長野県駒ヶ根市に本社を構える塚田理研工業株式会社は、最先端のメッキ技術で世界のモノづくりを支えている企業です。自動車やオートバイといった世界的メーカーにも採用される“世界基準のめっき技術”を強みに、技術を「生む・高める・広める」ことを掲げ、日々その可能性を追求しています。
そんな塚田理研工業は、2023年からバレーボールSVリーグの「VC長野トライデンツ」を支援。そして2025年には、サッカーJリーグの「松本山雅FC」ともパートナー契約を結びました。
「スポーツを応援することで、社内が明るくなりました」と語るのは、塚田理研工業の代表取締役社長・下島聡さん(以下、下島)。地域に根ざす2つのクラブとの関わりが、社員一人ひとりにどのような変化をもたらしたのか。そして、その先に描く企業の未来とは。
応援からはじまった、社員の誇りと空気の変化
ーー塚田理研工業は、VC長野トライデンツのオフィシャルパートナーになられて3年目になりました。そのきっかけや背景を教えていただけますか。
下島)装飾品のめっき関連で取引していたメルコグループがVC長野トライデンツの経営を引き継いだタイミングで、「スポンサーを探している」というお話を伺ったことがきっかけです。それをきっかけにチームの活動をよく聞いてみると、「地元にこんなチームがあったのか」という驚きを感じ、「何か一緒にできたらいいな」という想いでオフィシャルパートナーとしての関係がスタートしました。
ーースポンサーを始めて2年目には、飯田孝雅選手が入社されたと伺いました。
下島)VC長野トライデンツは、選手が地元企業で働きながらプレーすることも特徴の1つです。飯田選手の加入が決まった際、弊社の採用面のタイミングとしてもよかったので入社が決まりました。
初めてのことで、懐疑的な声も社内にはありましたが、飯田さんのその爽やかな人柄もあり、結果的に「会社としてVC長野トライデンツを継続して応援していこう」と考える一番の契機になりましたね。
ーー飯田選手が来られてから、会社にもいい変化があったそうですね。
下島)飯田選手は大人気で、働いている人のテンションを明るく上げてくれる存在です。働く部署や仕事内容を固定しすぎず、そのタイミングで人手の足りない部署へのお手伝いを積極的にお願いしているのですが、どこに行っても飯田選手は気に入られ、自然と会社全体で応援していこうとするムードも生まれています。
昨年はバスツアーを企画してみんなで応援に行きましたし、私が今度行う“始球式”に向けて、会社の中に“練習用コート”を自主的に作ってしまうほど、社内のバレーボール熱が高まっています。
松本山雅FCとのパートナーシップで広がる地域との接点
ーー今年からは松本山雅FCともパートナーシップを結ばれました。地元のスポーツチームの魅力とは何でしょうか。
下島)弊社と地元の人を繋げてくれるのが魅力です。塚田理研工業と名前だけ聞いても何の会社だかわかりませんし、外に出ていく活動も少ないため、なかなか知ってもらう機会がありません。大人にも子どもにも身近なスポーツを通して「こんな会社があるのか」と認知してもらい、働いていることを誇りに思えるような会社になればと考えています。
松本山雅FCとのコラボで「塚田理研工業」を耳慣れた企業として知名度を上げ、採用の面でもいろいろな学生さんとお会いできる機会が増えればと期待しています。
ーー会社の「知名度」と「採用」に期待されているのですね。松本山雅FCとはどんな活動をされているのでしょうか。
下島)まだ具体的な活動には至っていませんが、松本山雅FCが実施しているボランティアに社員が参加することや、地域のサッカースクールに通う子どもたちに向けて、プロの選手を呼べないかと企画中です。
松本山雅FCは松本を拠点とするサッカーチームなのですが、南信地域にも活動の幅を広げていて、VC長野トライデンツの本拠地がある南箕輪村やもう少し南に行った高森町でもスクールを開催していて身近な存在になりつつあります。バレーボール好きだけでなく、サッカー好きにも「塚田理研工業」をアピールしていきたいです。
ーー地元のスポーツチームを通して、塚田理研工業は地域にとってどんな存在でありたいですか。
下島)地域の皆さんに応援されて「この会社にいて欲しい」と思ってもらえるような存在でありたいです。めっきは「水に始まり、水に終わる」というくらい、地域の自然の恩恵を受けている事業なので、使わせていただいている分を地域に返していけたらなと思っています。
また、マラソン大会のスポンサーもさせていただいているのですが、会社の名前が載ることで社員の子供がそれを見て「お父さんの会社の名前だ」と誇りに思い、社員が働くモチベーションアップに少しでも繋げていきたいです。
「技術」も「人」も育つ企業文化へ
ーープラスチックめっきのパイオニアとして“めっき”に対する想いを教えてください。
下島)「めっきが剥がれる」という言葉にあるような、“めっき”に対するマイナスイメージを良いものに変えていきたいです。めっきが無ければ、パソコン、時計、電気、椅子、机など生活のあらゆるものが成り立ちません。スキルとしても、千分の一ミリという薄さをコントロールしているハイテク技術です。
私たちも、“めっき”という言葉を使わない方がいいのではないかと思った時期もありましたが、「63年間やってきた”めっき”という言葉に誇りを持たなくてはいけない」と思い、今ではその言葉を前面に出しながら活動しています。
ーー現在の会社理念である「めっきで世界に彩を~世のため、人のため、私たちのために~」という言葉も印象的です。
下島)世のため、人のためになるように、技術を高めていこうと会社全体で取り組んでいます。
ーー理念を実現するために大事にしていることは何ですか?
下島)一番大切なのは「コミュニケーション」で、言いたいことをきちんと言える関係性であり、お互いに歩み寄れるような意見交換ができることが技術を高めることに繋がると考えています。
明るく仲の良いだけでなく、会社としてきちんと利益も出し高めあえるような厳しさも持つ関係性。そんな難しいことを目指していく上でも、VC長野トライデンツや松本山雅FCのパートナーをすることで社員の誇りを生み出し、会社への想いや信頼関係、明るさにも繋げていきたいですね。
ーースポーツが持つ力が会社への成長にも繋がっているのですね。ほかにも社内を明るくコミュニケーションを活発にするために、社内交流を大切にしているとお聞きしました。
下島)会社として目指す方向を共有する意味でも、部署を超えた交流の機会は大事ですよね。私たちの技術は、0から1を”生み”、1を100万、200万個作って売れるような量産技術を”高め”、自動車分野で使用していた技術を美容系などまったく違うジャンルに”広げる”という3つの要素で成り立っています。技術開発だけではなく、すべての部署の技術が大切です。
応援される企業へ――地域と世界の架け橋として
ーー中小企業庁の「100億宣言企業」に登録されている塚田理研工業ですが、今後目指す未来を教えてください。
下島)売上高が100億円ある企業は、「世の中になくてはならない企業」であると思いますが、私たちはさらに「継続して地域に貢献できる会社」を目指し、そのための土台作りを常に意識しています。
過去には100億円に迫った時期もあったのですが、その後売上が急降下してしまい、立て直していくことに非常に苦労しました。業界の勢いや追い風に乗れていたで社内の体制や自分たちの実力以上のことに取り組んでしまっていたことを反省し、売上だけでなく人が成長を続け、次の世代にちゃんと技術や知識を繋げ、会社の明るさで人間関係の質をよくしていける、そんな「継続していける体制」を作っていきたいです。
ーー継続して成長していける企業を目指し、新しい分野への挑戦も積極的にされているそうですね。
下島)めっきという技術をAI、ロケット、美容など、新しい分野に展開しようと挑戦を続けています。さまざまなハイテク分野でもめっき技術を使えないかという相談をいただいていますし、とくに美容では『LOVECHROME』という純金めっきやクロムめっきを施した櫛を製造しています。めっき加工をすることで静電気が起きづらくなり、髪の毛の通りがなめらかになると多くの有名人にも使用していただいています。駒ヶ根市のふるさと納税品としても人気です。
ーーモータースポーツの分野でも、めっき技術を活用されていると伺いました。
下島)静電気を除去するシートや鈴鹿サーキット8時間レースで使用するバイクのウィングパーツに、めっき加工を施しました。軽い素材でピッタリとプラスチックにも加工ができることで、これまでのパーツのように“静電気がたまりづらい”というプラスの要素をもたらすことができます。
当社の独自技術によるレインボーカラーを活かした彩あるパターの企画、製造販売にも挑戦中。地元アルプスの山々を刻印するなど、遊び心を持ちながら開発をしています。
塚田理研工業はこれからも、地域に根を張りながら、常にさまざまな挑戦をしていきます。
そして、地元に生きる人々が胸を張って名前を口にできる「地元に貢献しながら活躍する企業」であり続けたいです。
ーーありがとうございました!
