スポーツ

【ドイツより】洪水被害にあったワインを救出!?~FCバサラマインツ・地域貢献の取り組み~

海外で戦う日本人も、現地で社会貢献活動を行っていることをご存じですか?

ドイツの都市マインツをホームタウンとし、サッカーでドイツ6部リーグに所属するFC BASARA MAINZ(以下、FCバサラマインツ)では、ドイツ全国で続いた大雨が原因で2021年7月に起きたアール川洪水の被害にあったワイン醸造所(ワイナリー)の支援活動を行いました。
アール地方は、シュペートブルグンダーという優良な赤ワインを生産する、国内外でも有名な産地です。今回の大規模な洪水により流されたワインは、推定64億円に及ぶとも言われています。
日本人の多いクラブとして活動するFCバサラマインツが、どのようなきっかけで災害支援に取り組んだのか、取り組んでみて感じたことなどをフロントスタッフの山極智季さん(以下:山極)と、選手の小柳孝輔さん(以下:小柳)、鈴木楓也さん(以下:鈴木)の3名の日本人の方にお話を伺いました。

小柳、山極、鈴木今回の災害支援に参加した、小柳孝輔さん(左)、山極智季さん(中央)、鈴木楓也さん(右)

『育成クラブ』としてのFCバサラマインツ

ーーまず、FCバサラマインツはどのようなサッカークラブなのでしょうか?

山極)FCバサラマインツは、ドイツの都市マインツをホームタウンとする日本人が作ったサッカークラブです。現在、ドイツ6部リーグに所属し、サッカー選手としてはもちろん、人としても成長して、世界で通用する選手を育成するというクラブを目指して活動しています。日本人だけでなく現地のドイツ人やいろいろな国の選手を受け入れており、彼らが成長して上位リーグのチームに、というようなステップアップができる『育成クラブ』であるということを大事にしています。

ーー日本人が作ったクラブ、ということですが、現地ドイツからはどのように受け入れられているのでしょうか?

山極)マインツの地域にある他のクラブは100年続いているクラブもあります。競技の部分では、マインツ市内でもトップ5に入ることができており『育成クラブ』としても周りからも評価はされていますが、私たちFCバサラマインツのサポーターの数はまだまだ少ないと感じています。自分たちの試合のときのお客さんの数や、地元企業からのスポンサーの数などの面から見ると、もっと地域に受け入れてもらえるように頑張らなくてはと思います。

アール川洪水被害~支援にいたるきっかけ~

ーー2021年8月、アール川洪水での支援活動をすることになったきっかけはどのようなものでしたか?

山極)今回、ドイツでは記録的な大雨になりました。私たちの周辺地域では大きな被害はなかったのですが、近くの川の増水を目の当たりにし、ニュースでもずっと放送されている話題になっていました。
そのタイミングでたまたま、FCバサラマインツの会長である山下の知り合いで、ドイツでワイナリーをされている日本人の方から、「自分の知り合いのワイナリーの復旧活動を、もしよかったらボランティアで協力してもらえないか」とお話をいただき、「是非やらせてください」という形で実現しました。日本から来ている選手たちにも『FCバサラマインツだからできる経験』をたくさんしてもらいたいと考えていたので、選手にも声をかけ、小柳と鈴木の2人と一緒にボランティアに参加してきました。

ワイン

ーー実際、小柳選手と鈴木選手は洪水のあったワイナリーに活動で支援に行くと聞いてどう思いましたか?

小柳)声をかけてもらったときには、どのような被害状況なのかあまり想像できていませんでした。実際参加したいと思った理由として、「このような経験ができる機会もないだろうな」というのが正直に言うと一番強かったです。行く前にいろいろとお話も聞いて、「もし自分たちがその被害を受けていたら」と自分たちに置き換えて考えてみると、すごく大変だろうなと想像していました。

鈴木)私は東日本大震災のとき、「ボランティアに行きたいな」と思ったのですが、結果的に行動に移せなかったという経験がありました。今回、ドイツでしかできないことだというのもありますが、「困ってる人を助けられる」「自分のひとつの行動が助けになればいいな」と思い、すぐに行くことを決めました。

鈴木楓也選手鈴木 楓也 選手

「こいつらやるな!?」夢中の作業

ーー実際ワイナリーに行かれて、どのような活動をされたのでしょうか?

