「地域を盛り上げるために、スポーツができることは何か」
人口減少や産業構造の変化という課題に直面する地方都市において、地域金融機関の役割が再定義されています。浜松市を中心とした静岡県西部に根を下ろす浜松いわた信用金庫は、女子バレーボールチーム「ブレス浜松」とともに、単なるスポンサーシップを超え深く手を取り合うことで、新しい地域創生の形を模索しています。
選手が職員として共に働く「デュアルキャリア」の実装、そして地域全体を巻き込む「応援のプラットフォーム」の構築です。SDGs推進部の竹内嘉邦さん(以下、竹内)へのインタビューから、スポーツが持つ「人を繋ぐ力」の本質に迫ります。
選手が「同僚」になることで生まれた、組織内のポジティブな変化
ーー浜松いわた信用金庫さんでは、今シーズンも引き続きブレス浜松をスポンサーとして応援しています。
竹内)私の所属する浜松いわた信用金庫のSDGs推進部という部署は、地域の方々や企業に対するSDGsの普及活動や、SDGsを活用した企業のご支援などを行っています。昨年に比べても、“地域貢献”という文脈に対するスポーツのウエイトは、ブレス浜松さんとの取り組みに限らずかなり増しているのではないかと感じています。
ーー2025年4月からは、ブレス浜松の西河ゆうか選手、中原彩音選手を雇用するようになりました。
竹内)西河選手は私の部署で、中原選手は営業店で働いてくれています。2人ともまわりの職員とよくコミュニケーションをとってくれています。私たちも元気をもらっていますし、彼女たちが練習に行くときも「頑張ってね」と送り出せる、そんなルーティーンになっているのはとても素晴らしいことだと思っています。
西河ゆうか選手(左)と竹内嘉邦さん(右)2日間で2,000人以上が熱狂。取引先や街を巻き込む「応援のプラットフォーム」
ーーこれまでのブレス浜松さんとの活動で印象に残ることはありますか?
竹内)やはり昨年2月に行った浜松いわた信用金庫の冠試合ですかね。浜松いわた信用金庫の営業店の職員や、お取引先様も含めてお声掛けし、多くの人数でともに応援できたことが印象深いです。2日間でのべ2,000人以上の方が集まってくれました。とてもいい試合で、“同じものを一緒に応援する”というスポーツの素晴らしさを改めて感じました。
その後、観戦に来てくれた企業を訪問させていただいたときに、昨年は貼っていなかったブレス浜松のポスターが貼られているような会社もあり、「スポーツを通して地域が変わってきたな」と思う場面にも出会うことができています。
ーーさまざまなスポーツチームを応援している中で、『ブレス浜松』の良いところはどのような点にありますか?
竹内)まずは“浜松の市民球団”であること。これは大きいですね。地域全体として「応援しよう!」という一体感を感じますし、地域全体に広がっていく可能性も感じています。そこに私たちの強みである、地域の企業や学校との接点をどんどん広げていくことによって、お互いにWin-Winになるような営業展開、接点の強化、地域の盛り上げなど多くの部分に貢献していけるのではないかと思います。
また、弊金庫に西河選手、中原選手が入庫したことも大きいです。普段のコミュニケーションから身近になっていくことによって、より応援しようと思いますし、彼女たちのパーソナリティの部分が素晴らしいことも要因ですよね。私たち信用金庫の特徴を活かせる“地域の一体感”を生む下地があること、そして所属選手がいることがブレス浜松の大きな特徴なのではないでしょうか。

なぜ「信用金庫」がスポーツを応援するのか?地域課題への向き合い方
ーーブレス浜松さんも含め、地域のスポーツチームとの関わりが浜松いわた信用金庫さんとしてもプラスになっているのでしょうか?
竹内)私たち信用金庫は、地域に根ざした金融機関です。社会情勢の中で信用金庫自体の経営をしつつ、地域の課題解決や資金の循環などに向き合い、地域産業を信用金庫が応援していく必要があります。
また、人口減少など、見逃せない地域の課題もあります。そうした課題に対して、地域の金融機関としてどのようなことができるのか、企業さんと連携しながらスモールスタートでも良いので共創する取り組みを増やし、その事例を開示することでその先の広がりを生んでいくことが重要だと考えています。
「一緒にスポーツを応援する」ということも、企業同士がつながるきっかけとなり、地域のポテンシャルを上げて共創事例が多く生まれる1つのきっかけになりますよね。
ーー竹内さん自身の実感はありますか?
