バスケットボール

太田市から広がる「和と輪の精神」|人を想い、地域をつなぐ栄工業の60年目からの挑戦

群馬県太田市で創業60年を迎えた株式会社栄工業

塗装や組み立てといった製造の現場で地域を支えながら、創業当時から「和と輪」を理念に掲げてきました。

“和”は助け合い、“輪”はそのつながりの広がり。

社員同士が自然に支え合い、家族にも笑顔が生まれる。そんな人の温もりが、会社の文化として根づいています。

Bリーグの群馬クレインサンダーズとのオフィシャルパートナー契約をきっかけに、地域と企業、社員と家族、そして街とスポーツが新たな形でつながり始めました。今回は、これまでの歩みとこれからの挑戦について、代表取締役社長の宇田裕紀氏(以下、宇田)と常務取締役の西口浩太郎氏(以下、西口)にお話を伺いました。

栄工業

チームが1つになる感覚、スポーツで気づいた“和と輪”の力

ーー群馬クレインサンダーズのオフィシャルパートナーとして、今シーズンで3年目になりますが、宇田さんはこれまで何かスポーツをされていたのですか?

宇田)私は小学生の頃に野球をしていて、中学に入るとバスケットボール部に入りました。ちょうど漫画『スラムダンク』が流行して、バスケットボールに心を惹かれたのがきっかけです。1勝もできない弱小チームでしたが、部員全員で目標に向かって猛練習し、最後の夏には強豪校相手に勝利したこともありました。

そのときに感じた「これがチームの一体感か」という想いは今でも忘れられません。とくにバスケットボールは5人しかコートに立てないので、チームで何かをするときは1人ひとりの思いや気持ちが雰囲気や結果に大きく影響することを学びました。

ーー「チームで1つになる」という宇田さんの感覚は、栄工業が大切にしている理念の“和と輪”という言葉にも通じているように感じます。

宇田)当時はただ夢中でやっていただけですが、振り返ると、仲間と支え合うことの大切さを自然に体で学んだのかもしれません。バスケットボールも、高校時代に熱心に取り組んだバンド活動も、仲間と呼吸を合わせて一緒に目標に向かって取り組むことは同じです。その積み重ねが今の私の原点だと思いますし、栄工業の理念とも重なり合っているように感じます。

だからこそ、“和と輪”の理念を大切にしたいと思いますし、ただ標語として掲げるだけでなく、実際の仕事の取り組みの中でしっかりと実践していきたいと思っています。

栄工業

“和と輪”が育てる社風、人を信じる温もりが組織を強くする

ーー宇田さんが入社された当時、“和と輪”の理念はどのような形で会社に浸透していたのでしょうか。

宇田)私は大学卒業後、システム関連の会社に勤めていたのですが、2代目社長である父から「会社を手伝ってほしい」と言われて地元である群馬県太田市に戻ってきました。当時の思い出もいろいろありますが、入社して最も驚いたのは、年配の社員の方々のあたたかさです。

根を詰めて仕事をしていると、「ちょっと休憩してきなよ」など自然に声をかけてくれたりするなど、助け合いの空気が職場全体に流れていて、誰かが困っていたら当たり前のように周囲が動いたり、命令ではなく思いやりで支え合う文化が根づいていると感じていました。当時40人ほどだった社員数は、現在110人近くまで増えましたが、会社が大きくなっても助け合い支え合う温度感はそのまま残っています。

ーー西口さんから見た会社の印象はいかがですか?

西口)宇田社長の言う通りの“あたたかい空気”は私が入社した13年前からずっと感じています。「これは自分の仕事じゃないので」と言う社員を私はこれまで見かけたことがないほど、困っている人がいれば声を掛け、部署を越えて助け合える会社で、よくまわりの企業さんからも驚かれ、「栄工業さんは雰囲気がいいね」と言っていただいています。

ーーあたたかく自由な社風でありながら、企業として生産性との両立も実現されています。難しいことのように感じますが、どのように両立させているのですか。

宇田)「自由と責任のバランス」を大切にしています。自由に挑戦できる環境をつくる一方で、「いい加減」と「自由」は違うということや、自由の裏側には責任があるということをしっかりと伝えていますし、社員の皆さんがそれをわかって行動していると感じます。

経営側としても、会社の業績が上がれば必ず社員の皆さんに還元しています。会社の成長や賃金をどう上げるのかなど、難しい話題も透明性を持って社員の一人ひとりとコミュニケーションを取るようにしていますし、だからこそ信頼が生まれ、その上に“本当の自由”が成り立っているのではないかと思います。お互いに信じ合い、支え合って伸びていく。それが栄工業のスタイルです。