山極)私たちが今回お手伝いさせて頂いたのは、倉庫に瓶詰めされて保管してあったワインで、浸水して水に浸かってしまったものをキレイにして、種類ごとに仕分けをする作業です。洪水の影響でバラバラになってしまったものを、自分たちが仕分けをして、それをまた箱に詰めて、販売できるような形にまでする、という作業の手伝いをさせて頂きました。今回のワインは、チャリティーワインとして売り出されています。

ーー大変そうな作業ですね。

山極)試合の翌日のオフの日で、前日、私は運営、選手2人はほぼ90分出場していたので、今回の1日中の作業を終えると正直ボロボロでした。(笑)

小柳選手小柳 孝輔 選手

 

ーーワイナリーの方や、現地の方の反応はいかがでしたか?

山極)自分たちの地域から車で2時間ほどの少し遠い地域なので、FCバサラマインツのことも知らない人ばかりでしたが、「どういうチームなの?」って聞いていただけて、少しは自分たちの話もさせてもらえました。
あとは、私たち3人でチームとして黙々と作業していたところ、作業のスピードが速かったのか、次から次に私たちのところに仕事が来てましたね。「こいつらやるな!?」というような反応はあったのではないかな、と思います。(笑)
最後にも、これで終わりだと思ったら、私たちの作業が早いので「残ってるこれもう1ケースだけお願い!!」のような形で追加がきました。
現地の人たちからすると、「日本人」という括りでももちろん見ると思うので、そういう面では良い印象とかは持ってもらえたのかなとは思いますね。(笑)

ーー小柳選手と鈴木選手は印象に残ることはありますか?

小柳)昼ごはんでいただいたミートソースのスパゲッティがすごくおいしかったです!

鈴木)ブドウがものすごくおいしかったです。(笑)
でも想像以上に大変でしたね。それ以外のことを考える暇がないというくらい夢中で作業をしていました。

ーー現地のフルーツを食べられたのは、それもよい経験ですね!現地の方も、ボランティアの方たちにそうしたものをふるまったり、優しい方が多かったのですね!

集合写真

日本にいながらできること

ーー実際にアール川洪水のワイナリーさんを支援するために、日本にいる人たちにできる事はありますか?

山極)まずは、こうした洪水があった事実をもっと多くの日本の方に知っていただくことが重要だと思っています。日本にいる方々にも、情報として拡散していただけるとありがたいです。お手伝いさせていただいたときに、ほかのボランティアで現地の方も、もっと多くの方に日本に向けて発信していきたいとおっしゃっていました。
支援という意味では、支援金も募集していますが、まずは状況を知っていただくことが一番うれしいことかなと思います 。

ーーありがとうございました!!

For AHR Project
※2021年7月にアール地方の洪水で被災された緊急支援と復興支援に貢献するため、アール地方のワイナリーで3年間以上も研修生活を過ごした日本人ワイン醸造家坂田ちえさんが中心となって立ち上げた任意団体「アール地方洪水被害・復興支援委員会」のページです。

 

写真提供=FC BASARA MAINZ

長澤和輝選手(名古屋グランパス)
【対談】Jリーガー・長澤和輝 × 山本化学工業 代表・山本富造!アスリートと経営者が考える世界と日本の差とは!?ウェットスーツの素材メーカーとして世界トップシェアを誇る山本化学工業株式会社。彼らは当時主流であった石油からのゴムづくりではなく、持続可能な素材として石灰石からの製造にこだわり、その考え方と機能性、品質で世界からの高い評価を受けてきました。 (第1回、第2回、第3回 はこちら) 今回は山本化学工業株式会社の山本富造社長(以下、山本)と、J1リーグ名古屋グランパスに所属する長澤和輝選手(以下、長澤)との対談の様子をお送りします。 長澤選手は大学卒業後、ドイツにて2年半プレーしており、ヨーロッパと日本をともによく知る数少ない選手。 お互い世界に目を向けてきた企業とアスリート、どのような対談になったのでしょうか...

編集より

今回は、FCバサラマインツの3人を取材しました。既にスポーツクラブと地域の関係性が濃くできあがっているドイツにおいて、新規クラブ、ましてや日本人中心のクラブが地域に入り込むことは容易ではない中、競技面でも地域貢献の面でも考えを巡らせている山極さん。難しくてもアンテナを貼り、発信をし続けたからこそ、このような活動にも参加できたのではないかと思います。

選手の2人も、きっかけは「ドイツでしかできない経験を」という部分も多いでしょうが、そうしたきっかけを通じて、現地の理解や地域貢献の形を経験することは、今後の人生にとって非常に大きな経験になるはずです。

異国の地でサッカーだけでく、多くのことを頑張る彼ら3人のこと、そしてFCバサラマインツをこれからも応援します!

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA