートとともにどのようなコミュニケーションを取りながら進めていったのか?数々のアスリートとプロジェクトに取り組んできたチームリーダーの栗原秀文さん(以下、栗原)や、チームメンバーの石井和男さん(以下、石井)、三富陽介さん(以下、三富)、柿木克之さん(以下、柿木)のお話から、アスリートの目標達成のための“コミュニケーション”を考えてみます。
チームとしての成熟したコミュニケーション
時間さえ許せばずっと話し込んでしまうという『チーム啓祐』のメンバー。つねに振り返りをし、次のステップに進むにはどうすればいいかを考え、話し合い続けることが、このチームの進歩の大きな要因となっています。
石井)「いまからミーティングしますよ」という時間も重要ですが、なんでもない時間でも議論をし続けられるチームというのは強いと感じます。そうした会話の中で考えがまとまったり、自分ごとに落とし込むことができたり、いい影響になりますよね。もちろん選手それぞれに特徴があるので、右代選手の場合は、課題に対してこうした“会話によって改善点を見つけていく”作業が合っていたとも思いますが。
三富)こうした話し合いが長い時間、しっかりと行われることはスポーツの現場でもかなり珍しいことだと思いますが、チーム啓祐のように“対等に言える”関係性はすごく大事だと感じています。指導者と選手という関係性だと言いづらいことがあったり、近年はインターネットの情報などによって選手の方が知識が多くなってしまうような現象も耳にすることもあります。
ですが、このチームでは、お互いの専門領域を認め合い、みんなが思うことを土台に上げてから「なにが最善なのか?」と、一番の近道をチームで選択しています。その材料を皆が多く持っているので、ミーティングが長くなってしまうこともしばしばありますね。
右代啓祐という人間であればこそ
「30代中盤で、これだけまわりからいろいろ言われても立ち上がろうとする右代選手の人間性がすごい」とチームリーダーの栗原さんが言うように、話し合いではさまざまな意見が飛び交います。「右代啓祐をよくしたい」という想いは同一でありながら、課題を指摘するそのミーティングは、選手個人にとっては負担にもなるのではないかと考えてしまいます。
柿木)もちろんミーティングの中で、意見が食い違うこともありますが、右代選手のすごいところは、そうした中でも自分自身に向き合って冷静に考えることができるところではないかと思います。私が彼と同い年のときには、そのような対応はできなかったなと思いますね(笑)。何事にも一番大事な本質がわかっている素晴らしい人間だと思います。
三富)私は右代選手とは年齢が近いので、競技以外の話もたくさんします。年齢が上の栗原さんや石井さんには言いづらいことなどもあったりもするので(笑)、いい意味で抜きどころになっていると思います。
石井)本当に素直で人懐っこくて、憎めないやつですよね。彼が欲してるものがあれば全力で手伝ってあげたいと思わされます。
味の素がビクトリープロジェクト®︎でサポートする選手たちにも、こうしたコミュニケーションの部分での共通点があると栗原さんは言います。
栗原)私たちが選手と契約するときには「この選手を勝たせてあげたい」という想いで、選手側とも惹かれあって契約します。そうした相互の信頼がないと、“栄養”という1日3回以上の関わりがあり365日必要なものに関してしっかりサポートして、結果を残すことはできません。選手側も、そうした一番面倒な領域に向き合う思考やメンタリティを持っているからこそ、私たちとともに新たなストーリーが作れるのではないかと思っています。
日本のスポーツ界をもっとよくしていくためにも、アスリートのもつ本質的な価値を引き出してあげられるような関わりをしたいですね。
右代選手が繋ぐアメリカ~ビクトリープロジェクトの野望~
『チーム啓祐』での活動は、右代啓祐選手の記録を伸ばすというだけでなく、チーム側の知見やメンバーの夢も伸ばすことにつながっています。一番大きな右代選手による変化は、『ビクトリープロジェクト®︎』のアメリカ進出。栗原さんの長年の夢を近づけたのは、右代選手のもつ“人柄”でした。
栗原)“人間としての魅力がいかに大切か”ということを、右代選手と一緒にいてとても感じます。右代選手のまわりには世界中のアスリートが集まってくるんです。アメリカで大会に出たときも、若いアメリカ人選手が「憧れです」と近寄ってきたり、紹介されたロサンゼルスのコーチもビクトリープロジェクト®︎のアドバイザーになっていただきました。
私自身、将来的にこの『ビクトリープロジェクト®︎』を世界一のアスリートサポートと呼べるようにするために、アメリカで勝負できるようにしなければと思っています。そうした意味でも、右代選手のアメリカでの評価、人脈は私たちにとって非常にありがたいものですよね。「あの啓祐を支えたプロジェクト」として進出していけることは、今後の夢に近づく大きな第一歩になっています。
栗原)石井さん、三富さん、柿木さんなど、こうした専門的なメンバーとのチームを作り、右代選手のアウトプットを作っていくということも今回の取り組みの大きな価値です。
これまで私が見たことのない領域の数字がバンバン出てきて、トレーニングやメンテナンスなどの知識はとても増えました。自分にとっての自信にもつながっていますね。