プロ野球・千葉ロッテマリーンズが2017年から始めた「ALL for CHIBA」。
2022年で30周年を迎えるマリーンズと千葉との歩み。「私たちのファンに、地元・千葉の良さを感じてもらえる絶好の機会」と担当者が話すこのイベントでは、その魅力をどのように伝えているのでしょうか。
千葉ロッテマリーンズが「地元千葉のために戦う日」を取材しました。
「地域に還元することは使命」
千葉ロッテマリーンズの本拠地「ZOZOマリンスタジアム」。選手のプレーに拍手が湧くスタンドを見ると、通常の白を基調にした黒ストライプ柄のユニフォームの中に“サンライズレッド”のユニフォームを着たファンの姿が目立ちます。
チーバくんの“赤”と、球団が千葉に移転した当時のチームカラー“サンライズピンク”を掛け合わせた色の「CHIBAユニフォーム」で、胸には「chiba」の文字も入る、千葉のためのユニフォームです。
「ALL for CHIBA」は、千葉ロッテと「フレンドシップシティ・プログラム協定」を結んだ県内12市(千葉市、鴨川市、市川市、市原市、浦安市、柏市、佐倉市、袖ケ浦市、習志野市、成田市、船橋市、茂原市)の魅力を発信。千葉ロッテの担当者は、「千葉にある球団として、地域に還元することは使命です」と語ります。
イベントで実施される各市ごとの企画は「それぞれの市の特色が出ているので、その市に住んでいる人ではなくても、イベントを楽しんでもらえる」(担当者)ものになっています。
「市外の人にアピールできるチャンス」
9月29日。大事なオリックスとの首位攻防戦を前に、「ALL for CHIBA 成田市」として、成田空港があることでも有名な成田市のイベントが行われました。
球場の外にある特設エリアで成田市の職員らが配っていたのは「甘芋ん(あま〜いもん)」。成田市特産のさつま芋「クイックスイート」を使用した干し芋で、250個限定で無料配布されました。
自身も配布をしていた成田市役所シティプロモーション部スポーツ振興課の土屋陽花さんは、「行列に並んでいる方が予想以上に多い!」と驚き、予定の10分前に配布を始めました。
土屋さんは、入庁した3年前からこのイベントに携わり、今年から主な担当に。この日の試合は注目カードだったこともあり、「多くの人の目に触れる機会で、市外の方に成田市をアピールできるチャンスは嬉しいです!」と笑顔を見せました。
イベントでは2019年まで、市内の学校が試合前に国歌斉唱を披露していたものの、新型コロナの感染拡大の影響で中止。
コロナ禍でも地域の良さを発揮するにはどうすれば良いかを考え、2020年から特産物の配布を始めました。「農協の方々も特産物をお届けできることを喜んでいらっしゃって、これからも推進していきたいです。」と土屋さん。「想定よりも多くのお客さんに集まっていただき、早く配布が終了してしまいました。次回以降はより多くの人に届くようにしたいです!」と振り返りました。
うなりくんも成田市長もアピール!
さらに、成田市のマスコットキャラクター「うなりくん」の公式ツイッターでも、和菓子の詰め合わせと「うなりくん」ぬいぐるみがもらえる企画を実施。
アカウントのフォローとリツイートが応募の条件で、リツイートは試合開始までに900を超え、「昨年よりも大きな反響」(土屋さん)がありました。
配布に先立ち、「ボールパークステージ」には、千葉ロッテのマスコット「マーくん」と「うなりくん」が登場しました。途中で立ち寄った小泉一成・成田市長は「がんばれ!」と激励。2体(⁉︎)のお茶目なパフォーマンスに「かわいい〜」「こっち向いて!」と、カメラを向けるファンから黄色い声が聞かれました。
マーです、今日はALL for CHIBA成田市でした。
始球式に東京五輪体操金メダリストの橋本大輝選手が来てくれました!!
金メダル、持たせてもらうとずっしりと重みがあって感動!!
これからの活躍も期待しています!!うなりくんも久しぶりに会えて嬉しかったです!うな。#chibalotte pic.twitter.com/Y0ShXUSzfP
— マーくん(千葉ロッテマリーンズ) (@chibalotte_mar) September 29, 2021
試合前には、成田市出身で東京オリンピックの体操・個人総合と種目別鉄棒の2冠に輝いた橋本大輝さんが始球式を行いました。
橋本さんは、首から金メダルを下げ、選手たちと同じ“サンライズレッド”のユニフォームに身を包んでマウンドに登場。
投げ終えた後には歓声が起き、千葉ロッテの井口資仁監督からは花束が贈られました。
取材を終えて
千葉ロッテが「地元千葉県のために戦う日」と力を込める「ALL for CHIBA」を取材しました。
野球に限らずプロスポーツは地元に支えられてこそ成り立つものです。「(市と球団が)お互いに課題を解決し合う関係を築けている」という球団担当者のこの言葉に象徴されるように、こうした場は、片方だけでなく、市にも球団にもメリットをもたらすものであると感じました。
球団は2022年、千葉に移転してから30年目を迎えます。自治体が地域の振興を進めるうえで、多くの人を惹きつけるスポーツの役割は大きくなるでしょう。スポーツチームが地域に積極的に関わることの大切さを肌で感じた1日でした。(大森遥都)