【連載 #女性のコトを考える vol.3】
この連載では「#女性のコトを考える」をテーマに、女性だけではなく、男性が”女性”のことを、知る・理解することを目的として、フェムテック領域や女性向けサービスを展開する企業様との対談を実施します。
対談では、Sports for Socialを運営する株式会社HAMONZ代表の山﨑蓮があえて“男性”目線で“女性のコト”について質問や疑問をぶつけていきます。あなたが疑問に思っていたことの実情や、知りたかったことの答えが見えてくるはずです。
多様な視点から“女性”の身体や心に起こる問題を知り、理解を深める機会になれば幸いです。
Flora × Sports for Social「自分で自分を大切にしていい」
今回は、産後・産前うつを中心とした女性のメンタルヘルス領域に関する事業を展開するFlora株式会社代表取締役 クレシェンコ アンナさん(以下:アンナ)と「女性のメンタルヘルス」をテーマに対談を実施しました。
そもそも、産後・産前うつについて知らない方や、知っていてもどのように女性と向き合えばいいかわからないという方も多いのではないでしょうか?
留学を機にウクライナから日本に訪れたアンナさんは、2020年12月、Flora株式会社を創業(京都大学在学中に起業)。今回の対談では、女性のメンタルヘルスのコトや、日本や海外の「ジェンダーへの考え方」など幅広いテーマでお話を伺いました。前中後編の3編構成で対談の内容をお届けします!
産前・産後は“自分を責めて苦しんでしまう”
ーー改めて御社の事業の内容を教えてください。
アンナ)弊社は、女性のメンタルヘルス(心の健康)のために、思春期から更年期までの女性をサポートしています。現在は、主に「産後うつ・産前うつ」に悩んでいる方を対象としてサービスを提供しています。
ーー山﨑さんは、「産後うつ・産前うつ」という言葉は聞いたことありますか?
山﨑)はい、実は私の周りにも産後の悩みを抱えている方は何人かいます。ある友人は、「奥さんが産後にストレスが溜まり、人が変わった」と話してました。大変そうだなとは思うものの、実際にどのような症状が起きるのか、どのようなケアが必要なのかはあまり理解できていません。
ーーアンナさんがFlora株式会社を起業したきっかけは、従姉妹が実際に産前うつになられたことだと伺いました。実際、どのように苦しまれていたのでしょうか?
アンナ)不安を感じ、自分が苦しんでいても、周囲に助けを求めらなかったり、他の人に相談できなかったりして、ずっと家でこもって過ごす状態が続いていました。
山﨑)具体的にどのような不安を感じるのでしょうか?
アンナ)産後うつでは、自分が立てた計画が育児によって思い通りに進まず、心や体が疲れてるのに、もっともっと頑張らなければいけないと思ってしまう。そして、また同じように計画は崩れまた自分を責めてしまうという悪循環が生まれてしまいます。
女性が安心して自分の悩みを共有できるように
山﨑)身近な人に相談できないというのは、聞いてくれる人がいないのか、相談しても意味がないと思っているのか、どういった理由があるのでしょうか?
アンナ)いくつか原因があると思います。
1つは、「自分の弱いところを見せたくない」という点。
その他だと、少子化が進んでる中、核家族が増え、両親や親戚からのサポートが足りていない、という点もあると思います。
画像提供:Flora株式会社
山﨑)身近に共感し合える人がいないということなんですね。
そうした悩みや不安に対するアプローチやケアを事業にされていますが、具体的にはどのようなサポートをしているのですか?
アンナ)グループセラピーを開催しています。
ママ友など相談できる人を作ることができないことが問題だからこそ、セラピーやセッションに参加してもらい、同じ環境に置かれている仲間と絆を作っていただくようにしています。
セラピストや助産師などの専門家も入った小さなグループで、安心安全な環境のなか、悩みを共有し、自分の悩みをもっと理解して、振り返ってもらうことができます。
そして、AIによるメンタルサポートのためのチャットボットを開発しました。そこでは、ユーザーとのコミュニケーションを通して、普段は外へ発信できない悩みを表現してもらうことができます。
弊社の得意な分野は、感情解析やアルゴリズムの構築です。認知行動療法(CBT)の専門家と連携しながらチャットボットを開発しています。
画像提供:Flora株式会社
「あなたはあなたのままでいい」
ーー産前・産後、身近にいる人がどういった心構えや気遣いをするべきなのか。アンナさんは、パートナーの寄り添い方や声のかけ方について、どうお考えですか?
アンナ)私たちのグループセラピーは、パートナーと共に参加できる講座も用意しています。
女性の方はまず自分の苦しみをパートナーの方にオープンにして欲しい。そして、パートナーの方は女性の言葉に真摯に向き合い、苦しんでいることを受け止めてほしいと思っています。
山﨑)妊娠や出産などは女性特有のもので、男性は苦労や大変さが分からないことも多々あります。そういった中で言葉をかけてあげても、どこか軽く感じてしまうのではないかと思うことがあります。男性側はどういった言葉をかけてあげれば良いのでしょうか?
アンナ)「頑張って」と言わないことが一番大切です。女性はもうすでに頑張ってるので、逆に「リラックスして」「そんなに悩まなくていい」という言葉をかけてあげてほしいです。
そして、役割を分担をすることも重要です。やはり日本社会では、育児はもっぱら女性が担っていて、あまり役割分担ができていない印象があります。それは女性にとって、肉体的にも精神的にも苦しいことなので、一緒に育児に取り組む姿勢は本当に大事なことです。
あとは、相手が完璧じゃないことを受け止める。「あなたはあなたのままでいい」と伝えるのが最も大切です。
編集部より
今回は
●産前・産後うつとは?
●産前・産後のパートナーへの向き合い方
について伺いました。
まだ、どうしても「出産や子育ては女性が頑張るもの」という考えが多数を占めている中、産前・産後うつについて理解する、そして「あなたはあなたのままでいい」というスタンスでパートナーに向き合うことはとても大切なことです。
新しい気付きを得た方も多かったのではないでしょうか?
中編では、日本と海外における「ジェンダーへの考え方」をテーマに対談内容をお伝えします。