私たちの想い

“科学”でいじめのない世界を~『BE A HERO』プロジェクト

いじめはなぜ起こるのか、いじめが起こらない集団の条件とは――。
『BE A HERO』プロジェクトでは、“科学的”なアプローチによって『いじめ撲滅』を目指しています。
“科学”を使っていじめに向き合う『BE A HERO』プロジェクト特任研究員の木村匡宏さん(以下、木村)、特任研究員兼事務局の新保友映さん(以下、新保)の「“科学”でいじめのない世界を創りたい」という想いに迫りました。

「大好きなスポーツを、大好きなままで」

ーー木村さん、新保さんが、この『BE A HEROプロジェクト』に関わられたきっかけを教えていただけますか?

木村)私は「MTX ACADEMY」という複合型のスポーツ施設で、トレーナーとしてパーソナルトレーニングなどを行っています。中学生年代の選手の指導もするうえで、その年代の指導をするのであれば、発達についてもきちんと知っておくべきだと考えました。

いろいろなご縁があり、「子どもの発達科学研究所」主席研究員の和久田学先生に出会い、そこの講座を受講してみました。身体の育ちなど“発育”の部分は専門分野として知っていたものの、“発達”という部分については、あまり理解ができていないのだと痛感しました。“発達”というのは、脳機能の発達のことです。

以前から「子どもたちが自分の好きなスポーツを末永く続けるためにどうしたら良いのか?」と考えていたこともあり、誕生させたのが『BE A HERO』プロジェクトです。「子どもたちが大好きなスポーツを、大好きなままでいてほしい」という“想い”から、和久田先生の講座で学んだことをスポーツの現場で活かしていくことを決意しました。
ちなみに、『HERO』とは、 『Help』『Empathy』『Respect』『Open-mind』のそれぞれの頭文字を取ったもので、私たちがこのプロジェクトに込めた想いです。

新保)このプロジェクトが立ち上がった際、私はニッポン放送のアナウンサーとして記者会見の取材に行くことになりました。これが、私がこのプロジェクトを知るきっかけになりました。
私は小学生の頃にいじめを少し受けていて、中学生になると傍観者の立ち位置になってしまうという経験がありました。この経験から、「いじめって本当になんとかしないといけないな」という“想い”を大人になっても持っていました。そうした想いと、プロジェクトの発足時期、そして私がニッポン放送を退社したタイミングなど、まるで縁があったかのように重なって、このプロジェクトを担当することになりました。

ーーありがとうございます。お二人ともご自身の経験が、プロジェクトに関わるきっかけになっているのですね!

普通にがんばっていることがすごい!!

ーー具体的にどのような活動をされているのですか?

木村)学校に訪問して ワークショップをする『HEROになろう』というプロジェクトが活動の大きな柱の一つになっています。コロナ禍の影響で最近では学校に直接訪問することが厳しく、オンラインで実施する機会が多くなりました。
また、YouTubeの『BE A HEROチャンネル』では、私たちの伝えたいことを短くまとめたコンテンツを作成し、配信しています。他にも、学校の先生や保護者の方向けに講習を行っています。

新保)コロナ禍でオンラインが主流になったことによって、全国の学校からのご依頼を受けられるようになったことは、新しい流れかもしれないですね。

ーーこうした活動の中で、どのようなことを大切にされているのですか?

木村)このプロジェクトで僕が感じている良さは、“わかる”を大切にしていることです。思春期ってなんだ?なぜいじめってだめなんだ?じゃあ良い行動ってなんなんだ?明日から何を意識して行動したらいいんだ?ひとつひとつクリアにしていきます。道徳的に「いじめはだめなんだ」と感じることも大切なんですが、それよりも、ちゃんと“わかる”こと、理解することが子どもたちにとっても大人にとっても大切で、本当に行動が変わるきっかけになります。

「行動宣言」で生まれるそれぞれの“良い行動”

ーーなるほど。それも“科学”に基づいた考え方ということですね。そうしたことをワークショップでは、どのように伝えていくのですか?

木村)ワークショップでは、子どもたちに「良い行動とはこういう行動ですよ」と伝えています。そして、最後は子どもたち自身に『行動宣言』という形で、「こういう行動をしていきます」と示してもらうことにしています。そうすることで、100人の子どもがいたら、100個の良い行動が生まれるんです。
さらに、先生と子どもの間に『HERO』という共通言語が出来ます。共通言語が出来ることにより、子どもたちの行動が逸脱した時にも「その行動は、HEROじゃないよね?」と注意することができ、子どもたち自身が宣言したことでもあるので、納得しやすいと思います。

ーー講義だけで終わらず、生活に活かしていくというのは良いですね!

