CO2削減、カーボンニュートラル、脱炭素・・・。
地球環境における温暖化問題について、「取り組まなければならない」と多くの人々が理解している一方、「なにをどう取り組めばいいのか?」わからない人が多数いるのも事実です。
そんな中、スポーツチームが取り組む脱炭素プロジェクトは注目を集めています。スポーツ観戦のシーンで発生するCO2を可視化し、そのオフセットにも取り組むことで、この難しい問題をスポーツファンにより身近に感じさせることができます。
なかでもよりエンターテインメント要素の強いバスケットボールリーグ・Bリーグ。アルバルク東京が挑むカーボンオフセットには、より広く、そして本質的な想いが隠されています。そんな取り組みについて、アルバルク東京SRグループ浅野英朗マネージャー(以下、浅野)にお話を伺いました。
アルバルク東京 カーボンニュートラルアクションbyTOYOTA
ALVARK Willとして目指すもの
ーーアルバルク東京では『ALVARK Will』として社会的責任活動に取り組まれています。
浅野)『SDGs』や『カーボンニュートラル』という言葉が、ここ数年であたりまえのように産業界でも耳にするようになりました。私たちアルバルク東京では、SR(Social Responsibility)という部署を作り、『スポーツ×SR』という点で実績を重ねてきました。そのことで多くの方々から少しずつ注目いただけるようになってきたと思います。
ーー『ALVARK Will』が目指してるものは何でしょうか?
浅野)私たちが取り組む『ALVARK Will』の社会的責任活動の基準として、「アルバルクの事業継続のために」ということが一番大きいです。私たちが新アリーナを建設する東京・青海は、海が近くて海抜が低い、地球温暖化での海水面上昇の影響を受ける地域です。そうなると、もしかしたら20〜30年後には事業継続が難しくなる可能性があります。
また東京オリンピック・パラリンピックの際も話題になりましたが、東京湾は多くの河川の出口ということもあり、海水面上昇だけでなく、水質による臭いに関しても問題が表面化する可能性があります。こうしたことを、自分ごととして取り組む必要があると思います。
ーー自力でできることは限られていますからね。
浅野)そうですね。スポーツの力を利用していろいろな方にご協力をいただいて、少しでも大きな活動になっていくように取り組んでいます。そうしないとバスケットボールどころではない状況になるかもしれないという危機感も持っています。
『環境』を重要視して
ーーアルバルク東京の社会的責任活動の特徴はどのようなものなのでしょうか?
浅野)正直、まだ特徴と言い切れるものはないと思っています。ホームアリーナも、今シーズンから立川市から渋谷区・代々木に移り、そして2025年には江東区青海に移ります。スポーツクラブとして珍しい状況ですが、多くの地域と連携をしながら、バスケットボールを活かした人々の健康面やダイバーシティの部分にも取り組んでいきたいと考えています。
「アルバルク東京ってバスケットボールのチームだよね」というだけでなく、「バスケットは知らないけど社会的責任活動をしているアルバルク東京なら知っている」と言われるくらいになりたいですね。
ーーそんな中で、アルバルク東京さんは気候変動枠組条例への署名など、環境面での活動に力を入れている印象です。
浅野)クラブとして、昨年は国連の「スポーツ気候行動枠組み」に署名しました。今シーズンは、ホームゲームでその点に注力をしていきたいと思っています。具体的には、アルバルクが事業を行う上で排出しているCO2の測定と、ホームゲームを行うことで発生するすべてのCO2をオフセットすることを目玉に取り組んでいきます。
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ーー環境問題に力を入れるのにはどのような背景があるのでしょうか?
浅野)私たちアルバルク東京の前身がトヨタ自動車男子バスケットボール部であるということも影響しています。トヨタ自動車は、2035年までに世界の自社工場でCO2の排出量を実質ゼロにする目標を掲げています。「トヨタのクラブ」というイメージもあるアルバルク東京としても、目に見える環境への取り組みをすることが重要だと思っています。
今シーズン中に、トヨタ自動車が保有している水素燃料電池バス『Moving e』を使って会場電力の一部を水素電源で賄うことも実現したいと考えています。
こうしたクラブとしての取り組みも、選手やクラブを利用して発信し、ファンや地域の皆さんに届けたいと思っています。(2023年1月7日、8日、11日のホームゲームで実施)
ーートヨタ自動車さんだけでなく、『ALVARK Will』のパートナーとしての企業も増えていますね。企業はどのようなことを期待しているのでしょうか?
浅野)「発信力」と「活動」だと思っています。パートナー企業のなかには、SDGsに取り組みたいが、いざ活動しようとしてもハードルがある企業もいらっしゃいます。
『ALVARK Will』を使って、一緒に活動をする、そして一緒に発信することを提案させてもらっています。
移動も含めたカーボンオフセットの実現を
ーー今回のカーボンオフセットの取り組みについて教えてください。
浅野)昨シーズンから、試合会場で使う電力・ガスのエネルギーに関わる部分のオフセットに取り組んでいるクラブはBリーグのなかでも存在します。ですが、アルバルク東京ではお客様やスタッフの移動、グッズの製造や輸送、販売廃棄によって排出するCO2にも着目しました。
当然、こうした計測は素人の力ではできませんので、e-dash株式会社のシステムを用いてCO2排出量の算出と可視化を行ない、CO2削減に向けてアプローチをしていきます。
ーー範囲の広がりや全ホームゲームでのオフセットということで、相当大きな取り組みになりそうですね。
浅野)そうですね。オフセットする金額も大きくなることが予想されています。だからこそ、市況に応じてしっかりとストーリー性を持って支援先を結び付けていきたいと思っています。
ーー今回、観客の移動にかかるCO2も計測するということで、ご来場いただける方々にも脱炭素の問題を考えるキッカケになりそうですね。
浅野)環境に優しく作られているグッズの方が売れるようになったり、移動手段を考えていただいたり、普段の生活にまで落とし込んでくれたりするようになると嬉しいですね。こうして全体で考えてみると、お客さんの移動が非常に大きなCO2排出の割合を占めることがわかっています。先ほど紹介したトヨタ自動車の『Moving e』を利用したり、「今日は少し歩いてきたよ!」などの声が聞こえるようになっていくといいですね。
ーーありがとうございました!
記事内の画像提供:アルバルク東京
『CARBON NEUTRAL ACTION』の一環として、1月7日、8日、11日のホームゲームでは水素について楽しく学ぶ!「トヨタミライクイズ」、Moving e展示×会場電力の供給を行いました!(HPはこちら)
『Moving e 給電システム』は、トヨタとHondaで両社の技術を持ち寄り、トヨタ燃料電池バスにHondaの可搬型外部給電器、可搬型バッテリーを組み合わせています。災害時には電気のバケツリレー方式で、電気を小分けにして手軽に運び、避難所等へ届けることが可能になっています。