ラグビートップリーグに所属するHonda HEATは、地元三重県鈴鹿市での『HEAT授業』を行っています。授業を先導する上村さん(以下、上村)、広報の中田さん(以下、中田)に詳しくお話を伺うと、そこには“本気”で生徒・地域と向き合い、選手とも向き合う、まさにチーム名の通りの“熱い”想いがありました。
【HEAT授業】
普及活動を行った小学校や幼稚園の子供達から選手へメッセージをたくさん頂きました👏
選手たちも嬉しそう🙌みなさんありがとうございます😊#HondaHEAT #RAISETHEHEAT #ラグビー @cnt1113 @kanta_nabe_ @kousukeEX @masabeats111 pic.twitter.com/PTbsW3jYxh— Honda HEAT (@hondaheat) November 19, 2019
子どもたちに最初にする話は『一流選手と二流選手の違い』
ー「HEAT授業」ではどのようなことを行っているのでしょうか?
上村)①思いっきり体を動かす活動、②タグラグビーでチームワークを学ぶ活動、③選手の夢を聴いてもらう「夢授業」という3つの活動をコンテンツとして取り組んでいます。
HEAT授業を始めるときには必ず“元気な挨拶”から始めています。選手が見本になり、笑顔で気持ちよい挨拶をすることによって、子どもたちと選手たちがスムーズに仲良くなれるんですよね。
①や②の授業では、子どもたちと選手を混ぜたチームを組み、ラグビーボールを使ったゲームなどで競い合う中で、どうやったら勝てるかということを話し合い、工夫して勝つ喜び、負ける悔しさを実感してもらっています。
©Honda HEAT
ー「HEAT授業」の歴史、きっかけはどのようなものなのでしょうか?
上村)地域との関わりはもう10年以上になります。その頃から、ラグビーの楽しさを伝える普及活動の一環として「タグラグビー」をやっていました。私が担当するようになった3年前からは、子どもたちに気づきを与える場をより多く設けたほうがいいのではないかと思い、先ほどの3つの活動まで発展させました。大事にしていて、常に一番最初に言うのが、『一流選手と二流選手の違い』です。二流選手は負けてヘラヘラと笑い誤魔化す、一流選手は悔しがり何をすれば勝てるのかを考え行動する。「本気にならなあかん」というところから入って、1コンテンツの45分間、生徒も選手も私も本気で向き合います。
ー「本気」というキーワードは、スポーツチームが小学校で行う授業ではあまり聞かないのかなと思いますが、どのような想いがありますか?
上村)やはり「本気になっていない子」が多いと感じているところです。子どもだけではなく大人も含め、本気で遊んで楽しむということは、人の成長にとって一番大事だと思っています。スポーツ選手もそうですが、ヘラヘラしている人は絶対成長しません。ふざける時としっかりやるときのメリハリをつけて、「単なる遊びじゃない」と伝えるようにしています。
ー教育委員会さんとガッチリとタッグを組まれたのも上村さんがご担当になってからと伺っています。そのきっかけや、一緒にやって変わったことはありますか?
上村)教育委員会の方が最近のHEAT授業を観に来られたときに、ハッとされたというお話を伺いました。私も以前はHonda HEATのコーチをやっていたので、ラグビーのトップの選手を指導するときと同様に、子どもたちに対しても『どうやったら上手くいくかを考える・目標を提示させる・それにどう向かえば良いのかを考える』ということを念頭に置いています。
それを見た教育委員会さんからも「教育者の指導にとってもすごく良い」という話をいただきました。
©Honda HEAT
選手の質も上がる相乗効果
ーほかに特徴的なことはありますか?
上村)実は「HEAT授業」のコンテンツは希望選択型なんです。毎回同じものを実施するのではなく、応募いただいた先生方に「どういう子どもたちですか?」「どういう目標にしましょうか?」などと様々な話し合いを行い、1番良い授業内容を提案していく形をとっています。ただラグビーやるだけではなくて、「相手側は何を期待しているのか」を大切にしています。
ー参加されている選手たちの反応はいかがですか?
