バレーボール

バレーボールは大きな“スポーツ産業”へ!SVリーグ徹底解剖!|大河正明チェアマンインタビュー

2024年10月。ついに日本の新しいバレーボールリーグ『SVリーグ』が開幕します。
これまで長い歴史の中、日本代表は大きな人気を誇ってきたバレーボール。今度はリーグとして、チームとして、そして各地域の盛り上がりも作っていきます。

そんな新リーグ・SVリーグ開幕とともにバレーボール界はどのように発展していくのか?
一般社団法人SVリーグ 代表理事であり、チェアマンとして新しいリーグを引っ張るのは、Jリーグ常務理事、Bリーグチェアマン、びわこ成蹊スポーツ大学学長などの経歴を持つ大河正明氏(以下、大河)。新リーグの展望、そして地域・社会貢献とバレーボール界の想いにインタビューを通して迫ります。

JICAモンゴル
やりたいことは変わらない。JICAで得られる経験が私の人生にもたらすもの〜JICA × Sports for Social vol.6~2015年にJICA・青年海外協力隊員としてモンゴルに派遣された青木伶奈さん(以下、青木)は、大学まではバレーボール、大学院では研究に打ち込み、大学院卒業後に協力隊員としての道を選びます。体育教師になりたいという当初の想いから、なぜ協力隊員を選んだのか?また、その後広告代理店に就職し、スポーツマーケティング部門で活躍することになる青木さんが、モンゴルで学び、感じてきた価値とはどんなものだったのでしょうか?...

バレーボールの持つ可能性とは?ほかのスポーツとの違い

ーーついに『SVリーグ』が開幕します!大河チェアマンは、バレーボールの魅力や競技の持つ可能性について、どのように感じていますか?

大河)バレーボールという競技の特徴は、男女ともに人気のスポーツであることと、“東洋の魔女”以来、長く日本人に親しまれているスポーツであることだと思っています。私のような世代からすると、男子は野球、女子はバレーボールを応援するようなイメージが長くあります。
いまでもバレーボール日本代表は、男女ともにスポーツ界の中でも大きなコンテンツです。石川祐希選手や高橋藍選手などの人気選手も多く輩出し、地上波のテレビで放送するので一般的な知名度もあります。『SVリーグ』がスタートする今は、そうした環境を踏まえると変革のチャンスであると捉えていますし、ここで変わり切れなかったら今後も難しい、最後のチャンスだという覚悟も持っています。

ーー多くの日本人が知っていて、代表の人気もあるというポテンシャルを持つバレーボール。育成年代の競技人口が多いことも魅力ですよね。そんなバレーボール界を“変える”と言われましたが、どのような点がこれまでの課題だと考えているのでしょうか?

大河)バレーボールリーグの産業化が大きな課題です。Vリーグとしてやってきた時代も、産業化ということを大きく掲げて動いていました。しかし、バスケットボールでBリーグが始まり、それまで人気のあったバレーボールが“抜かれて”しまったという感覚をいまでは持っています。

SVリーグ写真提供:SV.LEAGUE

ーー同じアリーナスポーツである男子バスケットボール『Bリーグ』は『SVリーグ』にとっても1つの目標・指標になるのでしょうか?

大河)まだまだバレーボール界には、自分たちは代表人気もあるしバスケットボールより上だと思っている人もいますが、そんなことはありません。ですが、Bリーグのすべてを真似しようとも思いません。いいところをしっかり取り入れつつ、日本のアリーナスポーツにおけるリーダースポーツであるバスケットボールを参考にしながら、バレーボールらしい色が出せればいいなと思います。

ーーバレーボールにある良い部分、特徴はどのようなところにありますか?

大河)まず1つは、女子の人気が男子と変わらず高いことですね。また、ASEANの国々でも人気が高いスポーツであることも大きな特徴です。フィリピンやインドネシア、タイなど、“バレーボールを観る文化”が育っている国もあります。
漫画『ハイキュー!!』が各国で人気が高いことも要因としてはありますが、リーグとしてはASEANでの放映権、協賛パートナー募集など、そうしたところに打って出ていけるポテンシャルをもっていると思っていますし、しっかりと狙っていきたいです。

日本の男子代表はアジアでもアイドル的な扱いをされるほどの人気です。女子でも、タイ代表はかなりレベルが高い。SVリーグの公式戦を海外で興行したり、バレーボール教室などの海外進出を考えたときに、日本代表の試合を見たり、日本を応援してるような文化がASEAN諸国にあることは非常に大きいです。

SVリーグ写真提供:SV.LEAGUE

目指すものができれば中身が変わる。SVリーグが示す“スポーツ産業”としての成長

ーー『SVリーグ』では、クラブライセンス制度が設けられ、それぞれのクラブが売上や観客動員数、アリーナなどの基準をクリアしようと取り組んでいます。

大河)Jリーグ、Bリーグでもライセンス制度に私自身関わってきましたが、ライセンスはふるい落とすための制度ではありません。その競技がサステナブルに成長していくために、備えておかなければならない要件が書いてある“要件書”だと私は考えています。その指標を見ながらチームを作っていけば、自然とSVリーグ・Vリーグに入れるチームをつくることができます。
なので、ライセンスでは財務や施設の要件だけではなく、人事・組織について、法務についても触れている部分があります。この制度をしっかりと守り、高いハードルを越えていく先に夢や明るい未来が待っていると考えています。

ーーバレーボール界は、そうした意味では各チームの産業的な成長スピードはBリーグなどと比べても緩やかであったように感じます。こうした要因はどういったところにあるのでしょうか?

