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「エスパルスを使い倒せ!」〜PULCLEで見えてきた、サッカークラブを活用した社会貢献とは〜

サッカーJ1・清水エスパルスの「静岡市シェアサイクル事業 PULCLE(パルクル)」は、2021Jリーグシャレン!アウォーズにてパブリック賞を受賞されました。

シェアサイクルという、一見するとサッカークラブに繋がりのないように思える事業へ協力するに至った経緯や、これからの活動について、清水エスパルス 広報部・高木様(以下:高木)とホームタウン営業部 社会連携担当・鈴木様(以下:鈴木)にお話を伺いました。

サッカークラブはサッカーするだけじゃない!

ーー2021シャレン!アウォーズにてパブリック賞を受賞された「PULCLE(パルクル)」について教えてください。

高木)「PULCLE」はシェアサイクル事業で、実施主体が静岡市、運営主体が株式会社TOKAIケーブルネットワーク、株式会社トコちゃんねる静岡、そしてOpenStreet株式会社が共同で行っています。

参画した理由として、エスパルスは静岡市と一緒に「COOL CHOICE啓発活動」という地球温暖化防止活動に2016年から取り組んでいたので、活動の一環として協力することを決めました。

©︎︎︎S-PULSE

ーーありがとうございます。サッカークラブと自転車というとなかなか繋がりがないような気がしますが、なぜブランド協力されたのでしょうか?

高木)TOKAIケーブルネットワークの担当者の方から、ブランド協力の依頼が舞い込んできました。社内では「エスパルスとしてどのように参画するのか」を話し合いました。静岡には他にも様々なスポーツクラブがありますので、エスパルスが選ばれて協力するというのは難しいかもしれないという意見も挙がりましたが、個人的には「すぐやるべきだ」と判断したので、どうやったらできるのかを担当者の方と一緒に考えました。

ーー「すぐやるべきだ」と思われた理由を教えてください。

高木)「サッカークラブ」と「自転車」は全く結びつかないですよね。そこが良いと思いました。サッカークラブはサッカーをするだけではないと思っていて、社会貢献活動もその中のひとつだと思います。

サッカークラブを使う1番のメリットは、地域との親和性だと思っています。例えば、シェアサイクル事業を他の事業主が単独で行うとしても、地域の皆さんにとっては入りづらかったり使うまでにハードルが高かったりすると思います。そこをエスパルスを通すことによって、「パルちゃんが自転車に乗ってるロゴだし使ってみようか」「エスパルスが好きだから乗ってみよう」と感じてもらえて、ハードルが下がるんですよね。

また、清水エスパルスでは、2020年にリブランディングを行いました。新たなデザインのパルちゃんが描かれた自転車が街中を走ることで、リブランディングしたエスパルスへの認知度向上も図れるのではないかと考えました。

自転車にクラブマスコットとSDGsロゴ

メリットを取り入れてサッカークラブがシェアサイクル事業に協力するということがとても面白いと感じたので「すぐやるべきだ」と思いましたね。

ーーエスパルスが地域の皆さんに近くにいるからこそ実施に至ったのですね。

PULCLE_オープニングセレモニー

「シェアサイクル」という新しい選択肢を市民に!

ーーエスパルスとして、シェアサイクル事業への期待はありますか?

高木)エスパルスの本社や練習場がある三保地区は、交通手段が限定されており、クラブとしても「アクセスの悪さ」という課題がありました。シェアサイクルが導入されてステーションが置かれたら、人口の流入が増え、その課題が少しでも解決できるのではないかと考えています。

ーーありがとうございます。PULCLEはどういった層の方々に利用されているのでしょうか?やはり、サポーターの方が多いのでしょうか。

鈴木)現在は練習を公開していないということもあり、サポーターの方の「試合」や「練習」といったクラブの活動に関連した利用はまだ多くないと思いますが、最近はアイスタにもPULCLEでご来場いただく様子が見られるようになってきました。それよりも日常での利用が多いです。最初にPULCLEを知るきっかけはエスパルスかもしれませんが、そこからどんどん広がって市民が通勤や、お買い物に行くのに使っていただいたりしているという現状だと思います。

ーー新しい交通手段として市民の方々に認識されているんですね。

高木)まだ、そこまで浸透されているかと言われれば疑問ではありますが、交通手段が増えたというのは事実だと思います。

ステーション写真_静岡駅

静岡市は「しずおかMaaS(静岡型MaaS基幹事業実証プロジェクト)」というプロジェクトの中で、「新たな移動サービスを構築し、過度に自家用車に頼らなくても安全・安心・快適に移動できる社会の実現」に取り組んでいます。PULCLEがスタートしたことにより「自家用車を使うより、ちょい乗りするんだったらPULCLEを使おう」というようにシェアサイクルが選択できるようになりました。車以外の交通手段としてシェアサイクルという選択肢が増えたということです。そういった選択肢の1つとして市民の方々に認識されていったらいいなと考えています。

ーー利用された方からの感想はどうでしたか?

