信州特集

「ヨーグレットの会社」が生まれ変わるとき|80年の歴史をもつ新米企業『アトリオン製菓』が信州で始めた共創の物語

アトリオン製菓

『ヨーグレット』『ハイレモン』『パチパチパニック』ーー。

誰もが一度は手にしたことのあるお菓子たちを製造してきた会社は2023年、長年「明治産業」として親しまれてきた社名を「アトリオン製菓」に変更し、“独立した菓子メーカー”としての歩みを始めました。戦後間もない1945年に創業し、以来80年にわたり長野県須坂市の地で菓子づくりを続けてきたその歴史は、地域と深く結びついたストーリーに満ちています。

地元スポーツチーム「信州ブレイブウォリアーズ」との取り組みもその一つ。商品だけでなく、企業そのものを“知ってもらう”ための挑戦が始まっています。今回は、アトリオン製菓株式会社 代表取締役社長の山下奉丈さん(以下、山下)、サプライチェーン推進課の藤原梨恵さん(以下、藤原)からお話しを伺いました。

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「名もなき工場」から“独立したお菓子メーカー”へ

ーーアトリオン製菓について教えてください。

山下)皆さんがよく知っているお菓子ですと『ヨーグレット』や『ハイレモン』、口の中でパチパチはじける『パチパチパニック』というブランド商品を製造し、タブレット菓子やグミ、キャンディーなどのジャンルを中心に全国向けの菓子を製造・販売しています。2023年の5月に親会社が株式会社明治から丸紅株式会社に変わり、6月に『アトリオン製菓株式会社』という社名になりました。

ーー『アトリオン製菓株式会社』へ社名を変更したことで、何か変化はありましたか。

山下)“明治グループ内の1つの工場”に近い下請け的な役割を担っていた会社が、親会社と社名の変更により“お菓子を作るメーカー”としては独立した自前の動きを取るようになったのが大きな変化です。

依頼されたものを作って出荷することがメインだった仕事から、そもそも何を作るのか、なぜそれを作るのか、どんな狙いがあり、ターゲットは誰なのかを、自分たちでまず決めるところからスタートするようになりました。
例えば、新しい試みとして商品を手に取ってもらいやすいように、ヨーグレットという商品では、キャラクターデザインのパッケージを販売しています。これまでの仕事のやり方から脱却して、どんどん新しいことに挑戦していくメーカーへと生まれ変わっています。

アトリオン製菓

須坂とともに80年|地域と社員との関わり

ーーアトリオン製菓の社員さんは、地元出身の方が多いのですか?

山下)正社員、契約社員含め250名ほどの会社ですが、大半が私たちの工場がある長野県の北信エリアと呼ばれる地域に住んでいる方々です。「過去に自分の親族が会社で働いていた!」という社員もおり、何世代にもわたって関わってくださる方がいることに80年という歴史を感じます。

ーー地元との結びつきが強いのですね。

山下)先日、会社創立当初に弊社で働いていた現在93歳の方にお話を聞く機会がありました。
当時会社で作っていたキャラメルの作業工程は、現在のものにつながる要素が多々あり、また、その時代には須坂駅前のダンスホールがとても盛り上がっていた話など、続いていること、変わってきたことを知ることができ、とても興味深かったです。

そもそも弊社が長野県須坂市で創業したのは、戦時中の工場疎開先が必要だったという背景があります。時代の要求と偶然の巡り合わせから始まったこの地域との関係は80年続いており、アトリオン製菓としても須坂への想い入れはとても強いです。

アトリオン製菓

“スポンサー”ではなく“仲間”として|信州ブレイブウォリアーズとの共創

ーーアトリオン製菓は長野市を拠点とするバスケットボールチーム『信州ブレイブウォリアーズ』のスポンサーになっています。どんなきっかけがあったのでしょうか?

山下)社名が変わって一番の変化は、「地域における社名認知がリセットされた」ことかもしれません。地域の方々に長年「明治」と覚えていただいた弊社、当然ですが「アトリオン」に変えた直後は“誰も知らない会社”になりました。

「アトリオン製菓が、須坂において全国に知られるお菓子を作っている会社だということを知っていただきたい」と思っているところに、信州ブレイブウォリアーズの方から何かご一緒できないかとお声かけいただいたのがきっかけです。

スポーツチームのスポンサーが、“社名を知っていただく”という目的にどこまで繋がるのかはわかりませんでしたが、私自身もスポーツ観戦が好きで、地域の方々が一緒に集まって熱狂できる“特別さ”を感じていましたね。

ーー藤原さんは、信州ブレイブウォリアーズにスポンサーを始めた当初、どんな印象を持ちましたか?

