『車いすソフトボール』とは車いすに乗りながら行うソフトボールことをさしています。
日本車椅子ソフトボール協会の設立は2013年と、他のパラスポーツに比べて歴史は浅いものの全国各地にチームができ障がいに関係なく楽しむことができ、近年人気が増しているパラスポーツでもあります。
この記事では、車いすソフトボールについてのルールや見どころについてわかりやすく解説していきます。
車いすソフトボールとは
車いすソフトボールとは車いすに乗りながらソフトボールを行うウィルチェア型のパラスポーツのことです。1970年にアメリカで生まれたスポーツで、全米選手権が行われたり、メジャーリーグからの支援を受けて実施しているチームもあるなど、盛んなパラスポーツです。
日本では、2013年に『日本車椅子ソフトボール協会』が設立され、2023年1月現在では22チームが活動しており、日本代表チームも存在します。2022年にアメリカで行われたワールドシリーズにて、アメリカ国内18チームとカナダと日本の計20チームが参加するチャンピオンディビジョンと、アメリカ代表・カナダ代表・日本代表の3チームが参加するインターナショナルディビジョンの両方で優勝するなど、日本の車いすソフトボールは世界一位の実力を誇っています。
車いすソフトボールのルールと特徴
車いすソフトボールの大きな特徴の一つとして、障がいの重さや性別によってクラス分けがされていることが挙げられます。各クラスは4段階に分けられておりそれぞれ3点から0点まで配点されています。この合計点数をチームで21点以内に収める必要があります。
また、各チーム『クアード』と呼ばれる0点の選手を含める必要があり、いない場合はチームの人数を9人で回し10人目は自動でアウトになります。また女性はそれぞれのクラスからマイナス1.5点されます。詳細なクラス分けは下記の通りになります。
車いすソフトボールのクラス分け
- クラスⅠ(持ち点1)
腹筋、背筋の機能がないもしくは弱く、座位バランスが悪い。主に損傷部位がT-7以上。 - クラスⅡ(持ち点2)
腹筋、背筋の機能があり、バランスが保てるが下肢の機能および旋回動作が弱い。主に損傷部位がT-8からL―2。 - クラスⅲ(持ち点3)
下肢の機能があり、旋回動作も十分にできる。主にL―3以下または下肢切断、健常者も含む。 - クラスℚ (クアード)(持ち点0点)
脊椎損傷者。またはそれに準ずる上肢に障がいがある。
その他のルールと特徴
- 盗塁はなしだがリードはしてもよい。
- ワンストライク ワンボールからのスタート。
- 守備時 攻撃時等の場面に限らず地面に足をついてはいけない。
- 5回 10 点コールドとし、最大7イニングまでとする。
- フィールドは基本10人で守る。その時クラスQ(クアード)の選手がいない場合は9人でまもる。10人で守る場合は通常の9つのポジションに加えてフリーマンと呼ばれるポジションができる。但しピッチャーとキャッチャーは増やせない。各チームはこれらを活用して内野を5人にしたり外野を4人に増やしたりする。
- 基本的に選手はファーストを除きグローブをつけない。これは車いすを操作する上での妨げになるからです。
(引用:車椅子ソフトボール協会基本的なルール)
車椅子ソフトボールの魅力と見どころ
障がい・性別・年齢に限らず多くの人が参加することができるユニバーサルスポーツである
車いすソフトボールは、障がいの重さ・性別・年齢に限らない多くの人たちが参加でき、楽しむことができるスポーツです。車いすに乗ることが前提条件であり、同じ条件でプレーをすることができます。
日本の多くの国内大会では、健常者も大会に出場することができます。これは国内の車いすソフトボールチームの多くが障がい者単独でのチーム編成が困難なこともありますが、日本車椅子ソフトボール協会の方針として、「健常者も含めたすべての人が楽しむことができるバリアフリーなスポーツ」としての普及を目指していることも影響しています。
10人で守ることによる戦略性
