北海道日本ハムファイターズの企業理念は「Sports Community」。ファイターズが存在する意味を見つめ直し、人と人の心が繋がるコミュニティを創造することを目指しています。
現在、「親子でキャッチボールをしてもらいたい」との想いから、鶴岡慎也コーチ兼捕手によるクラウドファンディング<鶴の恩返し>を、「北海道のこどもたちに学びや社会と触れる機会を提供したい」との想いから、金子弌大投手による<マイルストーン・オークション>を行っている同チーム。
この取り組みへの想いを、広報SCグループ・笹村様(以下:笹村)に伺いました。
「リアルで触れ合うことができなくても、提供できる価値がある」
ーークラウドファンディングという形で活動されるのは初めてだと伺いました。コロナ禍で新しい社会貢献活動の形を模索された中での活動なのでしょうか?
笹村)「リアルの場で集まって一緒にスポーツを観たりスポーツをしたりする」ことがスポーツチームである私たちが提供できる価値の本質だとコロナ以前は思っていましたし、それは今でも変わってはいません。ただ、コロナ禍が長引き、思うようにリアルな場が提供できない状況が続く中、それだけに思考停止してはいけないと、新しい形の模索を続けてきました。
今の時代、ICTの発展のおかげで、クラウドファンディングやオークションのハードルも下がりました。直接会ったり、触れ合ったりすることはできなくても、選手が持っている価値を使い、お金という媒介を通じて誰かの役に立つ、そういう方法もあると。
ーー鶴の恩返しの活動は今年で4年目と拝見しました。選手から何か働きかけはあったのでしょうか?
笹村)選手は、当然試合でパフォーマンスを発揮するのが一番大きな仕事です。どちらかというと私たちが、「こういう方法を考えてみたんだけどこの活動をやってみない?」という感じで、その選手個々にあったストーリーやタイミングを考えながら、選手に提示しています。選択肢を1個持ってもらうというところからスタートしている部分が大きいですね。
ーー笹村さんからお話を出した中で、選手の方の反応はどうでしたか?
笹村)基本的にはそういう趣旨の活動であれば是非やりましょう、と選手は言ってくれますし、物品の提供も喜んで行ってくれます。きっかけがないだけであって、最初の入り口を提示すれば、多くの選手は喜んでやってくれるのでは?とは思ってます。
ーー初めての試みとなるクラウドファンディングですが、かなり反響がある印象を受けます。 SNS上など、ファンの方からの反応はどうでしたか?
笹村)クラウドファンディングで出資してくださる方のコメントを見ても、愛されてる選手だなと改めて感じます。在籍歴も長いですし、鶴岡は元々ファンに愛されてる選手です。一度チームを離れましたが、ファイターズ、そして北海道に戻ってきてくれた、というのも大きいかもしれません。
活動の引き出しが増えた
ーー金子選手の活動では、チャリティで得た資金でNPO法人E-LINKさんを支援するとのことですが、E-LINKさんとの繋がりは元々あったのでしょうか?
笹村)いえ、初めてですね。金子選手とチャリティの話をしたとき、北海道でこどもたちのために使いたい、と本人からは要望を受けていました。
そういった意向を踏まえて、過去に繋がりがあるものないもの含めて色々な選択肢を本人に見てもらい、その中で決めてもらいました。理念や活動が特徴的だったことなどが本人の目に止まったのだと思います。
ーー笹村さんがNPO法人の方とお話しされた時、どんな反応が返ってきましたか?
笹村)とても喜んでいただけましたね。「なぜ突然うちが⁉︎」と、いい意味での驚きもあったようです。
「選手が応援してくれてるということが喜びになったり、自信やモチベーションにさらにつながる」ということも言っていただけたりします。そういう意味で、むしろ今まで繋がりがない方と繋がるということも大切だと思いました。
ーーこの活動に取り組んだからこそ感じる、今後のSC(Sports Community)活動に活かしていきたいことや、選手を通じた社会貢献活動について伺ってもよろしいですか?
笹村)クラウドファンディングも、選手の記録に関連付けたチャリティオークションも、初めてトライしたことで、自分たちの中の引き出しが増えたというところが大きいと思ってます。実際やってみて、どれくらいの反応があるのか、ということも見えてきました。
今回は2つの仕組みを作りましたが、今後、どちらの方法も他の選手に応用できるなと。ありそうでなかったと言いますか、できていなかったところでもあるので、今後のヒントになればいいなと自分でも思っています。試金石と言いますか、実際やってみて良かったなと感じています。
スタジアムで試合を見てもらうというような、ファンとの繋がり、接点が少なくなっている今、このような活動をファンと選手が一緒にやることで、選手とファンを繋ぐきっかけになるといいなと思います。
これからも多くの選手と取り組んでいきたいですね。
社会貢献やスポーツの在り方が変わった1年
ーーNPBの球団では、他のスポーツリーグと異なり、選手個人にフォーカスした活動が特徴的だと思いますが、実際にどのように感じられますか?
笹村)そう言われたら、そうかもしれませんね。あくまで私の仮説ですが、プロ野球は歴史が長い分、選手も比較的知名度のある選手が多いので、そう感じるだけなのかもしれない、とも思います。
卵が先か鶏が先かじゃないですが、やはりその選手がどれだけ知名度があるかというのも、活動の認知度や広がりに影響すると思います。サッカーでも本田圭佑選手が何かをすれば大きく扱われるようなイメージですね。
ーー2020年は、いろいろな価値観が大きく変わった1年間でした。アスリートの発信の面でも変化があったのかなと。
笹村)去年はコロナ禍というのもありましたし、アメリカで人種差別の問題があったりする中で、アスリートが発言したり自分の意見を主張するシーンも増えてきましたよね。昔は、スポーツ選手の発信はどちらかというと、政治宗教は避けて通るみたいな感じだったのが、その部分でもスポーツを取り巻く環境が変わった年なのかなと思います。今後はもっとそういったことがスタンダードになってもおかしくないんじゃないかなと。
ーースポーツ界もアスリートも、少しずつ変わってきていると感じます。
笹村)社会貢献をするという文脈においても、選手が自発的に活動できたり、自分が関心のある課題に対して何かアクション起こすことが、より日常的というか普通になるのかなと。それを球団としてもバックアップできる体制を整えておきたいと思ってます。
ーーありがとうございました。新たな形の社会貢献活動を、これからも楽しみにしています!
編集部より
記事でご紹介した2つの活動は現在も実施中です!
▼詳細はこちらから
■鶴岡慎也コーチ兼捕手によるクラウドファンディング<鶴の恩返し>
期間:2021年7月5日(月)~8月9日(月・休)
■金子弌大投手による<マイルストーン・オークション>
落札期間:2021年7月9日(金)20:00~7月18日(日)22:00