藤原)育休明けにアトリオン製菓が信州ブレイブウォリアーズのスポンサーになることを知りました。これまでそうしたスポンサーには縁が無かったので驚きましたが、私自身バスケットボールが好きで個人的にずっと応援しているチームなので、すごく嬉しかったですし、いまでも「関われる機会ができて幸せだな」と思いながら担当しています。

ーー昨シーズンも信州ブレイブウォリアーズといろいろさまざまな取り組みをされていますね。

藤原)ホームゲーム会場で子どもたちが楽しめる『ブレアーパーク』というスペースに協賛し、遊具に「アトリオン製菓」のロゴや「ヨーグレット」「ハイレモン」などのデザインをつけ、子どもたちに楽しんでもらいました。

アトリオン製菓

藤原)アトリオン製菓の広報PRキャラクターである“阿鳥主任”と一緒に会場に行き、そこで阿鳥主任が遊んでいる映像を撮影したり、試合会場でパチパチパニックをお客さんに配布したりもしました。お客さんに喜んでいただくだけでなく、会場に来ているお客さんと近くで交流できる機会として、こちらも貴重な体験ができました。

山下)TikTokでも、阿鳥主任と信州ブレイブウォリアーズの選手とで“ヨーグレット早剥き対決”でコラボさせていただきました。内容としてはちょっとくだらないものかもしれないですが、アトリオン製菓が絡むことで普段見られない選手の表情や、バスケットボール以外のことをしている姿を見れるような企画になったらと思い、こちらからご提案しました。大きな身体の選手がヨーグレットを一生懸命に剥いている姿はブースター(ファン)にとってはおもしろい動画ですし、普段見られないような笑顔にほっこりしましたね。

@shinshubw 阿鳥主任って誰⁉︎ アトリオン製菓コラボ企画第2弾🌟 阿鳥主任とアトリオン製菓についてはこちら!対決のオフショットも公開中! https://x.com/atrion_seika ##bリーグ##bleague##japan##basketball#バスケ #信州ブレイブウォリアーズ #小玉大智#アトリオン製菓 #ヨーグレット #コーラパンチ #ハイレモン ♬ オリジナル楽曲 – 信州ブレイブウォリアーズ

ーー信州ブレイブウォリアーズだからこそ、スポーツだからこそできたなと感じることはありましたか。

藤原)会社のみんなで観戦に行ったときに、一緒に働いている人の新たな一面を見られたのはすごくよかったと感じたことです。実際に試合を観て信州ブレイブウォリアーズのことを好きになった人もいたり、あまり話したことのなかった人がバスケ好きとわかって親近感が湧いたり、社内での話題が増えて、会社全体がいい雰囲気になっているのではないかと思います。

山下)スポーツだからこそ、一緒に応援することで“一体感”や“仲間意識”が生まれるのがいいですね。一生懸命応援して勝ったら嬉しいですし、その時間をその場にいるすべての方と共有できる感覚は、ほかではなかなか得られないものです。
阿鳥主任のサインを求める方も増えてきていて、まさにブースターもスポンサーも“一緒に応援する仲間”と思っていただけていることを実感しています。

ーースポンサーではなく、一緒に応援する仲間というのが素敵ですね。

山下)信州ブレイブウォリアーズを通じてアトリオン製菓のことを知りましたと言ってくださる方も増えました。別のイベントに参加した際も「ホワイトリングでパチパチパニックもらったよ」と言っていただくなど、一緒に活動してよかったなと思える場面が増えてきています。

地域と人に誇れる会社へ

ーー今後、アトリオン製菓はどんな企業になっていきたいと思っていますか?

山下)働いている人たちが、胸を張って「アトリオン製菓で働いている」とまわりの方に言えるような会社にしていきたいです。そのために多くの方にアトリオン製菓を認知してもらうことが重要です。

信州ブレイブウォリアーズとも、広告を出して名前を知ってもらうだけではない取り組みをもっと増やします。例えば2025年3月には親子10組を招待し、アトリオン製菓の工場見学をしたあとにホワイトリングへ移動して信州ブレイブウォリアーズの試合を観戦するという共同企画を開催しました。こうした活動を通じて、“特別なきっかけをくれる存在”として覚えていただければ嬉しいです。

ーー新たな地域とのつながりが広がっているのですね。

山下)アトリオン製菓が1つのハブとなり、いろいろな形で地域とのつながりや盛り上がり、楽しさが生み出せるのではないかと思っています。それぞれのやりたいことを聞き、すべての活動に関わってくださった方とポジティブなお互いにいい関係を築き、この地域をよりよいものに“共に創り上げていく”ことが理想です。

今年は、別の取り組みのご縁からアイドルグループSKE48の伊藤虹々美さん(長野県出身)が弊社を訪問してくれたのですが、その際には、信州ブレイブウォリアーズの選手とのフリースロー対決も実現しました。私たちの一つ一つの取組が繋がって新たなおもしろいことが生まれた、大変嬉しい実例です。この地域の企業が持つあらゆる強みや特長も、掛け合わせていけばさらにワクワクすることに発展するのではないかと思いますし、私たちの姿勢としても“決められたことだけをする”のではなく、常にそれ以上のことに挑戦していきたいですね。

藤原)アイデアマンである山下社長に引っ張られ、私たちも一緒にやっていこうと動いています。今後取り組んでいくことも、さまざまな発信に繋げることで会社全体が良くなっていくのではないかと期待しています。

ーーありがとうございました!

 

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