Jリーグ・モンテディオ山形では、オフィシャルパートナーである株式会社SCOグループとともに、2024年から山形県内すべての新小学1年生へオリジナルキャップを寄贈しています。薄い青を基調としたオリジナルキャップは子どもたちにとって嬉しいプレゼントになるだけではなく、今回の取り組みにはクラブや企業の“子どもたちへの深い想い”が詰まっています。
株式会社モンテディオ山形 執行役員 鈴木順さん(以下、鈴木)と、株式会社SCOグループ代表執行役員 藤本公浩さん(以下、藤本)に、その背景を伺うとともに、子どもたちへの想いについてお話いただきました。
「地域の子どもたちをSCOグループとモンテディオ山形が応援している」本プロジェクトに込められた想いとは?
ーー今回モンテディオ山形さんが小学1年生にキャップをプレゼントすることになったきっかけは何ですか?
モンテディオ山形 鈴木)キャップは目印になるものですし、車社会である山形県で生活していく上で、ドライバーやまわりの人から“目立つ”というのは、子どもたちの安全にもつながります。夏場であれば熱中症対策にもなるなど、キャップの持つ役割は多いですよね。
それだけでなく、「このオリジナルキャップで地域の一体感やコミュニティができてくれたらいいな」と考え、モンテディオ山形のオフィシャルパートナーであるSCOグループさんに昨年に引き続きお声掛けさせていただきました。
ーーSCOグループとして賛同したポイントについてどのように感じていますか?
SCOグループ 藤本) モンテディオ山形さんでも『U-23マーケティング部』や『O-60モンテディオやまびこ』など、さまざまな年代に向けたプロジェクトがスタートしていますが、今後の日本を変えていく可能性が一番あるのは、やはり“子どもたち”だと思っています。
そんな子どもたちに未来への明るい希望をもっと持たせたいと私個人としても考えており、「子どもたちのために大人たちができること」にともに取り組もうというモンテディオ山形さんの考えに強く賛同しました。
キャップの防犯性や機能面もありますが、“子どもたちとのつながりができる”ということに対し、是非ご協力したいと思いましたし、やるべきだという使命感も芽生えました。

人口減少・少子化が進む中でも「大人たちは君たちの味方だよ」という安心感
ーー「子どもたちのために」という想いがお互いに強くあることがよくわかります。人口の減少や少子化の問題がある中で、いまの子どもたちが持っている課題をどのように捉えられていますか?
鈴木)山形県内の状況で言うと、キャップ贈呈の対象となる小学1年生は、昨年が約7,000人、今年が6,666人と減少しています。来年になれば6,000人を切る可能性があり、人口全体が減るスピードより子どもたちが減るスピードの方が早いと感じています。核家族化や共働き世帯の増加など、都市部同様の社会的変化も同時に起こる中で、“地域で子どもたちを育てていく”ような、地方都市ならではのコミュニティが必要になると思っています。
ーー都市部とも同様の課題を抱えながら、人口減という地方特有の課題もあるのですね。
鈴木)とくに課題なのが、“学校との距離”です。子どもが減ると学校の統廃合が進みますが、山形県内で小学校が統廃合するとなると、もしかしたら隣町まで通わなければならないということも起こりえます。こうした物理的距離の影響が、子どもたちの学びや体験を阻害していくことが今後も増えてくる可能性があるというのは、地方都市ならではの課題かもしれません。
ーー藤本さんは今の子どもたちを取り巻く環境や、大人の子どもたちに対する向き合い方をどのように捉えられていますか?
藤本)さまざまな点で“課題”として捉えられがちですが、私はできるだけポジティブに捉えたいと考えています。そう思うと、今の子どもたちは選べる環境が多い面もあり、まわりの大人が子どもたちにしっかりと伝えていくことが大切です。
子どもが減っているという事実はあり、おそらくこの先も大きな変化は起こらない状況の中では、今の大人たちが「子どもたちにとっていい環境や教育とは何か?」ということや、「未来の子どもたちをどう育てていくか?」ということを本気で考えていくことが重要ですよね。学校というオフラインの場をどう活用していくのか?どこにどんな時間の費やし方をして、どんな学びがあるとよいのか?私たちの時代にできなかったことも含めて、ポジティブに考えていけるのではないかと思っています。
ーーなるほど。さまざまな選択肢のある時代だと考えると、子どもたちの環境についても明るく前向きに考えられそうですね。いまの大人たちは、子どもたちに対してどんな影響を与えていくべきなのでしょうか?
鈴木)地域のコミュニティやそもそもの環境など、できれば今よりもよいものを残してあげたいと思いますし、最低限今と同じものを残さなければいけないですよね。今の大人たちが楽しんで地域を元気にさせていけば、それを見た子どもたちが「自分も大人になったらあんな大人になりたい」「やっぱり地元いいね」と思うようになります。こうした循環を作ることが、大人たちができることであり、子どもたちの将来にとっても地域の将来にとっても素晴らしいことに繋がるのではないかと思います。山形が好き、山形に帰りたい、また行きたいと思える場所に常にしておくことが大事ですよね。

モンテディオ山形は“日常のそばにある存在”で
ーーモンテディオ山形の鈴木さんの目から見て、モンテディオというクラブ、そして山形県民はどのような特徴がありますか?
鈴木)山形県の人たちやモンテディオ山形に関わる人たちは、皆さん“ナチュラル”だなと感じています。食べ物や温泉など本当に豊かな資源がある地域ですが、それが当たり前にあるものだからなのか、それをひけらかすこともない奥ゆかしさのようなものがクラブにも体現されていると思います。
それぞれの立場で自分たちがやれることを精一杯やる、そのベクトルは一緒で、スタッフもサポーターも含めて「失敗してもいいから前向きに」という空気感のあるチームです。そういう山形県の人たちの今の空気感のままで勝ってJ1に上がることが何より大事だと思います。
ーーSCOグループさんも2022年以降モンテディオ山形のオフィシャルパートナーとなり、関わりを強めています。藤本さんから見たモンテディオ山形とはどんなクラブですか?
藤本)「誠実で暖かくて粘着性のあるクラブ」だと思っています。一度このクラブに関わり、ファンになってしまったら“離れづらい”不思議な力を感じます。SCOグループにも、熱心なファンが何人もいて、遠くてもモンテディオのために山形に頻繁に行くような社員も出てきています。
企業にとっても、モンテディオが頑張っていることが僕らも頑張る活力になっています。試合の勝敗だけでなく、頑張っている姿勢も含めて、僕らが頑張れる理由の一つになっていることは間違いないです。

子どもたちの成長を地域全体で支えていく
ーー最後に今回のオリジナルキャップの寄贈を通じて、子どもたちにどんなメッセージを伝えたいですか?
藤本)子どもたちには「与えられた環境を使って未来を創造してほしい」と伝えたいです。子どもたちのためにと思っている大人がたくさんいることが伝わればと思います。
鈴木)子どもらしく外で元気にのびのびと遊んでほしいですね!そのときにこのオリジナルキャップが、“仲間の証”になってくれたら嬉しいです。
大人から見ても、モンテディオのサポーターがこのことを認知してくれて、このキャップを被った子どもが困っていたら声をかけるなど、キャップをきっかけに地域の安心安全につながっていってほしいです。
ーーありがとうございました。







写真提供:モンテディオ山形