スポーツチームが“女性の課題解決”に取り組む。
多くのスポーツ、スポーツチームが掲げているものですが、その具体的な事例を女子サッカーなでしこリーグに所属する大和シルフィードとパートナー企業の取り組みから見ていきます。
企業それぞれが考える“女性の課題”に対し、スポーツチームが一緒になって場をつくり、考える。オンライン・ピル処方サービス『スマルナ』を展開する株式会社ネクイノ、首都圏を中心に約140店舗の薬局を展開する薬樹株式会社の2社への取材から、女性の持つ健康課題にスポーツチームとどのようにアプローチしていくかを考えていきます。

スポーツファーマシストと管理栄養士を派遣|薬樹株式会社
大和シルフィードの健康サポートパートナーである薬樹株式会社は、1979年に神奈川県大和市で創業し、首都圏を中心に約140店舗の薬局を展開する企業です。大和シルフィードに『スポーツファーマシスト』『管理栄養士』を派遣し、専門的な立場からサポートしながら、選手たちの健康を身近にサポートする存在です。
実際にサポートされているスポーツファーマシスト(薬剤師)の古川美紀さん(以下、古川)、管理栄養士の小滝綾乃さん(以下、小滝)に話を伺います。
ーー女性のスポーツとの関わりで特殊な部分はありますか?
薬樹 スポーツファーマシスト 古川)月経関連はやはり大きな課題です。最近は自ら言い出せる風潮にもなってきましたが、とくにスポーツではその課題が改善されないとパフォーマンスにも直結してきます。改善できる可能性があるのに取り組まないのはもったいない。まずはそこに気づいて相談をしてもらい、また、改善の策だけを指導するのではなく寄り添えるように対面でのコミュニケーションも意識しています。
薬樹 管理栄養士 小滝)月経にも関わるのですが、“エネルギー不足”は課題だと捉えています。練習・試合、そして仕事など、これだけ多く活動をしている中で、食事量と運動量が見合わないことも出てきてしまいます。エネルギー不足が原因で月経が止まってしまったり、そこから骨粗鬆症に繋がることもあるので、食事のところはいま以上にもっと意識してほしい課題です。
古川)とくに中高生である育成世代の意識は非常に重要です。大和シルフィードでも、アカデミーの選手だけでなく保護者にも参加していただく月経や栄養に関する講義をしました。親子でも聞きづらい家庭もある中で、会話をするきっかけになったというお話もいただいています。

チームとともに“地域の薬局”へ|薬樹株式会社
チームと同じ大和市を創業の地とし、地域に根差した薬局である薬樹は、大和シルフィードを通して“薬局の役割”も地域に広めています。
ーー大和シルフィードのホームゲームでは、『健康サポート☆スタジアム保健室』と題した健康相談のブースが設けられていました。薬局で健康相談もできる、というのは、まだまだ知られていないことのようにも感じます。
古川)現在、「健康サポート薬局」というものがあります。健康についてお気軽に相談していただくことで、食事などセルフケアでまかなえることをアドバイスしたり、必要であれば医療に繋ぐことで、その方の健康を支えていく制度です。
弊社も「処方せん屋から健康屋へ」というフレーズを掲げながら、地域のかかりつけ薬局として未病や予防、在宅医療などの領域までトータルでサポートすることを目指しています。「人生をずっとサポートできる」ような食事や運動などに関するイベントも、私たちの重要な活動の一つです。
小滝)薬をお渡しするときに食事の話になることが多くあります。数値が悪くなってしまったときに、薬剤師さんから「食事はどうですか?」と聞くと、いろいろとお悩みが出てくるお客様も少なくありません。そうしたときに、弊社の担当管理栄養士に繋いでいただくことで、食事についての相談も可能な体制をとっています。
ーー実際にブースを出展してみていかがでしたか?
古川)“女性の健康”に関する相談を受け付けたり、クイズを出させていただきましたが、男性も多く立ち寄ってくださいました。男性の生理に関する問題の正答率も高く、少しずつ“女性が過ごしやすい社会”になりつつあると実感することができました。
また、女性も自身の健康に対して「いつものことだから大丈夫」という“思い込み”をしていることがあります。クイズを通して、そうした気づきに繋げることができたのでとても満足しています。
ーー今後、大和シルフィードとともに目指していきたいことを教えてください。
古川)まずは、選手たちがよいパフォーマンスを発揮できるよう、選手が問題と思っていないことも私たちがしっかりと見つけ、解決に向けてサポートしていきたいと思っています。また、こうしたスポーツの知見は一般の人たちにも役立ちます。受験の日や大事なプレゼンの日に向けた女性のコンディショニングなど、スポーツを入り口にしながら“健康”に関することを多くの人に伝えていけたらと思っています。
小滝)選手のサポートももちろんですが、それを地域の笑顔にも繋げていきたいですね。薬剤師・管理栄養士が気軽に相談できる人として、もっと地域の皆さんに認知していただき、健康について気軽に相談に来ていただけるように努めていきたいと思っています。

サービス提供を通して選手たちの“共通の話題”に|『スマルナ for Sports』
オンライン・ピル処方サービスの『スマルナ』は、2022年のフウガドールすみだレディースを皮切りに、『スマルナ for Sports』としてスポーツチームとの連携を始めています。月経問題の解決方法の一つとして、ピルを医師の監修のもとオンラインで処方できるサービスを展開するスマルナが、なぜスポーツチームとの連携をするのでしょうか?そこには、「創業当時から、スポーツにおける女性の健康課題に取り組みたいという想いがあった」とスマルナを展開する株式会社ネクイノの後未央さん(以下、後)は言います。
大和シルフィードの選手たちは、サッカー選手としてプレーするだけでなくパートナー企業での仕事もしています。体調のコントロールが難しいと感じている選手、バランスを取りながらできている選手など、個々に感じていることはさまざまですが、『スマルナ for Sports』を導入したことで「共通の会話がチーム内に生まれた」とのことです。男性の指導者も、知識を身につけるだけでなく、“意識”が変わり、コミュニケーションが変わることにもつながっています。
同じチームの選手とはいえ、月経やピルの話はなかなかしづらいもの。共通のツールができることで、悩んでいた選手が相談しやすい環境になっていることが大きな効果に繋がっていそうです。

女性アスリートを通じて、まずは“知ってもらう”|『スマルナ for Sports』
「アスリートである以前に、生物学的女性としての健康を害さない」ためのサービス提供を行うスマルナ。とくに思春期、第二次性徴の期間に生理が止まってしまうと、大人になってから戻すことが難しい。若いアスリート自身、指導者もそうしたことを知らずに過ごしていることも多い中で、まずは“知ってもらう”ことを大事にしています。
後)大和シルフィードさんとの取り組みでは、女性アスリートの生の声を多くいただいていて、私たちとしても得られるものが大きいです。パートナーとして信頼関係を築きながら、選手の中でも口コミで広がっていきます。こうした選手たちが使っていただくことで、ホームゲームなどで出店した際のファンの方の印象も変わってきます。ピルというもののイメージそのものが変わっていくと嬉しいですね。