新保)私も、木村がお話したように“科学的”な視点を大切にして、そもそもいじめが起きにくい空間を作ることを大切にしたいと思っています。そのために『行動宣言』はとても効果的な手段だと思います。
先日、ある小学校の校長先生から依頼をいただき、私が教員研修を実施しました。受講してくださった先生方が、その後それぞれのクラスでBE A HEROについて話したり活動したりしてくださり、その際に子どもたちが書いた行動宣言を私も見せてもらいました。子どもたちは「レギュラーになったからといって命令しません!」「相手に優しくすることに挑戦します!」というように、それぞれの想いを記してくれました。
さらに、それを保護者の方とも共有して、家庭でも取り組んでくれていたようです。このように具体的な行動に落とし込み、大人もそれに巻き込んでいくことがとても大切だと感じています。

経験則ではなく、“科学”を当たり前に!

ーーお二人のお話からは“科学”という言葉が度々出てきますが、“科学的”な視点からアプローチすることの意義についてどのように考えていますか?

新保)日本では起こったいじめに対し、どうしても経験則で対処してしまいがちです。もちろん、経験則がすべて悪いわけではないのですが、私や木村の世代のいじめと、デジタルネイティブ世代の今のいじめは全然違うものだと思います。
科学的な研究結果を活用することで、再現性があり、みんなが同じように使える指針を共有することができます。世代間のギャップを埋めるためにも、“科学的”なアプローチは重要だと認識しています。

ーーありがとうございます。木村さんはどのように考えていますか?

木村)逆にお伺いしたいのですが、“科学でいじめを予防する”というフレーズを聞いてどう思いましたか?

ーーそうですね。モヤモヤしたり不安になったりするときに、そのことを書き出して整理してみると、スッキリすることが出来た経験があります。このように“見える化”することが“科学”を活用するということに近いのではないかと思います。

木村)おお!なるほど!とてもわかりやすい!
実は、“いじめを科学で予防する”ってどういうこと?と問合せを頂くことが多いのですが、今、お答え頂いたように、いじめの仕組みを“見える化”“構造化”していくことこそが『科学的に』ということなんです。“いじめ”という現象に対して、どうアプローチすべきか、その研究の成果が世界にはちゃんと存在します。でも、まだ日本の教育現場にそのことが活用されていないので、この考え方をわかりやすくお届けできるように努めていきたいです。

『HERO』の指針をもっと多くの人に!

ーーありがとうございます。最後に、今後目指していくことについて教えてください。

木村)これからは、さらに『HEROになろう』という活動を広めていきたいです。“科学”という少し難しい部分を出来る限り分かりやすく伝えていけるように、試行錯誤していこうと考えています。部活動にもアプローチしていき、子どもたちが大好きなスポーツを大好きなままでいられるような環境を整えていくことも続けていきたいと思っています!

新保)私も活動をもっと広めていければと考えています。
そして、『HERO』の指針を子どもたちみんなが知り、私たちの活動が要らなくなるくらいになってほしいと思います。夢は大きすぎるかもしれませんが、これくらい私たちの想いが社会に広がって行けばと感じています!

ーーありがとうございました!

(画像提供=BE A HERO プロジェクト)

畠社長・藤井瑞希さん
【対談】バドミントン・藤井瑞希×J-TEC~怪我・リハビリについて考える~(前編)「再生医療をあたりまえの医療に」を掲げる株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(以下、J-TEC)と、再生医療とスポーツとの関係性を伝える本連載。(全4回)ここまでは代表の畠賢一郎氏(以下、畠)にお話を伺いました。 第3回からは女子バドミントン・ロンドンオリンピック銀メダリストであり、先日の東京オリンピックでは解説も務められた藤井瑞希さんをお迎えし、『怪我』に関するリアルな部分を対談を通じて紐解いていきます。 藤井さんの大ケガの裏話や、怪我に対する俯瞰した考え方、アスリートの考えるリハビリや怪我の治療についてなど、表面上では知り得ないアスリートならではの深いお話が盛りだくさんです。...

 

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