栄工業

群馬クレインサンダーズは「同じ地域の挑戦者」

ーーBリーグの群馬クレインサンダーズともパートナー契約を結ばれていますが、チームとの出会いはどんなきっかけだったのでしょうか。

宇田)実は、きっかけは西口常務のご家族なんです。 ある日、西口常務から「息子が進路のことで悩んでいる」と聞いて、「気分転換になるかもしれないね」と群馬クレインサンダーズの試合チケットをプレゼントしたのが最初でした。

西口)その試合は新型コロナウイルスの影響で残念ながら中止になってしまったのですが、息子は社長が用意してくれたユニフォームを本当に喜んでいました。後日、延期された試合を観に行ったときには、悩んで少し塞ぎがちだった息子がすっかりバスケットボールに夢中になり、気持ちも前向きに変わっていて。その姿を見て「やっぱりスポーツの力ってすごいな」と改めて感じました。

ーースポーツはその瞬間の盛り上がりだけではなく、その後の人生にも大きな変化を与えてくれることがありますよね。

宇田)その通りだと思います。西口常務の話を聞いて、「社員にも群馬クレインサンダーズの試合を観戦してもらいたい」とシーズンシートを購入するようになりました。「家族や友人を誘って行っていいよ」とチケットを配ったところ、みんな本当に喜んでくれて。
社員であるお父さんが娘さんとアウェイ戦にも出かけて、久しぶりに一緒に旅行をしたという話もあり、そのような形で“家族の輪”が広がっていくことが何より嬉しかったです。

ーー群馬クレインサンダーズのチームの方々と話し合う中でも、共感するところが多かったと伺いました。

宇田)まだバスケットボールの人気が今ほどではなかった3年前、チームの方々が「これから地域の主役となるスポーツに育てていきたい」と真剣に語っていたことが、強く印象に残っています。

正直なところ、当初はその広告効果に懐疑的な声も社内外でありましたが、栄工業は塗装や組み立てなど、表立って目立つことがあまり多くない仕事で勝負している会社で、決して派手さはありませんが、地域を支える誇りを持っています。だからこそ、“ニッチな世界から地域を支える”という点で、群馬クレインサンダーズの挑戦に共感しました。「同じ地域の挑戦者として、一緒に盛り上げていきたい」と感じたことが、最終的にパートナー契約を決めるきっかけになりました。

ーーまさに“輪”の広がりですね。

宇田)そうですね。会社の理念が、オフィシャルパートナーという形で外の世界にも広がっていると感じます。

栄工業2024年8月に開催したバスケットボールクリニックには、地元のクラブチームだけでなく社員とその家族も参加しました。大人も子どもも一緒に楽しむ、まさに“輪”が広がっていく場面を作り出しています。

創業60年目からの新たな挑戦、大好きな太田市のために

ーーオフィシャルパートナーとして3年目になりますが、社員や社内の雰囲気に起こった変化を教えてください。

西口)社員同士が自然に「次は誰が応援に行く?」と、次戦の話や応援に行った話で盛り上がったり、日常の会話の中につながりが生まれています。また、バスケの観戦がしたい為に、一生懸命仕事に取り組むといった社員もいるほどです(笑)。

宇田)バスケの応援は単なるイベントではなく、心を共有できる時間です。仕事以外でも同じ時間を過ごすことで、社員同士の信頼が深まっていく。 “和と輪”という理念が、社内にも地域にも、少しずつ形として広がっているのを感じます。

ーー創業60周年という大きな節目を迎えられました。ここから先、どのような挑戦を描いていますか?

宇田)会社は今年で60周年を迎えました。これを節目に、AIを活用した製造支援設備の開発を始めています。製造現場の負担を減らし、自社だけでなく地域の製造業を支える仕組みをつくっていきたいと思っています。
また、試合会場のマルシェにベーグルを出店することにも挑戦しています。社員の皆さんが「何か自分たちにできることを」と話し合って生まれたアイデアです。パンのように誰でも手に取りやすく、試合中にも食べられる軽食をという想いから始まりました。これもまた、社員同士の“輪”が生んだ新しい挑戦です。

栄工業

宇田)私自身、太田市が本当に大好きです。自分を育ててくれた街だからこそ、いつか恩返しがしたい想いがあります。企業として地域のために何ができるかを考えたとき、個人ではできないことに挑戦したいと感じました。まだその答えははっきりしていませんが、群馬クレインサンダーズや仲間たちと一緒に、その答えを探していきたいと思います。

ーー最後に、ここまでの記事を読んで栄工業の活動に興味を持ってくださった学生や社会人の方へ、メッセージをお願いします。

宇田)どんな仕事でも、最初はわからないことだらけです。でも、栄工業には「一緒に成長していこう」と思ってくれる仲間がいます。たとえ失敗しても必ず誰かが支えてくれる、そんな“和”のある職場です。ものづくりが好きな人、チームで何かを成し遂げるのが好きな人には、きっとぴったりの環境だと思いますので、 自分の挑戦が誰かの笑顔につながる瞬間を、ぜひ一緒に感じてほしいですね。

