水泳

パラ選手の泳ぎの改善にも!|水の抵抗を極限まで抑えるYAMAMOTOの技術とは?

山本化学工業

「スピードを体感することで、能力が伸びる。」

さまざまなスポーツにおいて、用具の性能は切っても切り離せないものであり、用具の進化によって発展していくスポーツもあります。
水泳においても、かつて“水着の性能”に大きな注目が集まった時代もありました。ウェットスーツ素材世界No.1シェアを持つ山本化学工業では、そのゴム素材を活かした“練習用の”水着『ゼロポジション』シリーズを開発しています。最先端の技術が詰まったその製品の効果について、お話を伺いました。

オリンピックからウルトラマンまで!?山本化学工業の多岐にわたる石灰石ゴムの応用従来の石油ではなく、石灰石からゴムを生産している山本化学工業株式会社。 前回は、従来の8.5倍の費用をかけてでも石灰石を使用する理由と、山本化学工業が考える企業×SDGsについてご紹介しました。 この石灰石から生産されたゴムをどのように応用し、どのように社会に役立てているのか。 第2回では、様々な分野で製品を展開している山本化学工業の、開発へのこだわりについてお話を伺います。...

ポジションをしみこませるための練習用水着

ーー今回は“練習用水着”である『ゼロポジション』シリーズについてお話を伺いますが、試合で着用する水着とはどのような違いがあるのでしょうか?

山本)水泳の公式試合で着用する水着は、現行のルールは基本的に繊維素材でできた水着で、FINA(世界水泳連盟)の公認が必要です。以前、2000年代のオリンピックや世界大会では、首から下すべてを全身を覆う水着の選手が優勝したり、ゴムや樹脂パネルを使用した性能の高い水着を着用した選手が結果を出していましたが、現在はルール変更により「水着による差が出にくい」ものになっています。

ーーそうした理由で、山本化学工業さんが作るウェットスーツ素材を活用した“ゴム”の水着は、練習用になるわけですね。練習で活用する上で、どのような効果があるのでしょうか?

山本)私たちのゴム素材を使うことによって、着用部分には浮力が生まれます。「太ももにビート板を付けている」ような状態になり、下半身が持ち上がった状態をキープすることが容易にできるようになるのです。
どんなトップアスリートでも、長時間泳ぐと疲れてしまい、下半身が沈んできてしまいます。すると、水の抵抗が増えてスピードが遅くなってしまうのですが、この『ゼロポジション』を履いて練習し、常に“下半身が持ち上がった”状態をキープすることで、不思議なことに体がその姿勢を記憶し、綺麗なフォームで泳ぎ続けることができるようになり、試合でもタイムが上がるようになるのです。

ゼロポジションSCS

ーー「姿勢を体で覚える」ということができる水着なのですね!速いスピードで泳げると、“スピードを体で覚える”効果もありそうですね。

山本)そうですね。水着の素材自体も、水の抵抗が極めて低いものになっています。もともと低かった弊社製品から比べても85分の1まで減らすことができました。イメージとしては、イルカのような海洋生物の皮膚に近い素材を身につけている感覚です。速いスピードで泳ぐ感覚を覚えることにも役立てていただいています。

ーー世界シェアのある山本化学工業のウェットスーツ素材が使われていると思うと、素材への信頼は抜群ですね!

アウトドア用品の中でNo.1評価!AURORA素材の秘密

ーー同時に発売された『ゼロポジション AURORA』。まばゆい発色が特徴の商品です。

山本)AURORA素材は、空気中と水中で発色が変わる技術を用いた、機能性もファッション性も優れた素材として販売しています。

ドイツで行われている『ISPO』という、スポーツ用品やアウトドア製品など多くのメーカーが出展する展示会において、総合第1位の評価をいただきました。

ISPO受賞

ーー世界的に有名な、名だたるメーカーの製品を抑えての1位と伺いました。

山本)展示会に出展した400社以上エントリーした中での1位でしたので、私たちとしてもとても誇らしく思っています。そうしたこともあり、AURORA素材は世界中のさまざまな企業に提供しています。とても目立つデザインなので、各社が自社製品のプロモーション用として活用しています。

ーーたしかに、一般の方が着用するにはなかなか勇気がいるかもしれません。

山本)『ゼロポジション SCS』と機能としては同じですので、目立たないカラーをご希望の方はそちらをおすすめしています(笑)。

ゼロポジションAURORA

お客様の要望に合わせた技術開発

ーー山本化学工業さんは、創業以来その“技術力”で勝負してきた企業ですよね。こうした技術はどのようにして生まれているのでしょうか?

