『ゼロエミッション』とは、私たちの生活や活動から発生する環境汚染につながる廃棄物をリサイクルし、それらを原材料として再利用することで、最終的に廃棄物を一切排出しないことを目指す考え方を意味します。現在、『ゼロエミッション』を目指してさまざまな国や企業が取り組みを行っています。また、近年注目される「温室効果ガス」の排出に対する取り組みも『ゼロエミッション』に含まれます。
そこで、今回は『ゼロエミッション』について解説していきます。
ゼロエミッションとは
「ゼロエミッション(zero emission)」とは、Zero(ゼロ)とEmission(排出、放出)を組み合わせた造語です。
1994年に東京都に拠点を置く国連大学(UNU)によって提唱され、私たちの生活から発生する廃棄物をリサイクルし、最終的な埋め立て処分量を限りなくゼロへ、という日本発のコンセプトのことを表し、この考え方を『ゼロエミッションコンセプト(zero emission concept)』とも言います。
近年ゼロエミッションは、脱炭素や温室効果ガス(CO2)の排出ゼロという意味でも多く使用されております。また、ゼロエミッションコンセプトには、SDGsの17の目標ともリンクする部分が多いため、ゼロエミッションに積極的に取り組む企業や自治体が増えてきています。
日本と世界のゼロエミッションの現状
2015年にフランスのパリで開催された第21回国連気候変動枠組条約集約国会議(COP21)では、2020年以降のゼロエミッション、温室効果ガス削減の国際的な取り組みを目指すため、パリ協定が採択されました。
日本は、2050年までに温室効果ガスの排出量ゼロ、脱炭素社会の実現を目指すことを2020年に宣言しており、その後、日本を含む世界124ヵ国と1地域が脱炭素社会を宣言しています。さらに2021年に日本政府は、ゼロエミッション火力発電という火力発電の燃料を、CO2を多く排出する石炭ではなく、CO2を出さないアンモニアや水素への切り替えの普及を目指すと宣言しました。
2050年の温室効果ガスの排出量ゼロに向け、各国は2030年までの具体的な目標を掲げています。日本は2013年度比で46%削減、アメリカは2005年度比で50%~52%削減、イギリスは1990年度比で68%削減、そして中国はGDP当たり2005年度比で65%以上削減と表明しています。環境省による、世界の2019時点の温室効果ガス排出量の変化率では、日本は1%増、アメリカは1%減、イギリスは37%減、そして中国は353%増となっています。
ゼロエミッションの事例
現在日本で行われている、ゼロエミッションの取り組み事例を紹介していきます。
「エコタウン事業」
エコタウン事業とは、都道府県がそれぞれの特性に応じて地域住民や産業と連携しつつ、独自の廃棄物削減やリサイクル推進プランを構想し、まちづくりを支援する事業のことを意味します。それらのプランが、先駆的、独創的、そして他の地域への見本となる場合、環境省と経済産業省により「エコタウンプラン」として承認され財政支援を受けることができるという流れになっています。
- 北九州市
リサイクルや環境ビジネスの事業化、企業による実証研究、環境政策理念の確立により、CO2を43.3万トン削減することに貢献しました。 - 川崎市
企業自身、企業間の連携、関係団体との連携、川崎国際環境技術展の開催により、リサイクル施設での廃プラスチックの処理実績量が2012年に10万トン以上を達成しています。 - 秋田市
新エネルギー産業の導入、住民参加による一般ごみのリサイクル化、金属リサイクル産業の推進等により、日本を含めたアジア地域からの使用ずみ金属製品の搬入量が8000トンにもおよび、目標の6000トンを大きく上回ることができました。
上記の以外の市町村でもさまざまな取り組みが行われています。
「ゼロエミッション東京」
東京都は”今こそ、行動を加速する時:TIME TO ACT”を合言葉に、2019年に「ゼロエミッション東京戦略」を策定しました。「ゼロエミッション東京戦略」は、2030年までに都内の温室効果ガスの排出量を50%削減することを表明し、6分野14政策において取り組み内容を掲げています。
- ゼロエミッションビルの拡大
都内全てのビルへの、太陽光発電の導入、地中熱利用冷暖房、熱交換型換気など - 都庁の率先行動
民間建築物に先駆け、都庁が率先してゼロエミッションに取り組むこと - 食品ロス対策
食品リサイクル、未利用食品の有効活用、フードサプライチェーンの連携した取組など
上記の例以外にも、さまざまな取り組みが行われています。
私たちにできること
ここまで紹介してきたゼロエミッションの取り組みは政府主導であったり、自治体によるものでしたが、私たちひとり一人が日常生活でできることは何があるのでしょうか?
- 温室効果ガスの排出が少ない公共交通機関や自転車を使用する
車での移動よりも、電車やバスは一度に多くの人を運ぶことができます。 - 再利用可能な商品、サステナブルな商品を使用し、ゴミを生み出さない
マイバッグ、マイタンブラーの持参、エシカルファッションの選択など - 自然エネルギー中心の電力会社を選択する
ところざわ未来電力(東京電力管内)、新潟スワンエナジー(東北電力管内)、グリーンピープルズパワー(関東地方)、愛知電力(中部地方)など
日本の平均的な生活で発生する1人当たりの温室効果ガスの量は、約7.6トンと言われています。私たち一人一人が意識するだけでも、生活から生まれる廃棄物の排出量を減らすことができます。
今日からあなたも日々の生活から意識をして、ゼロエミッションに貢献しませんか?