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環境に配慮し、障がい者の就労支援にも~ヴァンフォーレ甲府「SDGsロゴ」タグ

ヴァンフォーレ甲府がこの夏限定で着用するユニフォームには、「ヴァンフォーレSDGs」というロゴが入ったタグが付けられています。
このタグは、ユニフォームが製造される過程で破棄される布の切れ端を使用。そして、タグの製作には、甲府市の就労支援事業所の方々が携わっています。クラブでSDGs推進を担当している前村幸樹さん(以下、前村)に、就労支援事業所への依頼のきっかけやその後の裏話などを伺いました。

タグによって「SDGs」を知る機会に

ーー今回の取り組みについて、簡単に教えてください。

前村)今シーズンヴァンフォーレ甲府では、夏季のホームゲーム3試合限定で、マスコットキャラクター「ヴァンくん」のモチーフである甲斐犬をコンセプトにした限定ユニフォームを製作しました。そこには、クラブがSDGsにより強く取り組んでいく事を表現すべくロゴが入ったタグを掲出しました。

このタグは、ユニフォームサプライヤー「ミズノ」様にご理解、ご協力いただき、ユニフォームの製造過程で捨てられている端材をアップサイクル(役に立たないものを、環境価値のある製品に変えること)しています。そして、このタグをユニフォームに付ける作業などを、就労支援事業所の皆さんに仕事としてお願いしました。

――「ヴァンフォーレSDGs」とロゴが入ったタグを付けることにしたのには、どのような経緯があったのですか?

前村)クラブでは今年4月、ホームタウン山梨県を持続可能な地域社会にするために『ヴァンフォーレSDGs宣言』を行いました。
山梨県では、SDGsの知名度は正直まだまだです。今回の夏季限定ユニフォームでは、黒いユニホームに白いロゴでサポーターの目を引き、より多くの県内の方々にSDGsというものを知る機会になってもらえれば嬉しいです。

働く機会の減った障がい者の就労支援に

――タグの製作作業を就労支援事業所にお願いしたのには、どのような理由があるのですか?

前村)新型コロナウイルスの影響もあり、障がいのある人たちが手がけた商品を販売するチャンスがなくなるなど、彼らの働く機会が失われているということを耳にしました。そのため、そうした事業所にいる方々にクラブとしてなにかお仕事を依頼できないかと考えていました。
そんなときに出てきたのが、今回の夏季限定ユニフォームのタグの製作・縫製という作業でした。どこの事業所に依頼をすればいいのかわからなかったのですが、選手やスタッフが経営危機にあった2000年から交流している「かえで支援学校」さんに相談させていただき、その後、甲府市の自立支援協議会さん、そこから甲府市にある各事業所さんにお声掛けをしていただきました。

ーーユニフォームの端材を使用することと、就労支援事務所に相談し仕事を依頼する、という2つの話を結びつけたのには、どのような考えがあったのですか?

前村)私たちは、イベント施策や企画では、取り組みの前に複数のターゲットを意識し、ストーリーをつくるようにしています。
新型コロナウイルスの影響で昨年はかえで支援学校に訪問できておらず、“関わりを途絶えさせたくない”という思いもありお声掛けをさせていただきました。各事業所にはかえで支援学校の卒業生がいることもあり、今回のお仕事を通して、卒業生が成長し、一生懸命頑張っている姿を見ることができて本当に良かったです。

「ヴァンフォーレの一部に携われるなら、ぜひ!」

ーー各就労支援事業所には、どのような内容を作業をお願いしたのですか?

前村)就労支援事業所さんにお願いしたのは、生地をサイズに「切る」、ミシンで「縫う」、ユニフォームに「圧着」という3つの作業です。
クラブとしては、できるだけ多くの方に参加していただきたいと考え、12の事業所さんに分担してお願いしました。分担した結果、1つの事業所さんに対して大きな売上になる仕事を与えられたわけではないのですが、どの事業所さんからもこちらが驚くほどの感謝をしていただきました。

ーー作業に携わった方からの反応はいかがでしたか?

