Wリーグ・東京羽田ヴィッキーズに所属する女子プロバスケットプレイヤー、本橋菜子選手のインタビュー記事をお送りします。
バスケットの話や、本橋選手が取り組む社会貢献活動についてお話を伺いしました。
——Sports for Social 編集部)本橋選手、本日はよろしくお願いします。まずはじめに、本橋選手がバスケットを始めた理由とプロ選手を意識したタイミングについて教えてください。
本橋選手)姉が先にバスケをやっていたのがきっかけでした。それを見て「楽しそうだな〜」と思ってミニバスを習い始めました。
プロ入りについては、最初は全く意識していませんでしたね。大学卒業後は一般職で就職をしようと思っていたのですが、ある日「プロにならないか?」と声を掛けていただいて…
「まだバスケを続けたい、チャレンジしたい」と思いが強かったのでプロ入りを決断しました。
——Sports for Social 編集部)ありがとうございます。少し話が変わりますが、弊社が運営しているメディア「Sports for Social」を閲覧してくださっている方の大半はサッカーファンの方々です。バスケのことをあまり知らない方に対して、バスケの魅力を伝えるとしたらどのようなことを伝えたいでしょうか?
本橋選手)得点が沢山入ることは楽しんでいただける要素だと思います。
得点が多い分、攻撃と守備の切り替えも非常に早く、その攻防は一つ魅力的な部分だと思います。
——Sports for Social 編集部)確かに、バスケは得点が必ず入るのは見ている方にとっても楽しめるポイントですね。一方、アメリカのNBAはTVで見るけども日本のバスケは見たことがない方も多いと思います。大きく何が違うのでしょうか?
本橋選手)もちろん、プレイヤーのレベルの違いはあると思いますが、それ以上にメディア露出が少ないという影響はあると思います。アメリカでは人々の生活の一部にバスケットがあり、TVや雑誌を含めて多くの方が目にしています。それがインターネットを通じて日本などアメリカの外にも浸透していきましたね。
——Sports for Social 編集部)なるほど。これはサッカーも同じですね。Jリーグは見ないけど海外サッカーは見る。露出やスケール(文化・生活の一部も含む)の違いがあるんでしょうね。東京羽田ヴィッキーズの魅力はどんなところでしょうか?
本橋選手)元気があるところ(笑)
バスケットの戦略的な部分だと、「トランディションの早いバスケット」ですね。チャンスがあるところでそのチャンスを見逃さないで積極的にゴールにアタックする。「早い展開でのバスケットをする」のが羽田の目指すバスケットです。
——Sports for Social 編集部)試合以外の魅力だとなんでしょうか?
本橋選手)ハーフタイムショーや物販ブースでのご当地グルメ、バリエーション溢れるグッズ売り場なんかはとても魅力的だと思います。
コロナウイルスの影響でこれまで通りとはいきませんが・・・
——Sports for Social 編集部)コロナウイルスのお話が出ましたが、2020年はコロナウイルスの影響で選手も不安やストレスを抱えていたのではないかと思います。その点いかがでしょうか?
本橋選手)コロナウイルス流行の初期は何度か思うことがありましたが、不安に思ったところで状況は変わらないので、「今出来ることを頑張ろう」と思って取り組んでいました。
それ以上に、ファンの方々の前でバスケットが出来る「楽しみ」や「ありがたみ」を感じました。好きなバスケができること、多くのファンの方が応援をしてくれることは決して当たり前ではなく、周りの支え、環境があって成り立つものだと改めて思いました。このタイミングでそれに気がつくことができたのは長いスパンで見たときにはポジティブなことだと捉えています。
——Sports for Social 編集部)本橋選手は芯がしっかりとされていますね。ただ、悲しいことに世間では「コロナウイルスの影響で精神を病んでしまった。」「命を絶ってしまった。」などの出来事も起きています。アドバイスも込めて本橋選手ご自身は、自分の気持ちを保つ上でどのようなことを心がけていますか?ルーティンなどもあれば…
本橋選手)そうですね。あまりネガティブに捉えないようにしていますね。特段ポジティブというわけでもないのですが、「まあ、なんとかなるか」と思っています。ポジティブで居続けることは難しいことなので、平常心が大切ですね。
ルーティンもありません(笑)
ここは”あえて”持っていないというのが正しいかもしれません。
——Sports for Social 編集部)「平常心」。この記事を見ている方も肩の力が抜けたのではないでしょうか。スポーツ選手の言葉は本当に力があります。
「Sports for Social」は、”社会貢献活動をスポーツを通して応援していこう”というコンセプトで運営をしているのですが、本橋選手はどのような社会貢献活動に興味をお持ちでしょうか?