上村)選手たちには授業に行く前のミーティングで目的・目標を伝え、「本気の授業をやろう」と話しています。選手も本気で向き合い、プレー同様に目標を達成するための状況判断をすることを求めています。「どうしたらいいんですか」と聞いてきた瞬間に選手には怒っていますね。私に怒られた選手には子どもたちが優しく接してくれていて助かります。(笑)
ー参加されて、選手たちはどのように変化しましたか?
上村)自立していきますね。子どもたちから見られているということで、しっかりしていく感じはします。「夢授業」をやった選手は特に、「有言実行しなければならない」という気持ちになり、普段の生活から含めてレベルが上がっていくように感じています。
中田)私は現在はスタッフ側ですが、選手時代にもHEAT授業に参加しています。その立場から言うと、「地域活動の質が上がることによって選手の質も上がっていく」という相乗効果のようなものを感じています。
自分が選手のころと比べると、HEAT授業のコンテンツの質が上がったことで、プレー面でハードワークできる選手も非常に多くなったと思います。
そして、選手時代の私のように、活動を楽しんで取り組む選手の割合がすごく増えてきたのを感じます。
上村さんのように指導してくれる人が横にいて、子どもたちと接する機会をもらえる状況は、選手自身にとっても人間力を鍛えられている印象があります。
©Honda HEAT
『普及活動は切り離せないもの』
ーラグビーチーム、及び企業のチームとしてなにか意識していることはありますか?
中田)自分たちは2021年シーズントップリーグに所属して、企業スポーツとして活動させてもらう中で、自分たちがラグビーを通じてどのように社会に貢献できるのか、企業ブランドの向上やトップリーグの価値をどのように高くしていくのかということを意識してやってきました。その点においてやはり普及活動は切り離せないものだと思っています。
次の新リーグに向けて、リーグが掲げているSDGsに絡めた活動や、HEAT授業に限らず、ビーチクリーン活動などにも参加していきたいと考えています。母体となるHonda自体が大きな会社でもあるので、会社が進めている社会貢献活動にも自分たちは最大限貢献していきたいと思います。
ー「社会性」という点も新リーグには求められていくと伺っていますが、その点を踏まえて今後どのようなチームになっていきたいですか?
上村)地域に頼りにされるチーム・誇れるチームになっていきたいと思います。「HEATさんが来たら笑顔になれる」「何か楽しいことをしてくれる」と思ってほしいですね。イベントの中でも最大限工夫するので、それをもっと広げて、多くの方々に認めてもらえたらと思っています。
©Honda HEAT
これからのHEAT授業、ラグビー界としての今後
ー今回お話をお伺いする中で、非常に教育的観点での想いが深いと感じました。
上村)人間は、いつ気づくか、というところに尽きると考えています。ラグビーでも、いつ気づいていいプレーヤーになれるか、というところが存分にあると思っています。そのために選手たちにもいろいろ刺激を与えて、少しでも成長してほしい、と考えています。子どもたちにも同様ですね。
中田)私は広報という立場として、所属するメンバーの意思を周囲にうまく伝えていくことが自分の役割だと思っています。普及を担当する上村が、「普及活動は教育の観点を持ってやっていくべきだ」という考えなので、それがHonda HEATの普及活動としてあるべき姿なんだと理解していますし、その魅力が最大限伝わるような工法を頑張っていきたいと思います。
ーラグビー界全体として、社会貢献活動に関して思われるところはありますか?
中田)2019年のワールドカップがあって、ラグビーの価値が世の中に証明されたかなと実感しています。Honda HEATとしては、三重県唯一のトップリーグチームになるので、三重県が盛り上がるか盛り上がらないは自分たちにかかっている自覚はありますね。トップリーグでは関東にチームが多いのですが、日本全国でプレーするリーグとして、日本全体をラグビーでもっともっと明るくしていけるような活動をどんどんやっていきたいです。
ーありがとうございました!
©Honda HEAT