大河)バレーボールやラグビーなど、企業の部活動としてのチームが支えてきた競技は、チーム自体が“コストセンター”だと考えられていることが、成長スピードを緩めている要因だと考えています。
それを稼げるチーム、“プロフィットセンター”にしていくことを考えると、外部の人材を積極的に登用したり、SNSでの発信や地域貢献活動などにも力を入れるように変わっていきます。

正直、現状では人気選手がいれば人気が出る、出ていけば人気がなくなってしまう、ということが起こりかねません。もちろんそうした選手の人気を起爆材として活用することも必要ですが、そうならないために一生懸命に地域と向き合い、コミュニケーションを取っていくことが必要です。すぐには観客動員に繋がらない、難しい作業かもしれませんが、チームを応援する固定ファンを増やすという意味では必要な作業なので、もともとある競技の人気・選手の人気を活かしながら地域貢献活動などを通じて地道にファンを増やすことも、どちらも取り組んでいくべきですね。

SVリーグ写真提供:SV.LEAGUE

社会貢献活動がスポーツチームに必要な理由

ーーSVリーグ構想を打ち出してから、そうした地域貢献・社会貢献への各チームの意識の変化をどう感じていますか?

大河)もちろんそれまでも各チーム取り組んでいたことだと思います。しかし、それは“企業のCSRに繋がること”という枠を大きく超えていないようにも感じていました。

NBAのオールスターに視察に行った際、何十億もの年俸をもらうスタープレーヤーたちが開催地の子どもたちや地域の人たちのために、バスケットボールを教えたり奉仕活動をしている様子を見ました。『NBA CARES』と呼ばれるこの活動の「目的は何なのか?」とNBA職員に聞くと、「マネタイズだ」とハッキリ答えていました。

ストレートすぎる表現かもしれませんが、こうした人々に勇気や元気を与える活動が、NBAのブランディングに繋がり、ファンやパートナーの獲得に繋がるということを明確に意識していたのです。日本もまだまだこれからですが、地域貢献活動に対してそうした意識をもっと持つべきだと思いますし、とくに大きな企業がついているチームが多いバレーボールでは、企業側のブランディングにも繋がる武器になり得ます。

ーーそうしたチーム側の理解、そして企業側の理解は非常に大事なところですね。各チームの地域貢献活動に対して、リーグ側からアプローチすることはあるのでしょうか?

大河)7月の組織改編で、チェアマン室という部署をつくりました。そこは、Jリーグにおける『シャレン!』のような活動を各チームに広めていくことも1つの目的としています。先程も申したように、地域貢献活動は集客に繋がります。チームとしてしっかりと稼いでいこうと思うアクションとして地域貢献活動は重要なものになりますし、リーグからもチームの活動が活性化するような仕掛けをしていこうと考えています。

野球が好きでない人も、甲子園で自分の出身県のチームをなぜか応援してしまいますよね。スポーツの持つ“郷土愛をつくる力”のようなものにも、期待しています。

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企業スポーツはポテンシャル抜群。これからのバレーボール界はどうなるのか?

ーーバレーボールもそのスポーツ自体の人気から考えると、地域のアイデンティティをつくる存在になり得ますよね。

大河)「地域のために」という想いから、しっかりとどうチームの利益に帰ってくるかというところも考えながらやっていきたいですね。健康寿命の増進や介護予防、女性の社会進出など、できることは多岐に渡ります。

バレーボールの世界はまだ無限の荒野です。「テレビで見たことはあるけど、会場で観たことはない」という方はたくさんいますので、そういった方に観ていただけるようにアプローチしていかないといけません。そうした接点を増やす意味での地域貢献活動は非常に効果があるので、各チームがどんどん動いてほしいですし、リーグからも影響力を発揮していきたいと思います。

ーー今後、バレーボール界をどのようにしたいという展望はありますか?

大河)バレーボールを応援する文化を作っていきたいですね。いままで企業の部活動というチームが多くいたリーグなので、成功事例が出てくると他のチームもそれに倣って取り組むところは多いのではないかと思っています。

加えて、バレーボール界だけでなくスポーツビジネスで活躍できる人材を増やし、バレーボールチームがもっとビジネス界から見て「投資したい」と思われる対象になるような魅力を作っていきたいです。何度も言いますが、チームとしてのコンテンツ力を上げていくために“地域貢献”はそのための大きな活動です。

ーーSVリーグに、ファンとしてどのような期待を持てばいいですか?

大河)SVリーグの“S”は、Strong(ストロング)、Spread(スプレッド)、Social(ソーシャル)の3つの意味を持っています。「強く・広く・社会とつなぐ」ことがSVリーグのミッションであり、立ち上げた理由です。

SVリーグをプラットフォームとして、地域に密着したチームとともにバレーボールを応援する文化を創っていきます。世界レベルを意識した競技力のアップとともに、地域に密着しながらファンを増やそうとするチーム・リーグの想いを是非実際に観てほしいですし、楽しんでほしいと思います。

ーーありがとうございました。

 

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