前村)作業された方の中にはヴァンフォーレサポーターも多くいらっしゃり、計画段階から「ヴァンフォーレの一部に関わることができるなら、是非受けたい!」という声もありました。
そのようなモチベーションもあり、どの事業所さんでも本当に丁寧に作業していただきました。なかには、まっすぐ切れるようになるまで時間をかけて練習したり、「この生地にはこういう糸がいいんだよ」と糸を持ってきてくれたりする方もいて、思いを込めて製作にあたってくれました。

製作に携わってくださった方は「いい思い出になった」と言ってくださり、間接的ではありましたが、選手と繋がることができてよかったですし、初の試みで不安だったものの、取り組みを実施した甲斐がありました。

“お返し”として ブース出店と試合への招待も

――多くの方がヴァンフォーレとの取り組みに喜んでくれ、作業に携わってくれたのですね。これをきっかけに行ったことなどはありましたか?

前村)ユニフォームをすごく良いものに仕上げていただいたので「なにか“お返し”ができないか」と、各事業所さんが製作している商品のブース出店と試合への招待を行いました。
最初から考えていたものではなかったですが、各事業所さんのコロナ禍の現状を聞くなかで、少しでもクラブとして協力したいという思いを強く持っていた結果、このような形になりました。

試合当日はあいにくの雨になってしまったのですが、約70名の方に観戦していただきました。自分たちが作った「SDGsロゴ」のタグを、選手が着けて試合に臨んでいるをしてる姿を見てもらい、働きがいを感じていただけたのではないかと思います。

これまで試合を見たことなかったという方から「試合観戦をしてファンになりました。次は1ファンとして応援に来ます」という言葉をいただけて嬉しかったですね。

「任せていたら、苦労を知ることができなかった」

ーー今回は前村さんが、作業を依頼した多くの事業所を何度もご訪問されたと伺いました。

前村)作業の段階で、各事業所さんを1つずつ回らせていただき、お話を聞かせていただくなかで自立支援事業所への理解はすごく深まりましたね。
事業所の方々は、お願いしたことだけでなく、1人1人がすごく考えながらやられていて、強いこだわりを持ってやっていることを感じることができましたし、「仕事だから」という気持ちだけでなく、「選手」や「クラブ」を想い、良いモノをつくりあげるという気持ちをすごく感じました。

――前村さんが「手間」をかけてやったことで、クラブとして多くのものを得られたのではないでしょうか?

前村)圧着作業ではクラブスポンサー『GLITTER』様にご協力をいただきましたが、スポンサー様に全てご依頼をしていたら、事業所さんが置かれている状況も知らないままでしたし、Twitterなどの発信を通して伝えられることもありませんでした。

今回の活動について発信したことで、地域の皆さんからの反響があり、今後も僕自身もっと出来ることを考え、実行していかなければと感じました。
障がいの有無だけでなく、女の人も男の人も、お年寄りも子どもも、すべての人が支え合い、お互いの人権や尊厳を大切にし、誰しもが生き生きとした人生を送ることのできる「共生社会」をつくれればと思いますし、支える人と支えを受ける人が分かれることなく共に支え、様々な人々の能力が発揮されている活力ある社会を作れればと思います。

僕自身小さいころからヴァンフォーレっ子で、山梨県や地域にお返しがしたいとクラブに入社した身なので、もっと地域に恩返しを出来るようにがんばりたいですし、人と人の繋がりをつくり、地域のハブ(中心)になり、山梨県がもっと豊かにハッピーになれるようにがんばります!

ーーありがとうございました!

「SDGsロゴ」が入っている夏季限定ユニフォームを見ることができるのは、2021年9月4日(土)の京都サンガF.C.戦が最後。
ユニフォームにも注目して、試合をご覧ください!

写真提供=ヴァンフォーレ甲府

取材で感じた「横浜F・マリノスフトゥーロ」の未来2004年、Jクラブ初の知的障がい者サッカーチームとして結成された『横浜F・マリノスフトゥーロ』。 横浜F・マリノスと横浜市スポーツ協会、障がい者スポーツ施設である横浜ラポールの3団体が協力して運営され、中学1年生から51歳までの約80人が日々、汗を流しています。 そして2018年には、選抜チームが横浜市社会人リーグに参戦。健常者とも試合を重ねるなど、活躍の場を広げています。 8月下旬、私たちは練習場所を訪ね、宮下幹生総監督と芝崎啓コーチにお話を伺いながら練習を見学させてもらいました。...
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