本橋選手)正直な話、これまでは自分がバスケットをすることで見に来てくれている方が少しでも日常から離れて楽しんでいただければ良いなということだけを考えてやっていたのですが、最近知人の紹介でとある団体と出会い考え方が変わっていきました。
その団体は”アスリートたちが持つ自らの心を「ごきげん」にマネジメントするスキルに注目し、トップアスリートたちにその価値を伝えてもらうことを目的”に活動をしている「Dispo」という団体です。
子どもに対する「ごきげん授業」を中心に活動をしているのですが、Dispoに参画しているトップアスリートの方々と交流することで、スポーツの価値や子どもがどうしたらごきげんでいられるのかを真剣に考えるようになりました。
現役スポーツ選手だから伝えられることが沢山あるんだろうなと思います。
もちろん、人それぞれ出来ることは違うと思うので、「自分がやりたい」「力になれそう」だと思うことやれば良い。私の場合は、「DiSpo」の活動を通してアスリートとして伝えられること、活動理念に沿ったことを発信していきたいと思っています。
まだそんなに活動はできていないのですが、これからとても楽しみです。
——Sports for Social 編集部)「Dispo」は具体的にどのような活動をしているのでしょうか?
本橋選手)アスリート対象の勉強会と交流会が月に1度あります。そこでは、「スポーツの価値とはなんだろうか?」などのテーマ(毎回違うテーマで行われる)をもとに、アスリート同士がディスカッションをします。ディスカッション以外にも、辻先生による「子どもに対するごきげん授業」という講義もあり、ごきげんでいることの大切さを学び、伝えていこうという活動をしています。活動に取り組む中で感じるのですが、この”ごきげん”という考え方は子どもだけではなくて、アスリートにとっても大人にとっても大切なことだなと感じています。
——Sports for Social 編集部)子どもに対してのごきげん授業はどんなことをされるのでしょうか?
本橋選手)私は、まだ一度も授業をやったことはないのですが、団体がやっている内容をご説明します。
通常の家庭では、お母さんが学校から帰ってきた子どもに対して、「今日は何があったの?」などの情報を聞くということが多いのですが、そうではなくて「今日は何をして、どのように感じたのか?」など心の状態を自分で考えさせたり、引き出すことで内面の部分をしっかりと感じ取ってもらおうという目的でやっています。
スポーツ選手は必ず目標を持ってやっていますよね。でも、その目標はただの目的に過ぎなくて、「目標を達成した先に何があるのか?」、「どういう自分でいたいのか」などを自然に口に出せます。
これは子どもにとってとても重要なことで、こういうことを伝えてあげることは価値あることだと団体は考えています。
——Sports for Social 編集部)話は変わりますが、社会課題として「ジェンダー平等」「ダイバシティ創り」というものがあると思います。「女性アスリート」は肩身が狭いという意見も聞こえてきますが、本橋選手は感じる部分はありますか?
本橋選手)私は、今の所肩身が狭いと感じたことはありません。本当に素晴らしい環境でプレーをさせていただいているなと思います。
併せて、第一線で活躍されている方はあまり女性アスリートであったり周りの声は気にしていないのではないかなと思います。
——Sports for Social 編集部)少なくとも東京羽田ヴィッキーズや本橋選手の周囲では環境が整っているということですね。
それでは、インタビューの最後に目標についてお聞かせください。
本橋選手)はい!東京羽田ヴィッキーズとしては、「Wリーグでベスト4になること」が目標です。個人としては、「オリンピックに出場して金メダルを獲る」ことを掲げています。
——Sports for Social 編集部)目標に向けては順調ですか?
開幕当初は負けが続いた影響であまりよくないチーム状況でした。ただ、若いメンバーが増え新しいチーム作りをしている段階でもあるのでネガティブには捉えていません。前半戦が終わって課題も見えてきたので、後半戦はこの課題にどれだけチャレンジしていけるか、改善していけるかが重要だと思います。期待していてください。
——Sports for Social 編集部)応援しています!本日はありがとうございました。