高木)「ちょい乗りにはちょうど良いよね」という感想を伺いました。利用するためにはアプリをダウンロードする必要がありますが、やり始めるとすごく簡単なので、一度試していただけたらと思います。

環境問題を“ジブンゴト”として考えてもらうには?

ーー交通手段を選択する時に、環境に良い乗り物である「PULCLE」があるというのは若い世代の方にとっても良いですね。

高木)はい、そう思います。環境問題を“ジブンゴト”として捉えることは、なかなか難しいと感じています。環境に良いと言われても、それを“ジブンゴト”と理解し行動に移せる方は少ないと思います。

実際に選択し体験することで“ジブンゴト”と捉えることができる「PULCLE」を通して、「自転車を使うことで環境に好影響を与えている」というように少しずつでも実感できれば、“ジブンゴト”として捉えられるのではないかと思います。そういった意味でも「PULCLE」というのは若い世代にも影響を与えられるのかなとも思います。

ーー静岡の将来を担う若い世代をも巻き込んで進めているのですね。

若い世代にサッカークラブの使い方を知ってもらう

ーー若い世代ということで、静岡サレジオ高等学校と活動されたと伺いました。どのような活動をされたのでしょうか?

鈴木)静岡サレジオ高校はクラブのユース選手も多く所属しており、学校とクラブの繋がりももともとあったため、お話をいただいた時にすぐに活動実施を決めました。

そこで、学校のある草薙地域の活性化を目的に活動している「草薙フューチャーセンター」と手を組み、「PULCLE」を用いた街の盛り上げ方について考えていただきました。いくつかのグループに分かれて、街を活性化する取り組みを発表していただき、その内容をスタジアムで展示しました。7月4日開催の大分トリニータ戦で販売したシャレン!アウォーズ受賞記念の「PULCLE」のグッズ制作の際にも、高校生の意見を取り入れています。

S-PULSE×PULCLE×静岡サレジオ高校草薙フューチャーセンター 『PULCLE』グッズ発売

ーー高校生の方にとっても良い経験ですね。所属されている学生の方は、皆さんサッカーに関心のある方ばかりなのでしょうか?

鈴木)フューチャーセンターに所属するほとんどの学生は、サッカーの試合を見たことがない方ばかりでした。私たちにとってもサッカーと関わりのなかった高校生とつながることができたということは大変貴重な機会でした。

若い世代の方たちが、清水エスパルスというサッカークラブの使い方を知って大人になってくれるというところが、取り組みの面白さだと思います。今年は、他の高校ともいくつかコラボさせていただく予定です。グッズだけでなく、若年層のファンを増やす取り組みや社会連携もテーマに行います。自分たちも1つのビジネス、社会に関わることができるのだということを、この活動を通じて実感していただけたら嬉しいです。

エスパルスを使い倒せ!

ーー最後に、これからどのような活動をされていきたいか教えてください。

高木)「PULCLE」はまさにエスパルスを使っていただき実現化した事業です。「PULCLE」を通してサッカークラブの新しい使い方を示すことができたと思っているので、今後も継続してやっていきたいと思っています。

「サッカークラブができること」という概念をこの活動を通して覆すことができ、サッカークラブは様々な取り組みができると示せたと思うので、これをもっと違う形でもやっていきたいですね。

ただそれは、私たち単独ではできず、社会との繋がりがあってできることだと思っているので、様々な社会連携に取り組んでいきたいです。

私は、Jリーグが推奨している「シャレン」というのは、「ある課題に対し多様な方々と連携して取り組み、例えば、更にそこに学校などが入れば教育につながり、その輪がどんどん繋がって大きく太くなっていくこと」だと思っています。ですので、これで終わるわけではなくどんどん輪を増やしていくことが必要かなと思います。そして、その輪と輪をつなぐことができたら、もっと面白いことができるのではと思います。

スタジアムでのサレジオ高校展示

鈴木)清水エスパルスは、市民球団として誕生し、地域に支えられながら存在しているクラブです。ですので、いかにその地域の日常に浸透できるか、スポーツの力で地域の課題解決に貢献できるかということを普段から取り組んでいます。

ホームでの試合は、年間20試合ほどしかないのですが、社会連携をすることで地域の皆さんと試合以外にも日常での接点を作ることができると思っています。エスパルスがこの街にあってよかったと思っていただけるような活動を広げていきたいですね。ホームタウン静岡市をはじめとした地域の皆様と共にこれからも様々な活動に取り組んでいきます。

高木)自分が生まれたところにプロサッカークラブがあるというメリットを感じて欲しいですね。

エスパルスを使い倒すということが肝です。それは私たちが考えただけでは実現できず、やはり連携しないと難しいことなので、どんなことができるのかということを様々な方と話し合って、エスパルスを通じてできることを広げていきたいですね。

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