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関心を持ち、危機感をもつことで、自分が見えてくる。ボルネオ保全トラスト・ジャパン 理事 中西宣夫さんを直撃取材!-vol10-

Sports for Socialでは、サラヤ株式会社(以下、サラヤ)の社会貢献活動と想いを紹介する連載を掲載しています。

ヤシノミ洗剤の原料のひとつであるパーム油の生産地、ボルネオの自然や動植物の保護活動をしている「ボルネオ保全トラスト・ジャパン」理事を務められている中西宣夫さんのインタビューを3回に分けてお届けします。

最終回となる今回は、中西さんとボルネオ保全トラスト・ジャパンの現在と今後の活動について紹介します。

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現地ツアーと保全プロジェクト

年間業務の中でも中西さんが重要と位置づけるものに、プロジェクト地訪問のツアー企画と同行、現地の方々との交流があるそうです。

昨年(2019年)に行われたツアーでは、メディアの方々を案内するものや環境省主催ツアー、サラヤ社内の現地視察ツアーなどに携われました。

その他にも、ボランティアの方と現地へ赴き、現地の住民や研究者とともに様々なプロジェクトにも関わっています。昨年から始まったのが「サイチョウ保全プロジェクト」。

サイチョウとは、東南アジアの熱帯雨林に生息する鳥で、くちばしの上に「カスク」と呼ばれる突起を持っていることが特徴です。カスクは「赤い象牙」とも呼ばれ、中国の新興富裕層の間で人気が高まったことから需要が増加。その結果、大量に殺されてしまい、絶滅の危機に瀕しています。

これらの事業の助成金申請業務や、情報収集も重要な業務の一つと考えて活動されているそうです。

今までボルネオの中でも主にサバ州を始めとするマレーシア領で活動をされてきた中西さん。昨年、ボルネオ島のインドネシア側の地域の市民団体とともに活動調査を行ったことから、インドネシア側でも活動を広げていきたいそうです。

2004年にサラヤとのプロジェクトが開始した当初は、サラヤのパーム油原料はほぼマレーシアからでした。しかし現在ではインドネシアからの原料も増えきており、SDGsの項目の一つである「使う責任」の一端を担う必要から今後取り組んできたいと考えられています。

サラヤ_ボルネオ

RSPO認証

中西さんは、ボルネオでのツアー、プロジェクト業務や現地との交流だけでなく、RSPO認証に関わる業務もこなされています。

RSPO認証とは、「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO・Roundtable on Sustainable Palm Oil)」で認証された国際的制度のことです。RSPOでは持続可能なパーム油の生産・利用を目指しており、「持続可能なパーム油が標準となる市場を変革する」というビジョンを掲げています。

RSPO認証は、パーム油の生産もしくは流通の段階で決められた基準を満たしている製品であることを表すだけでなく、生産者や企業がパーム油に関する環境、社会的な配慮を行っていることを示す重要な認証なのです。

中西さんは毎年インドネシア、マレーシア、タイなどで開催されるRSPOの年次総会に出席されており、アブラヤシ産業への持続可能なパーム油生産について提言、RSPOに参加しているメンバー間での情報交換などを行っているそうです。

国内、関西での繋がり

ボルネオや東南アジアだけでなく、国内ではパーム油生産に関する啓発活動や講演の実施、イベントや企業・団体での勉強会を行っており、中学・高校・大学ではサラヤが行うボルネオの活動に関する授業を依頼されることもあるといいます。

理事を務められている「ボルネオ保全トラスト・ジャパン」への貢献の一環として、関西のボランティアメンバーと活動の輪を広げるため、2007年から毎月ほぼ欠かすことなく、関西定例会が開催されています。ボランティアメンバーのマンパワーがイベント実施のための大きな力となっていることを実感されており、このような繋がりの中から、よりよい市民社会を築くために、活動を引き継いでくれる次世代の人材が育ってくれることを期待しているとのことです。

サラヤ_ボルネオ

現地に足を運ぶことで見えてくること

日本でパーム油産業について調べていくと、パーム油が採れるアブラヤシの産業は“環境を破壊する”あまり良くないイメージを持ってしまうかもしれません。

しかし、中西さんはボルネオのマレーシアやインドネシア領のアブラヤシ農家の人達と関わる中で“彼らの生活を支える大切な基幹産業”であると感じるそうです。

アブラヤシ産業を巡っては人権問題、環境問題と申告かつ悪影響を及ぼす問題が存在しています。しかし、この産業から生まれる恩恵を通して私たちは豊かな暮らしを得ているのです。

現地に足を運ぶことでしか見えてこない現実と、新たな変革の兆しなどもあるのです。

私に、あなたに、できること

最後に、中西さんに日本で生活をする私達へのメッセージを頂きました。

生物多様性を学ぶことは自分を知ることにつながります。

ボルネオに関心を持つことで、自分というものがわかるようになります。

その素晴らしさと可能性を学ぶ輪に一人でも多くの方々に入っていただければと思います。

そして、その生物多様性が今失われようとしていることに、危機感も同時に持っていただきたい。

環境を破壊する企業の暴走を止める市民活動などに参加することも、良いかもしれません。

最近のパーム油発電所計画の停止などはそういった活動が有効であることの実例です。

しかし、そこまでできないという方でも、意思表示が可能なのは、毎日の消費活動です。

せめて自分が購入して使うものについては、原料などに配慮して商品を選ぶということを普段から意識していただければ、少しでも世の中がましになるのかもしれません。

私達の生活に身近な製品が、環境問題や人権問題の引き金になっているかもしれません。

大きな行動や決断をすることは難しいかもしれない。しかし、今日買おうと考えているもの、今欲しいと思っているものの原料や原産地について、興味を持って調べてみませんか?

そのあなたの小さな意識が、“少しでも世の中がましに”なる第一歩です。

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参考

サラヤ株式会社:https://www.saraya.com/index.html

ヤシノミ洗剤:https://www.yashinomi.jp/index.html

認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン:http://www.bctj.jp

パーム油の利用について:https://palmoilguide.info/about_palm/detail

JICA:https://www.jica.go.jp/

ボルネオ生物多様性・生態系保全プロジェクト:https://www.jica.go.jp/oda/project/0600561/index.html

「赤い象牙」もつサイチョウ、密猟で絶滅の危機に(National Geographic):https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/032200102/

RSPOについて(WWFジャパン):https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3520.html

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前回までのお話

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