竹内)私自身、SDGs推進部として長年やってきていますが、一番重要であり、大変なことは、この考え方を“社内に”浸透させていくことです。職員自身が地域のためになることを考え、持続可能な形でご支援をしていくことが大事になる中で、“浜松”という名前のついたブレス浜松を応援する文化があるということは、営業店との取り組みの中でも共通のキーワードを増やすことに繋がります。そうした点では、昨年の冠試合以降、私たちと取引先さんとの間で“ブレス浜松”の会話は劇的に増えているのではないかと感じています。
ーーより地域の人がブレス浜松に関心を持っていただくための広告塔にもなっているのですね。
竹内)仕事で営業店の職員と同行するときも、私はよくブレス浜松さんの話題を出します。「地域との共創」でのブレス浜松の話題は、あえて意識的に出していくことで、私だけでなく職員全体にも広がっていっていると感じることがあります。
ーーこの浜松という地域は、スポーツチームも多く、スポーツでの盛り上がりのある地域だと思っています。今後、竹内さんがスポーツも絡めながら、この地域にどんな未来を作りたいですか?
竹内)スポーツチームの持つ“人が集まる魅力”を活かさない手はないですよね。ブレス浜松が強くなる、あるいは良いパーソナリティを持つ選手が集まっていることによって、観戦に来る人や地域活動で関わる人など、ブレス浜松を介して交流人口が増やしていきます。さらにその事例を発信することで、地域全体の盛り上げに寄与していけたらいいですよね。
教育と多文化共生。スポーツを「共通言語」に描く、浜松の持続可能な未来
ーーブレス浜松さんとの取り組みで、課題に感じていることはありますか?
竹内)やはりスポーツなので、勝利という結果は期待してしまいます。Vリーグの優勝を今年は成し遂げてほしいです。
ただ、結果がどうあろうと私たち浜松いわた信用金庫が支えていくということに変わりはありません。私たちの職員、地域の企業、学校や団体にブレス浜松の応援の輪を地道に広げていくことが役目だと思っていますし、結果を目指すチームとの両輪で動いていけたらと思っています。
ーー交流人口を増やすという意味でも、優勝という結果は大きな効果をもたらしますよね。地域の子どもたちをテーマにしたときに、なにか取り組みたい活動はありますか?
竹内)私たちの子どもたち向けの活動において、ブレス浜松は1つの“コミュニケーションツール”として役立っています。金融機関として、小学校向けにお金の講座やSDGsの講座を行っているのですが、少し難しい話に親近感を持ってもらうために、ブレス浜松さんとの取り組みや活動についての話を出すと子どもたちはすごく興味を持ってくれます。
また、人口減少という課題に向き合うと、こうした子どもたちが大人になったときに「浜松に戻ってきたい」と思ってもらうことが大事です。これまでブレス浜松が行ってきたバレーボール教室、そこに私たちの本業で行ってきたお金やSDGsの講座を組み合わせて展開できると、より大きな効果になるのではないかと思いますし、より地域への愛着を感じてほしいですね。
ーー行動することで、新たな可能性にも気づくきっかけにもなっているのですね。
竹内)そうですね。例えば、この地域にはブラジルの方をはじめ、多国籍の方が暮らし、地域の企業で働いています。昨年はそうした方々をバレーボール観戦にお誘いしたところ、かなり多く方に喜んでいただきました。ここがきっかけとなって対話が生まれ、企業からも外国籍の方からもコミュニケーションを取りやすい環境になっていきます。ブレス浜松や私たちからの声掛けで“地域の人が喜んでくれた”事実ができ、そこからの繋がりが生まれるとすごく嬉しいですよね。
ーーこの先、浜松いわた信用金庫さんがブレス浜松とともに目指していくことはなんでしょうか?
竹内)スポーツ、そしてブレス浜松さんには、まだまだポテンシャルがあると思っています。私たち信用金庫が事業として目指す、地域を盛り上げていくところにものすごく親和性が高いと思っていますし、これからも一緒に取り組んでいきたいですね。
新しいことにも積極的に取り組み、いろいろな気づきを得て、ブレス浜松という市民球団と私たち地域の信用金庫の特徴を掛け合わせてこの地域を盛り上げていけたらと思っています。
ーーありがとうございました。
