プロ野球チーム北海道日本ハムファイターズが、他競技の若い地元アスリートをクラウドファンディングによって支援する「ファイターズクラウドファンディング~be Ambitious〜」。
昨年開催された東京オリンピックのスケートボード(パーク)で銀メダルを獲得した開心那(ひらきここな)選手など、4名の道産子アスリートがこのプロジェクトにより、北海道から世界へと翔ばたきました。
クラウドファンディングを通じて、若いアスリートを支援・応援し、新たな繋がりをつくりたいーー。
このプロジェクトを起案・担当した北海道日本ハムファイターズの 石川 拓道(たくみ)様(以下、石川)に、同プロジェクトに対する想いや、目指す「Sports Community」の形について伺いました。
若いアスリートを純粋に支援したい
ーーこのプロジェクトの取り組みについて教えてください。
石川)「~be Ambitious~」という副題にもあるように、未来に大志を抱く北海道の若いアスリートを支援する『スポーツ人材育成型クラウドファンディング』です。2021年5月にこのプロジェクトは一旦終了したのですが、当時はプロ野球球団初となる、「他競技の地元アスリートを支援する」というファンとの“共創型”のプロジェクトです。
スキージャンプの渡邉 陽(みなみ)選手、ビリヤードの 平口結貴(ゆうき)選手、スケートボードの開 心那(ひらき ここな)選手、アルペンスキーの中川 慎(しん)選手の計4選手の支援をさせていただきました。
ーー本当に広く他競技のアスリートの方を支援されているのですね!球団が、このように他競技のアスリートを支援するという取り組みは、とても珍しいと思いました。
石川)そうですね。野球は、恵まれた環境で練習をすることが出来ています。しかし、他競技のアスリートは、資金面や環境面で苦労しているということを知り合いから聞いたり、ネットなどを見て知りました。そこで、競技に関係なく、純粋にアスリートの育成を支援したいと思ったのがきっかけです。
他競技のアスリートの悩みを知る
ーーなるほど。支援を必要としているアスリートには具体的にどのような苦労や悩みがあったのですか?
石川)遠征費が一番大きな課題でした。トップの選手になると連盟から遠征費が出るので、資金のことを気にすることなく、積極的に海外遠征に行くことができます。しかし、強化指定から外れてしまうと、自ら資金を捻出しないと海外遠征に行くことが出来ません。
そのため、海外遠征を断念してしまう選手も少なくはないそうです。そうすると、国際大会で獲得できるポイントが貯まらないので、トップに上がることが出来ず、連盟からの支援も受けられないというジレンマがあるという話を聞きました。
今回の冬季オリンピックに出場していたスキージャンプの中村直幹(なかむら なおき)
選手ですら、大学卒業後には、所属先が見つからずに自ら起業し、選手として競技を続けていました。これを聞いて、私はとても厳しい世界だと感じました。
ーー挑戦する“機会”に差が生まれてしまっていたのですね。この課題を解決するために、クラウドファンディングという手段を選択された理由を教えてください。
石川)このプロジェクトを始める前に、私自身もクラウドファンディングでアスリートを支援した経験がありました。その時に、支援したアスリートにとても“親近感”がわき、その後もずっと応援していました。このように、クラウドファンディングで支援したアスリートとは、支援した後も繋がりが続きます。
さらに、北海道内を中心に161もの後援会を持ち、全国的にも知名度があるファイターズの発信力を活かすことで、ファイターズのファンと他競技のアスリートやそのファンとのこれまでに無かった出会いや繋がりをつくることが出来ると思いました。
これは、ファイターズが大切にしている「Sports Community」の実現に繋がり、若いアスリートの支援にも繋がります。
クラウドファンディングで生まれる“Community”
ーーこのプロジェクトの中で嬉しかったことはありましたか?
石川)クラウドファンディング第3弾の開心那(ひらきここな)選手が、2021年の東京オリンピックで銀メダルを獲得しました。銀メダルが決まった瞬間は、自分のことのように嬉しかったです。おそらく他の支援者の方も、自分が支援した選手の活躍を自分のことのように喜んでくれていたと思います。これは、クラウドファンディングならではの価値のひとつだと思います。こうした志の高い他競技のアスリートと関わる機会が出来たのは、貴重な経験になりました。
ーーなるほど。親近感がわくことで応援にも熱が入りますね!
このクラウドファンディングがきっかけで、さらに 繋がりが広がったことはありますか?
石川)第1弾の渡邉 陽(みなみ)選手は、このプロジェクトが縁で、ファイターズが毎年開催している「激励会」というイベントに花束贈呈のプレゼンターとして招待しました。そこで、標茶町の後援会長さんと出会い、連絡先を交換しました。その後、渡邉選手が大学卒業後の就職先が見つからず苦労されていた際に、渡邉選手からその後援会長さんに熱意を伝えたところ、その後援会長が経営する会社への就職が決まりました。これにより、渡邉選手は大学卒業後も競技を続けることが出来ました。現在161団体あるファイターズの後援会の一つと繋がって、一人のアスリートが卒業後も競技を継続できたというのは、とてもうれしい話でした。
「スポーツ自体が好き」を増やす
ーーこうした、クラウドファンディングは「支えるスポーツ」の一つの取り組みだと思います。そこで、ファイターズが「支えるスポーツ」に取り組んでいく中で大切にしていることはありますか?
石川)私たちは普段、ファンの皆様に支えられているので、非常におこがましいですが、自分たちの力で支えるというよりかは、ファイターズが持つ高い“発信力”を活かして、ファンの皆さんを巻き込んで、「北海道のスポーツを支えていきたい」と思っています。これもファイターズが目指す『支えるスポーツ』の一つの形ではないかと思っています。
ーーなるほど。北海道内に160近くの後援会を持つファイターズだからこそ出来る「支えるスポーツ」の形ですね。
石川)そうですね。後援会の方々と球団が、ともに同じゴールを目指していく仲間として、“対等”な関係でコミュニケーションを取っていくということは、とても大切にしています。
ーーまさに、「BIGBOSS」新庄剛志監督がおっしゃる「ファンは宝物」ですね。
石川)はい!
ーーそれでは、最後に今後目指していきたい「Sports Community」について教えてください。
石川)今後は、このクラウドファンディングのように若いアスリートを支援することや、他競技のクラブと共同でスポーツ教室などのイベントを増やしていきたいです。
このような取り組みによって、何のスポーツが好きというよりかは、「スポーツ自体が好き!」という方を増やしていきたいと思っています。“スポーツ自体が好きな人”が増えると、スポーツをする機会も増えていきます。そして、北海道の子どもたちの体力テストの記録が向上したり、健康寿命が伸びていくことに繋がっていきます。
このように、ファイターズが起点となって、北海道の皆さんをスポーツを通じて元気にしていくことで、ファイターズが企業理念に掲げる「Sports Community」の実現を目指していきたいです。
ーーありがとうございました。今後もファイターズさんの「Sports Community」の実現に向けた取り組みに注目させていただきます!