車いすソフトボールでは、通常のソフトボールのポジションに加え、『クラスQ(クアード)』の選手がいる場合、フリーマンと呼ばれる選手が追加で入り計10人で守備を行います。
これによって試合の展開などによって内野を5人にしたりあるいは外野を4人にするなど守備の人数を調整します。守備の際の駆け引きも車いすソフトボールならではの魅力のひとつです。
守備や攻撃時の工夫
障がいが選手によって異なるため、攻撃の際の打ち方など、プレーに工夫をしていることも車いすソフトボールの特徴の一つです。例えば、打つ時に車いすのタイヤを手で押さえて片足で打つのか、足で押さえて両足でうつのかそれぞれ異なります。また、『クラスQ』の選手のみバントが許されています。障がいによってその人にあったプレーも異なる為選手それぞれが自分にもっともあっている方法でプレーを行います。
選手の紹介
吉本勇太選手(車いすソフトボール日本代表候補選手・クアード)
ポジションはキャッチャー。『関西アンバランス』の元気印として、大きな声を出し周囲を盛り立てるムードメーカーです。また、クアードの選手としてバントの技術も高く、隙を見つけ出塁もできます。車いすラグビーで鍛えられた強靭なフィジカルも持ち味の一つで、日本代表の候補にもなっており今後の活躍に目が離せない選手です。
赤井正尚選手(2022車椅子ソフトボール日本代表・関西アンバランス監督)
ポジションはショートで、『関西アンバランス』チームの主軸を担う選手。チェアスキル(車いすの操作技術)はとても高く、それらを生かした広い守備範囲はチームに安心感を与えています。チームの中心として周囲を把握すると同時に、監督としての戦略を考える頭脳も持ち味で、チームを選手と監督という両面から支えています。また打撃面では状況に応じた打ち分けでチームに貢献しています。
佐藤克輝選手(健常者プレイヤー・関西アンバランス副監督)
ポジションはレフトで、チーム内の守備力はトップクラス。健常者プレイヤーの中でもチェアスキルは非常に高く、広い守備範囲と強い肩そして正確なコントロールが持ち味です。打撃面では大会での出塁率が非常に高く、チャンスメーカーとしての役割も果たしています。的確な走塁の判断でチームの得点力を底上げしており、副監督としてチームの戦術面での中心としての役割を果たしています。
東大阪市の取り組みについて
東大阪市では、障がいの有無や年齢、性別にかかわらず誰もが一緒に楽しめるスポーツとして『車いすスポーツ』の普及に力を入れています。2020年には日本初となる屋外での車いすスポーツ専用施設『市立ウィルチェアスポーツコート』が花園ラグビー場の近くに作られました。
この施設はソフトボールやラグビー、テニス、バスケットボールにも対応しておりあらゆるウィルチェアスポーツが競技を出来るように施設が作られています。施設には競技用の車いすがレンタルできるほか、車いす利用者に配慮したトイレや照明、ミスト冷風機などをそろえており、バリアフリーに対応した充実した設備がそろっています。また、東大阪花園大会と呼ばれる全国大会も開かれており、車いすソフトボールの普及や発展に欠かせない施設になっていると言えます。
大会について
車いすソフトボールは全国で広まっており、各地で大会が開かれています。以下が主な大会にです。
2023年
- 2月10~11日 北九州大会(穴生ドーム)
- 2月11日 枚方市車椅子ソフトボール体験会(ひらかたパーク)対象:小学生
- 7月予定 第2回車椅子ソフトボール西日本大会(ウェルチェアスポーツコート)
- 10月予定 第8回ライオンズカップ(埼玉 大宮第二公園)
- 11月か12月 東大阪花園大会(ウェルチェアスポーツコート)
また、各チームが体験会を行っており、競技人口を増やす取り組みを行っています。
フィールドに入れば障がいの有無は関係ありません。どんな人でも楽しむことのできる環境が、車いすソフトボールにはあふれています。
体力に不安な人や体が動かすのが苦手な人でも、興味を持たれた方は是非一度お近くのチームに行き体験されるのはいかがでしょうか?
関連リンク
チーム情報 | 日本車椅子ソフトボール協会 (jwsa.or.jp)