山本)私たちの売上の多くは、素材としてウェットスーツメーカーに卸しているものになります。新しい技術の開発については、あらゆるメーカーやエンドユーザーとの繋がりのなかで、「こういうものがほしい」というご要望をいただくことがきっかけになります。ご要望に合わせた機能をつけるために、新しい技術の開発が進んでいきます。

ーーそうなのですね!ユーザーの要望を叶えていくことは、作りたいものを作る開発よりもとても大変なことのように感じます。

山本)もちろん大変ですが、“お客様の声がある”ということは、その先に大きな需要があると思って取り組んでいます。自社で「これはいいだろう!」と思って作ったものの中には、ハズレてしまったものもたくさんあります(笑)。

ーー今回の『ゼロポジション』シリーズは、どのような声から始まったのでしょうか?

山本)もともと、「リハビリで水中歩行をされる方が歩きやすくなるように、浮力をつけた水着を開発してほしい」という要望から始まりました。実は最初は、足だけでなく腕にもつける水着を同時に販売していて、リハビリでの使用に特化した形で販売していたのです。

しかし、そこから「浮力がある=泳ぎやすい」という点で口コミが広がっていき、泳ぐことが苦手な方にも好んで使用いただけるようになりました。「体力をつけるためにジムのプールで泳ぎたい、だけど泳ぐのが苦手」という方が購入されることが多くなり、こども用サイズなどの展開も増やしていきました。

ーーたしかに、泳ぎが苦手な方だと腰が落ちてしまうことも多いですよね。トップアスリートやパラアスリートなども活用いただいていると伺いました。

山本)パラ水泳のアスリートでは、トップレベルの選手にも練習で活用していただいていました。ある女性選手は左右の腕の長さが異なり、バランスが取りづらいため、まっすぐ泳ぐことが苦手でした。しかし、この『ゼロポジション』を使用することで、足でキックすることを中心に、下半身の力で泳ぐ方法にシフトし、世界大会でも結果を出すことができました。

ーー素晴らしいですね!用具の力によって、“体で覚える”ことが世界レベルで実現されているのですね。

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「泳ぎが苦手」など、スポーツの動きを改善したい方へ

ーー今回の新商品の『ゼロポジション SCS』は、どのような方に着用してほしいですか?

山本)水泳が苦手でハードルを感じている方や、さらにタイムを伸ばしたいと考えているアスリートや一般の愛好者に是非この『ゼロポジション』で、“体で覚える感覚”を体感してほしいなと思っています。

弊社では、水泳だけでなく、さまざまなスポーツにおける悩みを解決する製品を開発しており、ウェットスーツのゴム素材として世界中の企業に使っていただいている技術を活用した製品が数多くあります。体幹を鍛えて骨盤の歪みを矯正するベルトは、ゴルフやテニスなどあらゆるスポーツ選手に活用いただいていますし、熱を発するシートは、怪我予防や怪我の回復においてサッカー選手に活用いただいています。

モノづくりですべての人が健康に過ごせる社会へ。医療・健康分野にも挑戦する山本化学工業のいまと未来石灰石からつくったゴムを応用し、多岐にわたり挑戦を続ける山本化学工業。 その中でも現在は特に、医療・健康増進分野に力を入れています。 近年この分野では、健康への意識の低さや、高齢化などの問題を抱えています。 第3回の記事では、医療・健康分野における山本化学工業の関わり方をご紹介します。技術力にも注目しながら是非ご覧ください。...

私たちはウェットスーツ素材を開発し続け、長年『ヤマモト』のスーツを愛用している方々が日本中に、世界中にたくさんいます。さらに、化石燃料と言われる石油を使わず、石灰石を使った素材で作っているのは弊社だけです。日本の海女さんなど、長時間ウェットスーツを着用する人たちにも愛用されている『ヤマモト』の製品が、水着などに形を変えてさまざまなスポーツ愛好家の方々の助けになれれば嬉しいです。

ーーありがとうございました!

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