西口)群馬クレインサンダーズの協賛も、まさにその延長にあります。社員や家族、地域のみんなが笑顔になれる活動を続けていきたいです。仕事も応援も、誰かを幸せにすることが原点です。「地域のために働きたい」「人のために動きたい」という想いを持った方と、これから一緒に“輪”を広げていけたら嬉しいです。

ーーありがとうございました。

ザスパ群馬
県営住宅を選手がDIY!ザスパ群馬の選手寮移転プロジェクトの裏側に密着!公営住宅の課題も解決し、クラブの地域密着推進、そして若手選手育成にもつなげる。そんなプロジェクトをJリーグ・ザスパ群馬が立ち上げました。...
青木瀬令奈さん ピンクリボン
ダンロップのピンクリボン運動〜プロゴルファー青木瀬令奈と考える〜ゴルフ、テニス、モータースポーツなど、さまざまなスポーツで活動する住友ゴム工業株式会社のダンロップブランド。そんなダンロップでは、ピンクリボン運動への協力をスポーツの力を活かして積極的に行っています。 今年は、女子ゴルフ『ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン』にて、ダンロップ契約選手が特製ピンクリボンバッジをつけてラウンドしました。スポーツ選手が共感し、発信することで広がるこうした活動。選手自身はどのように感じているのでしょうか? 日本女子プロゴルフ協会プレイヤーズ委員の副委員長でもある青木瀬令奈さん(以下、青木)にお話を伺いました。...
みちのく
「応援を、もっと身近に」|青森・秋田・岩手のバスケットボールクラブとコカ・コーラが生み出す、地域密着型の“新しい応援のかたち”「この1本が、地元チームの力になる。」 そんなシンプルで力強いメッセージのもと、みちのくコカ・コーラボトリングが展開する「アクエリアススパークリング 北東北Bリーグ応援ボトル缶」キャンペーン。売上の一部がスポーツクラブ支援金となるこの取り組みは、プロバスケットボールBリーグに参戦する岩手ビッグブルズ・青森ワッツ・秋田ノーザンハピネッツの3クラブと連携し、地域のファンとクラブをつなぐ“新しい応援の形”として2017年からスタートし、これまでたしかな広がりを見せています。 それ以前から行ってきた「応援自動販売機」の取り組みも合わせて、北東北3県におけるコカ・コーラとバスケットボールクラブの“買うことが応援になる”取り組みの浸透についてインタビューしていきます。 現場で奮闘する営業担当者、そしてクラブ関係者の言葉から見えてきたのは、スポーツと企業がともに地域に根差すことで生まれる深いつながりでした。ファンの“購入”が支援になるだけでなく、チームや企業の姿勢が地域からの共感や誇りを生み出している。そんなこのキャンペーンの特徴に迫ります。...
長野ダイハツ
モビリティで想いを運ぶ。長野ダイハツモータースが信州ブレイブウォリアーズと描く「共創の未来」|和田知大取締役インタビュー人と人とのつながりを大切にし、「信頼で選ばれる会社」を目指してきた株式会社長野ダイハツモータース。 2025年に創業65周年を迎える同社は、地域の暮らしとともに歩みながら、「モビリティで想いを運ぶ」新しい挑戦を続けています。 信州ブレイブウォリアーズやチアリーディングチーム『JASPERS(ジャスパーズ)』との共創を通じて生まれたのは、「思いやり駐車場」や「親子ダンスワークショップ」など、地域の笑顔をつなぐ支援の形。その根底にあるのは、車を売るだけではなく、“人の温もりを軸に地域の未来を動かしたい”という想いです。 今回その歩みについて、取締役の和田知大さん(以下、和田)をはじめ、信州ブレイブウォリアーズの協賛を担当する服田佳孝さん(以下、服田)、北島憲之さん(以下、北島)、柳町由佳里さん(以下、柳町)にお話を伺いました。...
ジャイロアーキテクツ
「サンロッカーズ渋谷は同志」建築会社が語る、社会へつながる“波動“が宿る建築の力|ジャイロアーキテクツ 山本社長インタビュー「建築は、人のポジティブな夢や希望から始まる」 渋谷区に拠点を置く建築会社である株式会社ジャイロアーキテクツの山本剛弘社長は、「建物は単なる器ではなく、人々の暮らしを支え、街の風景を形づくり、世代を超えて想いを受け渡していく存在だ」と言います。その考え方は設計の枠を超え、ともに働く社員や地域社会、そしてスポーツの世界へと広がっています。 Bリーグ・サンロッカーズ渋谷のオフィシャルパートナーとして『S-Ring活動』に参画し、小学校へのボール寄贈やバスケクリニックを通じて、子どもたちの瞳に夢と希望の光を灯してきました。“ポジティブを繋ぐ”ことが、建物を超えて社会にどんな波動を生み出しているのか。その歩みと未来について、山本剛弘社長(以下、山本)にお話しを伺いました。...

RELATED POST

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA